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第45話−攻略対象達と友成

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朝廷が終わると俺は忠栄に呼ばれ、屋敷へと向かった。

その間、酷くむくれている善晴をなだめるのは大変だったが、久しぶりに忠栄に会えるのを楽しみにしていた。

それに、雅峰も静春も屋敷に向かっていると言っていたからな、久しぶりに話せるな~。

朝廷の時に昇殿していた三人の姿を見たが、あまり近寄りすぎると右大臣側の公家がイチャモンつけてきそうだったしな。

「兄様は忠栄に会えるのがそんなに嬉しいのだな」

「え? まあ、そうだな~」

「そうか」そう言って善晴は黙ってしまった。

そんなに分かりやすく嫉妬する奴があるか! はあ、普通の兄弟子関係に戻ってきたというのに、もうこのまま何事もなく腐活して生を全うしたいな。

静春×忠栄、雅峰×善晴、善晴×忠栄が見れるかもしれないんだ、心して会わないとな。

目の前で未だ不貞腐れている善晴を面倒くさくて無視していると、忠栄の屋敷についた。

「兄様! 久しぶりだ、変わりないか?」

「満成! ああ、」名前を呼んでいつものように柔和な笑みで迎えてくれた忠栄は俺に抱き着いた。

あ~、久しぶりの兄様だ~! 

「おい忠栄兄様から離れろ」そう早口で善晴は忠栄の肩に手を置く。

「あれ? 気のせいですか? 僕は、満成以外を弟弟子として兄様呼びを許していませんよ」

「お前、」忠栄の言い方が気に喰わなかったのか善晴は忠栄の細い肩を自分の方に引っ張ると忠栄を身体に寄せた。

「おお、これはまさか、もう見れることはないと思っていたが、まさか善晴×忠栄を目の前で見れるとは、眼福が過ぎる」俺は距離の近い二人の姿を見て半ば諦めていた腐を堪能した。が、声が漏れてしまっていたようで、忠栄は呆れ顔をしつつも何も言わずにいてくれた。

「私は兄様以外とはそのような関係にならん」

俺が声にしてしまった事の意味を分かって言っているように聞こえるのは気のせいだと思いたい。しかし、俺はそんなことよりも善晴がまだ忠栄の肩に触れていることに目がいってしまう。

兄様の薄い肩に善晴の大きな手が触れている……。きっと、優しく触れているに違いない。

そんな考えが頭の中に浮かんで、それはそれは、なかなかの距離感でありがとうございますと口に出さずに感謝した。

だが、その感謝には二人がそういう関係になっていないから出来るものだと、頭のどこかでそう考えていた。

「満成、貴方に会わせたい人がいるんです」そう言って忠栄は部屋に案内する。

静春、雅峰……のほかに誰かいたか?

部屋に着いた途端、俺の体に突進してくる勢いで、自分と同じ体格の水干姿の青年がぶつかってきた。

「あ、兄上ぇ!」

そこには、播磨にいるはずの弟の友成の姿があった。水干を纏い、相変わらずに首紙の緒を揺らしている。

「友成!? お前どうしてここに!」

「父上が昇官し、京に戻ってきたんですよ! 僕もこの間大学寮を出て、官位を頂きました!」友成はそう言って、俺に抱き着いたまま嬉しそうに話している。

「ハハ、そうかそうだったのか、もうこっちに戻ってきたんだな」

友成は俺から体を離すと満面の笑みで「はい!」と返事をした。

「それで、兄様にご報告したいことがありまして……」恥ずかしそうな表情とは反対に嬉しそうな口ぶりからすると、よほどの事があったのだろう。後ろで事情を知っている様子の雅峰、静春、忠栄がこちらを見て笑っている。

あの三人は兄の俺が知らないことをすでに知っているのか、離れているとこういうことがあるから寂しいよな。

「なんだ?」と急かさないように落ち着いた調子で言った。しかし、俺の予想していなかった言葉が友成の口から出た。

「それが、右近衛将の姫様のところに通っておりまして、その、姫様がご懐妊されたのです」

「はあ!?」ついこの前まであんなに小さかった友成が、子供を産む? あ、いや違うか産むのは姫様か。

「友成、おめでとう?」それだけなんとか伝えると、まだ頭の中が混乱していて倒れそうになったところ雅峰に抱き留められた。友成の話の内容を知っていたから、俺が倒れるだろうと後ろにいてくれたらしい。

「ありがとう、雅峰」

「大丈夫か? 弟の話を聞いて驚いただろう」そう言って、クスリと小さく笑った。

「ああ、まさか子が出来るとは思わんかった……」

「だよな、こいつ俺が狙ってた姫様を手中に落としたんだぜ、俺も聞いた時は参ったよ」そう言って静春は友成の肩を軽く叩く。友成は照れくさそうに笑っていた。

まさか、友成に子供が出来る、な、ん……あれ? そういえば、友成に子供が出来る時って満成が良佳を操って、京を襲って返り討ちに合った時にはすでに姫の体に宿っていたよな。

そうか、そうか! このまま、俺が死ななければ友成は京に復讐し死ぬこともないんだ!

