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第14話-攻略対象 羅城門の鬼、良佳

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主人公と良香が出会うのは在原静春、賀茂忠栄、安倍善晴、源雅峰と続いて出逢った後だ。

***

貴族の一人が夜中、鬼によって羅城門近くで殺された。
その祓いを行うため昼に、陰陽師 賀茂忠栄とともに赴いた羅城門近くで主人公 香澄は良佳と出会った。

香澄は良佳の正体が都で噂になっていた、恐ろしい鬼だと知る。

しかし、羅城門での貴族殺しは良佳の仕業でなく、敵対していた貴族が雇った呪禁師によって殺されたのだとわかった。
良佳と力を合わせその呪禁師を探している最中、香澄に向かって呪を使い襲いかかってきたため、良佳と忠栄は怒り、呪禁師を殺してしまった。
帝には良佳のことを伏せ忠栄が報告し、そのまま事は治まった。

***


その事件以上に鬼としての役目なのか、終盤に差し掛かると良佳は蘆屋満成に強制的に従わされ、都を破壊しようとするのだ。

しかし、良佳は香澄のおかげで意識を取り戻す。

良佳はともに満成を倒すことになる。


銀砂子の扇を少し上げ、相手からはぎりぎり目が見える位置にかざす。物見を少し開けて声のする方を見る。
すると、相手はその視線にいち早く気づき、なんのためらいもなく近寄ってきた。

相手を確認するために遠くから眺めるだけだと考えていたが、急に近づいてきた良佳に目を見開く。一瞬のことで体が追い付かずそのまま硬直してしまった。

か、かっけえ……、って、え! 
いつの間に目の前にきたんだ!

容姿に魅入っていると、雑に簾をめくり中に顔を入れてきた良佳。

見つめてくる茶色の双眸、かすかな日の光をさしたところが滲む赤色の瞳、屈んでいるせいか上目遣いをしていて目じりが垂れている。

やや吊り上がった眉毛が人を誘惑させる雰囲気を醸し出している。

形の綺麗な鼻筋の先は尖がり、噛みつかれたくなる分厚い唇を得意そうに口角を上げていた。

背中に流しているくせっけの長い茶髪は、日に当たり線を描くように金色に輝いている。

そして、やや褐色な肌色は男の野性味を引き立たせ、黒い衣の前を大きく開き、そこには鍛え上げられくっきりと境目がわかる胸板があった。

周りの人間は驚き、従者の武士に至ってはやっと武器を構える。相手が近づいてきたときに構えなかったのは、良佳の動きが早すぎたのだ。

息を吸った時にはもう目の前にいた。

従者はあっけにとられて目を丸くしていた。

「下がれ」

彼らに武器を下ろすように命じる。

殺意はない。ここで事を荒らげては噂好きの貴族らに目をつけられかねない。深く関わることはあまり得策ではないな。

……くそ、顔が良すぎる。

良佳に見られて緊張しているが、扇のおかげで表情を隠すことができた。目はじっと良佳をみているが、しかし、唇はニヤつきが止まらない。

「ふーん。我の顔を見ようとしてただろうに、思ったより反応が鈍いな」

「……」


いいえ、違います! 
あんたの顔を見て絶賛震えてます! 

良香はその美しい顔を近づけ、すると長い髪の毛の束が肩から前に垂れた。

わー! 頼むからその良い顔をこれ以上近づけないでくれ! 
それに、ご立派な胸元が破廉恥すぎてあなたの目しか見れないんだよ!

俺がそんなことを考えているとも知らずに良佳は顔を顰める。不機嫌そうな顔になるとより、その雄のフェロモンはより強くなった。

え? もしかして、心の声聞こえてる?
やばい。ごめんなさい! 
もうエロい目であんたのこと見ないから~!!

「ふん、下民とは口を利きたくないってか」

「……え?」

いきなり、輿の中で風が吹き簾が揺れる。
持っていた扇が強い風で吹き飛ばされ、扇がカタンといって外に落ちる。

「ぁ!」

扇が手から離れてしまい、反射的に声が漏れた。

視線が気になり良佳の方を見ると、彼は眼を剥いて俺の顔をまじまじと見つめてくる。

「…‥‥ほお。ぬしも大層な顔を持っとるではないか」

妖しい笑みを浮かべた良佳にカッと顔が赤くなり、袖で顔を隠す。
良佳は半身乗り込んでいた体を簾から出したらしく、簾のカサリという音が聞こえた。
そして、簾から彼の影が消えた。

はあ、心臓が止まって死ぬかと思った。

しかし、直ぐに大きな影が差し込み簾がめくられた。
突然のことに肩を揺らす。
良佳は「はい、姫さん」と言って扇を渡してきた。
その時の彼の目は、まるで甘い夜を求めるかのように、笑みを細めた目元に浮かべている。
女らが言っていたとおり孕みそうな瞳に胸が激しく脈打った。
扇を素早く奪い、熱が集まる顔を隠しながら礼を言った。
良佳の笑い声が聞こえる。

うう~、なぜか、とてつもなく恥ずかしい!

扇の縁からちらりと盗み見ると、今度は優しそうに笑っている。しかし、その目はギラリと俺を見ているようだった。その目から逃れるように視線を外す。従者らに車を進めるように言う。

最後、下がった簾越しに影が大きく差した。 
良佳のとろりとした低い声が近くで聞こえた。

「また、逢いたい」

それは、愛されるという自信とこの場で犯してやろうかという思惑を含んだ声だった。
簾の中で手に汗を浮かべ、袖を絞るように掴んだ。
良佳が簾から離れた事を従者は確認し、羅城門を通る。

物語の中心、京の都に入ったというのに、爆発しそうな心臓を感じ、「俺、もう死ぬかも」と、この先の自分の身の上より攻略対象者たちの顔を見ることに危機感を持った。

こいつらも恐ろしいのだろう。

裾に隠れていた双葉火玉の式がカタカタと震えていた。



    
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