12 / 18
12.ぎこちない態度
しおりを挟む
「……ところで、そちらの方は?」
「おや、まだ紹介していませんでしたね。こちらはエリシアさん、父上の婚約者です」
「婚約者……」
話が一段落してから、ロナティアは私の方に目を向けてきた。
彼女は、私に関しても警戒している。ただそれは、アムドラさんへの警戒よりも少しだけ緩いような気がする。
やはり、同性であるからだろうか。警戒の度合いが違うのかもしれない。
「えっと、こんにちは。ロナティアさん、私はエリシアです。こちらの家には、今日来たばかりですが……」
「そうなのですか?」
「ええ、そういう意味ではあなたと同じですね」
とりあえず私は、極めて明るくロナティアに話しかけた。
私は特に彼女としがらみがあるという訳ではない。できれば、良好な関係を築きたいものだ。
「……私とあなたは同じ立場ではありません。ヴォルダー伯爵は、失踪されたのでしょう? それなら、あなたとの婚約は既に破綻しているのではありませんか?」
「ああ……」
私の呼びかけに、ロナティアはとても固い返答を返してきた。
ただ、言われてみればその通りではある。私は今、非常に曖昧な状態だ。
「その辺りのことは、まだアムドラさんと話し合っていませんでしたね……」
「ええ、そうですね。しかし、父上がいつ帰って来るかもわかりません。エリシアさんさえよろしかったら、ここに留まってもらっても構いませんよ」
「そうですか……それなら、お言葉に甘えさせていただきます」
私は、アムドラさんの言葉にゆっくりと頷いた。
ヴォルダー伯爵との婚約は面倒な状態になっている。ただ私はすぐにここを去るべきではないだろう。少なくともこの事件が一段落するまでは、ここにいるべきだ。
伯爵がどうなるかわかってから、私の身の振りは決めるとしよう。ラガーテ男爵家も、恐らくそう判断するはずだ。
「そういうことですから、私もしばらくロナティアさんと共同生活を送ることになりました。よろしくお願いしますね?」
「……ええ、こちらこそよろしくお願いします」
ロナティアの返答は、少しぎこちないものだった。
どうやらまだ、心は開いてくれていないようだ。
しかし、それはこれから変えていけばいいことである。今はそこまで気にするべきではないだろう。
「さてと、とりあえずロナティアさんの部屋を準備しなければなりませんね。それから、僕は色々とやることがありますので……エリシアさん、ロナティアさんのことをしばらく頼めますか?」
「え? ええ、私でよければ」
「何かあったら、使用人を呼びつけてください。ロナティアさんの方も、それでいいですか?」
「はい、私は構いませんが……」
そこでアムドラさんは、ゆっくりと立ち上がった。
伯爵の失踪なども含めて、彼は色々とするべきことがあるのだろう。少し焦っている様子だ。
とりあえず私は、その指示に従うことにした。ここに来たばかりの私にできることはそう多くなさそうだ。ここは邪魔せずロナティアと大人しくしている方がいいだろう。
「おや、まだ紹介していませんでしたね。こちらはエリシアさん、父上の婚約者です」
「婚約者……」
話が一段落してから、ロナティアは私の方に目を向けてきた。
彼女は、私に関しても警戒している。ただそれは、アムドラさんへの警戒よりも少しだけ緩いような気がする。
やはり、同性であるからだろうか。警戒の度合いが違うのかもしれない。
「えっと、こんにちは。ロナティアさん、私はエリシアです。こちらの家には、今日来たばかりですが……」
「そうなのですか?」
「ええ、そういう意味ではあなたと同じですね」
とりあえず私は、極めて明るくロナティアに話しかけた。
私は特に彼女としがらみがあるという訳ではない。できれば、良好な関係を築きたいものだ。
「……私とあなたは同じ立場ではありません。ヴォルダー伯爵は、失踪されたのでしょう? それなら、あなたとの婚約は既に破綻しているのではありませんか?」
「ああ……」
私の呼びかけに、ロナティアはとても固い返答を返してきた。
ただ、言われてみればその通りではある。私は今、非常に曖昧な状態だ。
「その辺りのことは、まだアムドラさんと話し合っていませんでしたね……」
「ええ、そうですね。しかし、父上がいつ帰って来るかもわかりません。エリシアさんさえよろしかったら、ここに留まってもらっても構いませんよ」
「そうですか……それなら、お言葉に甘えさせていただきます」
私は、アムドラさんの言葉にゆっくりと頷いた。
ヴォルダー伯爵との婚約は面倒な状態になっている。ただ私はすぐにここを去るべきではないだろう。少なくともこの事件が一段落するまでは、ここにいるべきだ。
伯爵がどうなるかわかってから、私の身の振りは決めるとしよう。ラガーテ男爵家も、恐らくそう判断するはずだ。
「そういうことですから、私もしばらくロナティアさんと共同生活を送ることになりました。よろしくお願いしますね?」
「……ええ、こちらこそよろしくお願いします」
ロナティアの返答は、少しぎこちないものだった。
どうやらまだ、心は開いてくれていないようだ。
しかし、それはこれから変えていけばいいことである。今はそこまで気にするべきではないだろう。
「さてと、とりあえずロナティアさんの部屋を準備しなければなりませんね。それから、僕は色々とやることがありますので……エリシアさん、ロナティアさんのことをしばらく頼めますか?」
「え? ええ、私でよければ」
「何かあったら、使用人を呼びつけてください。ロナティアさんの方も、それでいいですか?」
「はい、私は構いませんが……」
そこでアムドラさんは、ゆっくりと立ち上がった。
伯爵の失踪なども含めて、彼は色々とするべきことがあるのだろう。少し焦っている様子だ。
とりあえず私は、その指示に従うことにした。ここに来たばかりの私にできることはそう多くなさそうだ。ここは邪魔せずロナティアと大人しくしている方がいいだろう。
11
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
【完結】貴方を愛するつもりはないは 私から
Mimi
恋愛
結婚初夜、旦那様は仰いました。
「君とは白い結婚だ!」
その後、
「お前を愛するつもりはない」と、
続けられるのかと私は思っていたのですが…。
16歳の幼妻と7歳年上23歳の旦那様のお話です。
メインは旦那様です。
1話1000字くらいで短めです。
『俺はずっと片想いを続けるだけ』を引き続き
お読みいただけますようお願い致します。
(1ヶ月後のお話になります)
注意
貴族階級のお話ですが、言葉使いが…です。
許せない御方いらっしゃると思います。
申し訳ありません🙇💦💦
見逃していただけますと幸いです。
R15 保険です。
また、好物で書きました。
短いので軽く読めます。
どうぞよろしくお願い致します!
*『俺はずっと片想いを続けるだけ』の
タイトルでベリーズカフェ様にも公開しています
(若干の加筆改訂あります)
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました
鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と
王女殿下の騎士 の話
短いので、サクッと読んでもらえると思います。
読みやすいように、3話に分けました。
毎日1回、予約投稿します。
【完結済】侯爵令息様のお飾り妻
鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる