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5.ずれているような
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「ドラグルド様、これは一体どういうことなのでしょうか?」
「お気に召さないか? しかし自由に動けない以上、こうして抱きかかえるしかないだろう」
「そ、それはそうなのですが……」
私のことをお姫様抱っこしているドラルグルド様は、特に表情を変えていない。
彼としては、人命救助の延長的な気持ちなのだろうか。女子を抱きかかえているということに対して、特に意識はないらしい。
いや、私が女子と思われていないだけだろうか。それは少々悲しいような気もするのだが。
「でも、重たくありませんか?」
「重たくはないな。というよりも、軽過ぎるくらいだ」
「それなら良かったです」
自分が人よりも小柄であるということに感謝したのは、初めてかもしれない。体重という観点に関して、私は自信を持って人よりも軽いと思える。
ただそれでも、特に筋骨隆々という訳でもないドラグルド様の二本の腕だけで私を支えるのは、辛いのではないだろうか。
そんなことを考えていると、彼が動き出した。止めるとドラグルド様がまた辛くなるだけだと思ったので、私はできるだけ彼に体重をかけないようにしながら、動かないことに務める。
「良いということはないだろう。ここまで軽いと、少し心配になってくる。ちゃんと食べているのか?」
「食べてはいます。量は多くはありませんが……」
「食べ過ぎるのは良くないと思うが、食事はきちんとした方がいい。無理なダイエットは体を壊すものだからな」
「いえ、ダイエットしているとか、そういうことではありません。元々小食でして、体も小さいですし……」
ドラグルド様は、私の体重について真剣に心配してくれているようだった。
それはまるで、親戚のおじさんのようだった。なんというか、彼は少しずれているのかもしれない。会話をしながら、私の頭にはそのような考えが過っていた。
「そうか。ストレスなどではないというなら、よかった。あの二人に詰められて、参っているとかではないのだな?」
「え? あ、はい。そうです」
続くドラグルド様の言葉に、私は少しわからなくなっていた。
先程の会話は、遠回しにラフェリアやルビウス様に日常的に虐められていないか、確かめたということなのだろうか。
そうだとしたら、私はまた彼のことを見誤ったということになる。だが、どうもそうは思えなかった。根拠がある訳ではないが、ドラグルド様はなんとなく天然であるような気がする。
「……あれ? というか、このまま校内に入るんですか?」
「うん? ああ、そうしないと保健室には辿り着けない」
「そ、それって……」
周りの景色が少し変わってきた瞬間、私はとある大切なことに気付いた。
放課後とはいえ、校内にはまだ生徒が残っているはずだ。その中をこの状態で運ばれていく。それは本当に、大丈夫なのだろうか。
「お気に召さないか? しかし自由に動けない以上、こうして抱きかかえるしかないだろう」
「そ、それはそうなのですが……」
私のことをお姫様抱っこしているドラルグルド様は、特に表情を変えていない。
彼としては、人命救助の延長的な気持ちなのだろうか。女子を抱きかかえているということに対して、特に意識はないらしい。
いや、私が女子と思われていないだけだろうか。それは少々悲しいような気もするのだが。
「でも、重たくありませんか?」
「重たくはないな。というよりも、軽過ぎるくらいだ」
「それなら良かったです」
自分が人よりも小柄であるということに感謝したのは、初めてかもしれない。体重という観点に関して、私は自信を持って人よりも軽いと思える。
ただそれでも、特に筋骨隆々という訳でもないドラグルド様の二本の腕だけで私を支えるのは、辛いのではないだろうか。
そんなことを考えていると、彼が動き出した。止めるとドラグルド様がまた辛くなるだけだと思ったので、私はできるだけ彼に体重をかけないようにしながら、動かないことに務める。
「良いということはないだろう。ここまで軽いと、少し心配になってくる。ちゃんと食べているのか?」
「食べてはいます。量は多くはありませんが……」
「食べ過ぎるのは良くないと思うが、食事はきちんとした方がいい。無理なダイエットは体を壊すものだからな」
「いえ、ダイエットしているとか、そういうことではありません。元々小食でして、体も小さいですし……」
ドラグルド様は、私の体重について真剣に心配してくれているようだった。
それはまるで、親戚のおじさんのようだった。なんというか、彼は少しずれているのかもしれない。会話をしながら、私の頭にはそのような考えが過っていた。
「そうか。ストレスなどではないというなら、よかった。あの二人に詰められて、参っているとかではないのだな?」
「え? あ、はい。そうです」
続くドラグルド様の言葉に、私は少しわからなくなっていた。
先程の会話は、遠回しにラフェリアやルビウス様に日常的に虐められていないか、確かめたということなのだろうか。
そうだとしたら、私はまた彼のことを見誤ったということになる。だが、どうもそうは思えなかった。根拠がある訳ではないが、ドラグルド様はなんとなく天然であるような気がする。
「……あれ? というか、このまま校内に入るんですか?」
「うん? ああ、そうしないと保健室には辿り着けない」
「そ、それって……」
周りの景色が少し変わってきた瞬間、私はとある大切なことに気付いた。
放課後とはいえ、校内にはまだ生徒が残っているはずだ。その中をこの状態で運ばれていく。それは本当に、大丈夫なのだろうか。
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