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7.信頼できる人達
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「結局の所、父上は何もかも好き勝手にやってきた人です。はっきりと言って、僕はあの人のことを軽蔑しています」
「こういうことを言いたくはありませんが、私もそう思ってしまいます」
「いえ、はっきりと言ってくださっていいのですよ。あなたも、既に父上の被害者だ。あんな人と婚約させられて……」
アムドラさんの言葉の節々からは、父親に対する軽蔑が伝わってくる。
実の息子である彼から、そのように言われるなんて相当だ。ヴォルダー伯爵は、本当にどうしようもない人である。
そんな彼と婚約させられたことは不幸としか言いようがない。ただ幸いなことに、アムドラさんも含めて伯爵以外の人達はいい人ばかりだ。
「アムドラさん、これから何かあったら、相談しても構いませんか? そういう相手がいなければ、少々辛いような気がして……」
「もちろんです。僕でよければ、喜んで。ああ、クルネアさんなんかも頼りになりますよ。彼女は聞き上手ですから」
「そうですか?」
私の願いを、アムドラさんは快く引き受けてくれた。
ただ、そこでもクルネアさんのことを言っている。本当に二人は、いい仲ということだろうか。
「それから、メイド長なんかも頼りになりますよ。彼女は古株で、父上のことをよく知っています」
「ああ、出迎えてくれた方ですね……」
「執事のゼボルグさんもいいかもしれません。彼はメイド長よりも古株です」
「執事さん、ですか……」
「後は、コックのボールス、庭師のレンバーなんかも」
「なるほど、信頼できる方がたくさんいらっしゃるのですね……」
アムドラさんの口からは、次から次へと使用人の名前が出てきた。
それを語る彼は、なんだか嬉しそうである。それだけ、信頼があるということだろう。
もしかしたらヴォルダー伯爵という巨悪がいるため、各々の結束は強いのかもしれない。アムドラさんの表情に、私はそんなことを思った。
「……アムドラさん、なんだか屋敷の方が騒がしくありませんか?」
「うん? それもそうですね……何かあったのでしょうか?」
「少し様子を見に行ってみましょうか」
「あの、そういうことなら私が」
そこで私は、屋敷が騒がしいということに気付いた。
何かあったのか気になる。そう思った私に対してそっと手をあげたのは、先程からずっと部屋で待機していたクルネアさんだ。
「クルネアさん、ついでに屋敷を見て回っておきたいので、案内してもらってもいいですか?」
「わかりました。そういうことならご案内します」
「僕も行きましょう」
「ええ、それなら三人で」
アムドラさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして私達は、三人で屋敷の様子を見て回ることになったのだった。
「こういうことを言いたくはありませんが、私もそう思ってしまいます」
「いえ、はっきりと言ってくださっていいのですよ。あなたも、既に父上の被害者だ。あんな人と婚約させられて……」
アムドラさんの言葉の節々からは、父親に対する軽蔑が伝わってくる。
実の息子である彼から、そのように言われるなんて相当だ。ヴォルダー伯爵は、本当にどうしようもない人である。
そんな彼と婚約させられたことは不幸としか言いようがない。ただ幸いなことに、アムドラさんも含めて伯爵以外の人達はいい人ばかりだ。
「アムドラさん、これから何かあったら、相談しても構いませんか? そういう相手がいなければ、少々辛いような気がして……」
「もちろんです。僕でよければ、喜んで。ああ、クルネアさんなんかも頼りになりますよ。彼女は聞き上手ですから」
「そうですか?」
私の願いを、アムドラさんは快く引き受けてくれた。
ただ、そこでもクルネアさんのことを言っている。本当に二人は、いい仲ということだろうか。
「それから、メイド長なんかも頼りになりますよ。彼女は古株で、父上のことをよく知っています」
「ああ、出迎えてくれた方ですね……」
「執事のゼボルグさんもいいかもしれません。彼はメイド長よりも古株です」
「執事さん、ですか……」
「後は、コックのボールス、庭師のレンバーなんかも」
「なるほど、信頼できる方がたくさんいらっしゃるのですね……」
アムドラさんの口からは、次から次へと使用人の名前が出てきた。
それを語る彼は、なんだか嬉しそうである。それだけ、信頼があるということだろう。
もしかしたらヴォルダー伯爵という巨悪がいるため、各々の結束は強いのかもしれない。アムドラさんの表情に、私はそんなことを思った。
「……アムドラさん、なんだか屋敷の方が騒がしくありませんか?」
「うん? それもそうですね……何かあったのでしょうか?」
「少し様子を見に行ってみましょうか」
「あの、そういうことなら私が」
そこで私は、屋敷が騒がしいということに気付いた。
何かあったのか気になる。そう思った私に対してそっと手をあげたのは、先程からずっと部屋で待機していたクルネアさんだ。
「クルネアさん、ついでに屋敷を見て回っておきたいので、案内してもらってもいいですか?」
「わかりました。そういうことならご案内します」
「僕も行きましょう」
「ええ、それなら三人で」
アムドラさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
こうして私達は、三人で屋敷の様子を見て回ることになったのだった。
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