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14.帰る場所もなく
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結局、ヴォルダー伯爵は自発的に失踪したとして捜査が行われることになった。
彼は、アムドラさんとロナティアのことで口論になった後、忽然と姿を消してしまった。今わかっているのは、それくらいである。
事件についてわかっていることは、そう多くない。この事件を解決するのは、非常に困難だといえるだろう。
「それで、今日はどうして私の所に来たんですか?」
「あなたのことが心配だから来たのよ。私以外に信用できる人はいないみたいだし……」
そんなヴォルダー伯爵の屋敷において、ロナティアは孤立していた。
信用できる人がいないと言っていた通り、誰にも心を開いていないのである。
そんな彼女のことが、私は心配だった。故にこうして、訪ねてきたのだ。
「エリシアさんは、お人好しなんですね……私のことなんて、放っておいたらいいのに」
「そういう訳にはいかないわよ。一応、あなたは私の娘にあたる訳だしね」
「まだ婚約者なんでしょう?」
「正確にはそうだけれど、そんなに変わらないわ。私には帰る場所もないし……」
ロナティアは、私に対してはほんの少しだけ心を開いてくれているような気がする。それは私に、隠し事がないからなのだろう。
そんな私が、ロナティアに寄り添っていくしかない。そうしなければ、彼女の心は本当に壊れてしまいそうだ。そんな儚さが、ロナティアにはある。
「色々と大変なんですね、エリシアさんも……」
「大変というなら、あなたの方が大変でしょう? 私なんて、大したことはないわよ」
「いいえ、私も同じです。村の人達は、私や母のことを厄介者扱いして……」
「なるほど、そういうことだったのね……」
ロナティアがどうしてヴォルダー伯爵家の屋敷まで来たのか、その理由はなんとなく察しがついていた。
やはり、彼女も居場所がなかったのだ。父親のわからない子供を宿したロナティアの母を、村の人達は受け入れなかったといった所だろうか。
「伯爵家の方々が、私を受け入れてくれるかは不安でした……今その不安は、少し別の形になっていますが」
「別の形ね……本当に、ヴォルダー伯爵家の人達はいい人ばかりだと思うけれど」
「いい人ではあるのかもしれません。しかし、なんというかお腹の中に何かをとんでもないものを抱えていると言いますか……」
「とんでもないもの……」
ロナティアは、ひどく怯えた様子だった。
これが彼女の被害妄想という可能性は、ない訳ではない。
ただ、私はそう思えなかった。この屋敷には、何かがある。そう思えるだけの違和感を、私は覚えていたのだ。
彼は、アムドラさんとロナティアのことで口論になった後、忽然と姿を消してしまった。今わかっているのは、それくらいである。
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「それで、今日はどうして私の所に来たんですか?」
「あなたのことが心配だから来たのよ。私以外に信用できる人はいないみたいだし……」
そんなヴォルダー伯爵の屋敷において、ロナティアは孤立していた。
信用できる人がいないと言っていた通り、誰にも心を開いていないのである。
そんな彼女のことが、私は心配だった。故にこうして、訪ねてきたのだ。
「エリシアさんは、お人好しなんですね……私のことなんて、放っておいたらいいのに」
「そういう訳にはいかないわよ。一応、あなたは私の娘にあたる訳だしね」
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ロナティアは、私に対してはほんの少しだけ心を開いてくれているような気がする。それは私に、隠し事がないからなのだろう。
そんな私が、ロナティアに寄り添っていくしかない。そうしなければ、彼女の心は本当に壊れてしまいそうだ。そんな儚さが、ロナティアにはある。
「色々と大変なんですね、エリシアさんも……」
「大変というなら、あなたの方が大変でしょう? 私なんて、大したことはないわよ」
「いいえ、私も同じです。村の人達は、私や母のことを厄介者扱いして……」
「なるほど、そういうことだったのね……」
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やはり、彼女も居場所がなかったのだ。父親のわからない子供を宿したロナティアの母を、村の人達は受け入れなかったといった所だろうか。
「伯爵家の方々が、私を受け入れてくれるかは不安でした……今その不安は、少し別の形になっていますが」
「別の形ね……本当に、ヴォルダー伯爵家の人達はいい人ばかりだと思うけれど」
「いい人ではあるのかもしれません。しかし、なんというかお腹の中に何かをとんでもないものを抱えていると言いますか……」
「とんでもないもの……」
ロナティアは、ひどく怯えた様子だった。
これが彼女の被害妄想という可能性は、ない訳ではない。
ただ、私はそう思えなかった。この屋敷には、何かがある。そう思えるだけの違和感を、私は覚えていたのだ。
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