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11.教室に戻って

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 私とドラグルド様は、教室まで戻って来ていた。
 放課後ではあるが、そこには人がまだまだまばらにいる。
 そんな彼らの視線は、私の方に向いていた。その理由はわかっている。ここでルビウス様が、あることないこと言ったからだろう。

「マルディアス、話を聞いていいだろうか?」
「そう言われると思っていましたよ、ドラグルド様」

 ドラグルド様は、一人の人間に話しかけた。
 その人は、マルディアス・レルクール子爵令息。私達のクラスメイトで、ドラグルド様とよく話をしている人だ。

「この教室で何があったかを聞きたい、ということですよね? 隣にアノテラ嬢もいますし、何かあったといった所でしょうか」
「話が早くて助かる」
「しかし、私も現場にいた訳ではないため、詳細を知っている訳ではないのです。クラスメイトから何があったかは聞いておきましたが……」
「そうか。だが、俺がこのクラスで最も信頼できるのは君だ。君は公平さも持ち合わせているからな」

 ドラグルド様は、マルディアス様のことを信頼しているようだった。
 他の人からも話は聞けるというのに彼に聞くということは、その情報収集能力にも信を置いているのかもしれない。

「それならお話ししましょうか。お二人とも、ついて来てください。ここでは話しにくいですからね」
「アノテラ嬢、行こうか」
「あ、はい」

 マルディアス様が教室から出て行ったので、私とドラグルド様もそれに続いた。
 渦中の人物が、教室内で話を聞くという状況は良くないと思ったのだろう。先程から周囲の視線が気になっていたので、これは私にとってありがたいことだ。

「やったことは単純明快です。ルビウス伯爵令息は、アノテラ嬢との婚約を破棄すると宣言しました。アノテラ嬢のことを侮辱しながら、彼はそう言ったそうです」
「侮辱、か……」
「残酷なことを言うことにはなりますが、民意はルビウス伯爵令息に傾いています」
「ど、どうしてですか?」

 マルディアス様の言葉に、私は驚くことになった。
 ルビウス様がやったことは、私への裏切りだ。そんな非難されるべきことをした彼が、支持される意味がわからない。

「彼……彼ら、という方が正しいでしょうか。ラフェリア嬢も含めて、あの二人はアノテラ嬢の悪評を事前に流していました。ここに至るまでに準備をしていたのです」
「準備……」
「その点において、彼らは狡猾でしたね。それらの断片的な些細な情報は、ここにきて効いてきた。アノテラ嬢を悪者に仕立て上げた。それは見事だといえるでしょう」

 どうやら、ラフェリアとルビウス様はとっくの昔に私への攻撃を開始していたようだ。
 その間、私は呑気に過ごしていた。それは失敗でしかなかったのだろう。私は今更、そのことを後悔するのだった。
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