それに、今の友成の嬉しそうな顔を見たらそんな事は絶対起こしたくないな。

「おい、雅峰いつまで兄様に触れている」後ろの方で雅峰に喧嘩を売る態度の善晴の声がした。

「俺が触れては駄目なお方か?」雅峰は堂々とそう言って、俺の体を引く。俺は雅峰の体に抱き着く形になってしまった。

ゴク……これは、凄い。

まさかこんなにいい体に育ったとは。と雅峰の体が出会った時より逞しくなっているのを袍の上から感じ、素晴らしい筋肉の厚みに感動した。

「ハッ! 普段の東宮様の一人称が代わっているぞ……雅峰。兄様もそいつから離れろ」

善晴に腕を引っ張られ、その筋肉を名残惜しく感じながら、今度は善晴のしっかりとした体躯に鼻をぶつけた。

クソ、静春の成長具合に喜びを感じてたのに! 

「くだらないことで言い合いをするな」と、少し不機嫌になって下から善晴を睨み上げた。

「クッ、ごめんなさい、……鼻、痛くないか?」そう言って善晴は俺の顔に触れる。

お前だってさっき忠栄を抱いてたくせに。

「それで、羅城門の鬼祓いはいつから始めるのかい?」忠善の声が聞こえて振り返ると、細い血管の青筋を顔に浮かばせた忠栄がお菓子を机に広げていた。

俺は善晴の腕を引きはがし座ってお菓子を貰いながら、これからの計画について話した。

「羅城門の鬼の所には行くぞ」と最初に言うと友成が不安そうに「おやめください」と言ったの。

「大丈夫だ、話せばわかるやつだから、なあ静春?」静春はきっと気付いてしまっているだろう、あの場で三毒に襲われた時に。

「ああ、良佳さんは俺を庇ってくれた、彼が人を簡単に殺すような鬼ではない」

静春を庇って、刀を腕で受け止めたにも関わらず、無傷でいたもんな。強靭な肉体を持つ鬼以外にそんなことが出来る人間なんていないからな。

「それでだ、貴族殺しの鬼は夕暮れに現れると言われている、だから、その前に俺は高階邸に行く」

羅城門にはきっと右大臣の目があるだろう。陽が高いうちに良香に会いに行って、密通していたと帝に言われれば、俺は流罪か……いや、死ぬ可能性も高い。善晴は助けてくれると思うが、それで善晴の立場が悪くなるのも駄目だ。貴族達の言うとおり、鬼が現れる夕暮れ時に出向いたほうがいいだろう。

「高階邸に? なぜだ?」そう言った静春と同じように他の四人も驚いていた。

「なぜって、文章博士が言っていただろう、右大臣から今は亡き元東宮学士宛に贈り物があったって」

「ああ! だが、あの屋敷はすでに遺品整理をしたって重が言ってたぞ」

「なら、その贈り物が見つかったか話を聞きに行ってからだな」

そう言って忠栄のお菓子を食べ、最初に文章博士の屋敷に向かおうとしたが、忠栄、静春、雅峰、友成も一緒に行きたいと言いだした。

「僕は着いていきますよ!」意気揚々として言っているが、目の下に酷い隈を作っている様子からしてここ数日まともに寝れていないのがうかがえた。

「そう言うが、兄様は博士を兼任されて忙しいでしょう?」そう言うと、暦・陰陽博士を兼任して、やはり仕事量が多いのだろう、「これなら、博士になるんじゃなかった」と悔しがっていた。

「俺も行く」当たり前だろうという顔でそう言った雅峰。なんでそんな堂々言っているのか分からないが、「却下だ」と言うと、雅峰は断られるとは思っていなかったのか、意味が分からないという顔をした。

「当たり前だろう? 東宮に怪我をさせるわけにはいかないんだ」と言うと、「怪我なんかしない、満成を守れるぐらいには鍛えている、弓の技術もあがったぞ」と子供の様にごねたが、流石についてこられても困るので、「東宮に怪我をさせたと右大臣側に突かれたら困る」と言うと、分かってくれたようで渋々諦めてくれた。

「兄上!」と友成が自分もと主張したが、無視を決め込んだ。優しい忠栄が「一緒にお留守番していましょうね」と言って友成を慰めていた。すまん、だが、せっかく子が宿った女がいるんだ、本当だったらこの件に友成を巻き込みたくない。

すると、今度は静春が「お! 俺は行くぞ、重も良佳さんも知ってるし」と置いていく三人の前で堂々と俺は必要だろ? と言ってるようで、俺は確かにこいつなら連れて行っても特に問題がないと判断して、良佳と善晴が絶対対立すと思うから良佳を任せるつもりで同意した。

そして、俺は静春と善晴を連れて文章博士の所に向かうと三人に伝えると、

「善晴は連れて行くのですか!?」
「そいつは連れて行くのか!?」
「どうして、僕は連れて行ってくれないのに!」

当たり前のことを聞いてきたので、「善晴はいてもいなくても、特に問題はないから」と三人に言ったら、善晴が納得いかないと言う三人の前に出て、「兄様が決めた事だ、お前らは留守番をしていろ」と煽っていたので、俺は扇を閉じて善晴の頭を叩いた。

「それじゃあ行ってくる、が何かあったら式を飛ばしてくれ」そう言って、忠栄の屋敷を後にした。

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