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11.彼女の処遇

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 ヴォルダー伯爵が行方不明になったことは、一大事である。
 ただこの屋敷には、もう一つ解決しなければならない問題があった。それは、ロナティアの存在である。

「ロナティアさん、お待たせしてしまって申し訳ありません」
「いえ……」

 彼女への対応は、伯爵の失踪によって保留になっていた。
 しかし、彼女をいつまでも放っておく訳にはいかない。遠路遥々ここまでやってきたロナティアには然るべき対応する必要がある。

「こちらも色々と立て込んでいましてね……もうおわかりかと思いますが、ヴォルダー伯爵は現在この屋敷にはいません」
「……そのようですね」
「正直に言いましょう。伯爵は行方不明になっています」

 という訳で、私はアムドラさんと一緒にロナティアがいる客室までやって来ていた。
 彼女は、玄関で会った時と同じように固い表情をしている。当然のことながら、まだ緊張しているようだ。
 一応私は、その緊張を和らげるために同席している。自分一人よりも私がいる方がいいと、アムドラさんは判断したのだ。

「行方不明、ですか?」
「ええ、今の所消息はわかっていません」
「そんな……」

 アムドラさんの言葉に、ロナティアはかなり動揺していた。
 確かロナティアは、母親を亡くしたばかりであるはずだ。そんな彼女にとって、頼れる父親がいなくなっているという事実は、かなり辛いものだろう。

「ご安心ください。あなたのことは、僕が責任を持って預かります。父上に代わって、僕があなたを保護します」
「保護……こちらで暮らさせてもらえるということですか?」
「ええ、そのつもりです。あなたも、色々と大変な立場であるようですからね」
「ええ、それはまあ、そうですね……」

 アムドラさんの言葉には、少し含みがあるような気がした。
 それはつまり、ロナティアの現在の暮らしが良くないということなのだろう。恐らく、母親を亡くしているというだけでなく、彼女は何か辛い立場なのだ。
 きっと彼女は、伯爵家以外頼れない状態なのだろう。それは詳しく聞くべきことではない。

「正直、助かります。ありがとうございます」
「いえ、お気になさらないでください。元はといえば、父上に全ての原因はあるのですから」

 アムドラさんの言葉には、少しの忌々しさが滲んでいた。やはり父親の横暴な行いが、許せないのだろう。
 彼のヴォルダー伯爵への感情は、複雑なものなのかもしれない。先程父親を心配していた彼のことを思い出して、私はそんなことを思っていた。
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