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第2話 姉ではなく

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 私という人間は、どうしようもない程の落ちこぼれである。
 勉強も、魔法の才能も、優秀な姉に劣っている出来損ない。それが、私なのである。

「ミリティア、お前にはファムルド様と婚約してもらいたい」
「は?」

 そんな落ちこぼれの私に告げられたのは、この王国の第三王子との婚約だった。
 その婚約は、意味がわからないものだ。普通に考えると、優秀な姉であるマーティアが第三王子の婚約者になるべきである。
 それなのに、何故私が婚約者になるのだろうか。正直、まったく意味がわからない。

「私が、第三王子の婚約者に? 正気ですか?」
「正気に決まっているだろう」
「冗談とかでは?」
「私が、冗談を言う訳ないだろう」
「そういう訳ではありませんが……」

 困惑する私に対して、お父様は冷静だった。
 その婚約という話は、嘘偽りではなく、真実であるようだ。
 しかし、真実なら猶更質が悪い。お姉様ではなく、私が王子の婚約者など、色々な所から不満が出るはずである。

「お姉様ではなく、私が王子の婚約者になるなど、正直意味がわからないのですが……」
「意味がわからなくても、お前が婚約者になるのだ。何か不満でもあるのか?」
「不満……いえ、私に不満はなくても、王家の方々には不満があるのではないですか? お姉様の評判は、知れ渡っています。それなのに、私が婚約者になるなど……」
「当然、向こうにも許可は取ってある。既に納得済みだ」

 私の心配に対して、お父様はそう答えてきた。
 王子の婚約者が私であることは、あちらも納得済みであるようだ。
 それは、おかしな話である。王族も、婚約者には優秀な人間が欲しいはずだ。それなのに、私が婚約者で納得するはずがない。

「お父様、理由を話してもらえませんか?」
「理由か……」

 私は、どうしても気になったので、お父様に理由を問い詰めようとした。
 その質問に、お父様は顔をしかめる。その反応は、よくわからない。

 考える時点で、お父様は真実を知っているということだ。だが、その理由は話すことができない。そういうことなのだろう。
 しかし、話せない理由とは一体なんなのだろうか。それが気になって、私は自身の婚約を飲み込めないのである。

「と、とにかく、お前には近日、ファムルド様に会ってもらう」
「お父様、理由は……」
「お前に話すことはもう何もない。これで、今日の話は終わりだ」
「そんな……」

 私が理由を聞こうとしても、お父様は何も答えてくれず、強引に話を打ち切ってきた。
 結局、私は何もわからないまま、部屋を去るしかなかった。
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