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18.平和な日常

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 当然のことながら、あの日からヴォルダー伯爵は二度と帰って来なかった。
 彼の失踪は、自発的な失踪であると結論付けられている。最早、彼の行方は誰も探していない。その存在は、歴史の闇に消えてしまったのである。

「アムドラさん、ロナティアがどこに行ったか知りませんか?」
「おや、部屋にいませんでしたか?」
「ええ、それが見失ってしまっていて……」

 ヴォルダー伯爵がいなくなってからの屋敷は、非常に平和だ。使用人の方々も、いい人達ばかりで、ロナティアも伸び伸びと暮らしている。
 初めこそ警戒していた彼女も、今ではすっかりこの屋敷に馴染めた。それはここに暮らす人達が、いい人ばかりであるからだろう。

「元気なのはいいことですが、少々困ってしまいますね……」
「ええ、本当に……一緒に探していただけますか?」
「ええ、もちろんです」

 関係性としては姉と妹や、兄と妹という関係が正しいのだが、私達二人にとって、ロナティアは娘のような存在になっていた。
 日に日に成長していく彼女を見るのが、毎日の楽しみだ。まさか、自分がそんな風に考えるようになるなんて、思っていなかったことである。

「おや、中庭にいるみたいですね」
「ああ、本当だ。ロナティア!」
「あ、お姉様、それにお兄様も」

 私が声をかけると、ロナティアは笑顔を浮かべてこちらに歩み寄ってきた。
 彼女も、私達のことを慕ってくれている。全てを打ち明け合ったことで、私達は分かり合うことができたのかもしれない。

「探していたのよ? あなた、すぐどこかに行ってしまうんだから」
「ごめんなさい。でも、今日は天気もいいから外に出たくなって……」
「ああ、確かにそうだね。今日はすごくいい天気だ」

 ロナティアの言う通り、今日は快晴だ。こういう日には、確かにどこかに出掛けたくなってくる。ロナティアがここに来たのも、当然といえるかもしれない。

「それならせっかくだし、今日は三人でどこかに出掛けようかしら?」
「本当ですか? それは嬉しいです」
「アムドラさん、いいですよね?」
「ええ、もちろんですとも」

 私の言葉に、アムドラさんは笑顔で頷いてくれた。
 ロナティアも嬉しそうだ。提案してよかった。そう思える笑顔を見せてくれている。

「さて、そうとなったら準備をしなければいけませんね」
「ロナティア、一緒に準備しましょうか?」
「はい!」

 私達は、笑顔でそのような会話を交わしていた。
 これからもこの平和な日常は続いていくだろう。そんなことを思いながら、私は空を見上げるのだった。
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