2 / 28
第2話 姉ではなく
しおりを挟む
私という人間は、どうしようもない程の落ちこぼれである。
勉強も、魔法の才能も、優秀な姉に劣っている出来損ない。それが、私なのである。
「ミリティア、お前にはファムルド様と婚約してもらいたい」
「は?」
そんな落ちこぼれの私に告げられたのは、この王国の第三王子との婚約だった。
その婚約は、意味がわからないものだ。普通に考えると、優秀な姉であるマーティアが第三王子の婚約者になるべきである。
それなのに、何故私が婚約者になるのだろうか。正直、まったく意味がわからない。
「私が、第三王子の婚約者に? 正気ですか?」
「正気に決まっているだろう」
「冗談とかでは?」
「私が、冗談を言う訳ないだろう」
「そういう訳ではありませんが……」
困惑する私に対して、お父様は冷静だった。
その婚約という話は、嘘偽りではなく、真実であるようだ。
しかし、真実なら猶更質が悪い。お姉様ではなく、私が王子の婚約者など、色々な所から不満が出るはずである。
「お姉様ではなく、私が王子の婚約者になるなど、正直意味がわからないのですが……」
「意味がわからなくても、お前が婚約者になるのだ。何か不満でもあるのか?」
「不満……いえ、私に不満はなくても、王家の方々には不満があるのではないですか? お姉様の評判は、知れ渡っています。それなのに、私が婚約者になるなど……」
「当然、向こうにも許可は取ってある。既に納得済みだ」
私の心配に対して、お父様はそう答えてきた。
王子の婚約者が私であることは、あちらも納得済みであるようだ。
それは、おかしな話である。王族も、婚約者には優秀な人間が欲しいはずだ。それなのに、私が婚約者で納得するはずがない。
「お父様、理由を話してもらえませんか?」
「理由か……」
私は、どうしても気になったので、お父様に理由を問い詰めようとした。
その質問に、お父様は顔をしかめる。その反応は、よくわからない。
考える時点で、お父様は真実を知っているということだ。だが、その理由は話すことができない。そういうことなのだろう。
しかし、話せない理由とは一体なんなのだろうか。それが気になって、私は自身の婚約を飲み込めないのである。
「と、とにかく、お前には近日、ファムルド様に会ってもらう」
「お父様、理由は……」
「お前に話すことはもう何もない。これで、今日の話は終わりだ」
「そんな……」
私が理由を聞こうとしても、お父様は何も答えてくれず、強引に話を打ち切ってきた。
結局、私は何もわからないまま、部屋を去るしかなかった。
勉強も、魔法の才能も、優秀な姉に劣っている出来損ない。それが、私なのである。
「ミリティア、お前にはファムルド様と婚約してもらいたい」
「は?」
そんな落ちこぼれの私に告げられたのは、この王国の第三王子との婚約だった。
その婚約は、意味がわからないものだ。普通に考えると、優秀な姉であるマーティアが第三王子の婚約者になるべきである。
それなのに、何故私が婚約者になるのだろうか。正直、まったく意味がわからない。
「私が、第三王子の婚約者に? 正気ですか?」
「正気に決まっているだろう」
「冗談とかでは?」
「私が、冗談を言う訳ないだろう」
「そういう訳ではありませんが……」
困惑する私に対して、お父様は冷静だった。
その婚約という話は、嘘偽りではなく、真実であるようだ。
しかし、真実なら猶更質が悪い。お姉様ではなく、私が王子の婚約者など、色々な所から不満が出るはずである。
「お姉様ではなく、私が王子の婚約者になるなど、正直意味がわからないのですが……」
「意味がわからなくても、お前が婚約者になるのだ。何か不満でもあるのか?」
「不満……いえ、私に不満はなくても、王家の方々には不満があるのではないですか? お姉様の評判は、知れ渡っています。それなのに、私が婚約者になるなど……」
「当然、向こうにも許可は取ってある。既に納得済みだ」
私の心配に対して、お父様はそう答えてきた。
王子の婚約者が私であることは、あちらも納得済みであるようだ。
それは、おかしな話である。王族も、婚約者には優秀な人間が欲しいはずだ。それなのに、私が婚約者で納得するはずがない。
「お父様、理由を話してもらえませんか?」
「理由か……」
私は、どうしても気になったので、お父様に理由を問い詰めようとした。
その質問に、お父様は顔をしかめる。その反応は、よくわからない。
考える時点で、お父様は真実を知っているということだ。だが、その理由は話すことができない。そういうことなのだろう。
しかし、話せない理由とは一体なんなのだろうか。それが気になって、私は自身の婚約を飲み込めないのである。
「と、とにかく、お前には近日、ファムルド様に会ってもらう」
「お父様、理由は……」
「お前に話すことはもう何もない。これで、今日の話は終わりだ」
「そんな……」
私が理由を聞こうとしても、お父様は何も答えてくれず、強引に話を打ち切ってきた。
結局、私は何もわからないまま、部屋を去るしかなかった。
24
お気に入りに追加
575
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
結婚式の日取りに変更はありません。
ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。
私の専属侍女、リース。
2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。
色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。
2023/03/13 番外編追加
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる