55 / 63
第四章 最愛の番
九
しおりを挟む
___ ___
第三章 九 にて副院長の専門が「内科・心療」と打ち間違いがありました。「内科・小児科」です。
この時点を持ちまして、すでに書き換えてあります。把握のほどよろしくお願い致します。
___ ___
秀也から電話があり、会う約束をした日の前日。拓海は長期休暇を取って間もない南に相談せずにいた。
もし、俺が秀也と会うって言ったら、付いて来てくれるだろうな。一緒にいてくれたら心強いけど、これは自分と秀也の問題だから、迷惑はかけられない。
拓海は秀也の話したい事が、どんな話なのかはおおよそ見当はついていたためか、そこまで落ち込むことはなかった。それでも、拓海の積み重なった傷心が消える事は無かったが。
南先輩があの日助けてくれたから、前ほどストレスが溜まっていないのもあるだろうな。ヒートがきてもその期間は外に泊まってくれたから不安もなかったし。
ああでも、と拓海は明日秀也と会うのを考えてしまい、終日心を落ち着かせる事はなかった。
その日、拓海は最後の患者の診察をしていた。患者は小さな子供だった。母親に連れられて、鼻水が止まらないと症状を訴えた。
「花粉かしら?」
心配する母親の声を聞きながら、子供の耳の中を確認する。
「んー、鼻風邪だね~」
と母親に言って、拓海は子供の鼻水を機械で吸い取る。
その間、子供は驚きもせず、無表情のまま拓海の顔を見ていた。
緊張しているのかな?
作業が終わると、最後に耳の中を確認する。
まだ、大丈夫か。中耳炎になる前に耳の中も掃除しておくか。
「中耳炎になるかもしれないから、耳掃除しておくね」
母親にそう伝え、終えると。
怖いよね。こんなに大人しくよく我慢しているな。
「よく頑張ったね」
拓海は作業を終えると、安心を与える笑顔で褒めた。
子供は「うん!」と言って、凄いでしょと言わんばかりの笑顔を拓海に向けた。
拓海は子供のその反応に対して笑顔で頷いた。
「お薬出しますので、あとは受付でお待ちください」
「新条先生、ありがとう!」
「うん、早く元気になれるようにお母さんの言う事をよく聞くんだよ?」
「はい!」
「あ、お母さん。もし風邪が長引くようでしたらまたお越しください」
「先生、ありがとうございました」と母親が頭を下げ、子供の手を握って診察室から出ていった。
書き込んだ診断書をコピーして裏から診察室を出ると、その廊下は受付に繋がるので、拓海は受付に声を掛けた。
「これ、さっきの患者さんの診断です」
と拓海は言って、受付の看護師に紙を渡して、診察室に戻ろうとした時、先程の子供と母親が待合室で拓海に手を振っていた。
拓海は子供に手を振り返し、母親に会釈した。
あの子の体調が早く良くなると良いな。
第三章 九 にて副院長の専門が「内科・心療」と打ち間違いがありました。「内科・小児科」です。
この時点を持ちまして、すでに書き換えてあります。把握のほどよろしくお願い致します。
___ ___
秀也から電話があり、会う約束をした日の前日。拓海は長期休暇を取って間もない南に相談せずにいた。
もし、俺が秀也と会うって言ったら、付いて来てくれるだろうな。一緒にいてくれたら心強いけど、これは自分と秀也の問題だから、迷惑はかけられない。
拓海は秀也の話したい事が、どんな話なのかはおおよそ見当はついていたためか、そこまで落ち込むことはなかった。それでも、拓海の積み重なった傷心が消える事は無かったが。
南先輩があの日助けてくれたから、前ほどストレスが溜まっていないのもあるだろうな。ヒートがきてもその期間は外に泊まってくれたから不安もなかったし。
ああでも、と拓海は明日秀也と会うのを考えてしまい、終日心を落ち着かせる事はなかった。
その日、拓海は最後の患者の診察をしていた。患者は小さな子供だった。母親に連れられて、鼻水が止まらないと症状を訴えた。
「花粉かしら?」
心配する母親の声を聞きながら、子供の耳の中を確認する。
「んー、鼻風邪だね~」
と母親に言って、拓海は子供の鼻水を機械で吸い取る。
その間、子供は驚きもせず、無表情のまま拓海の顔を見ていた。
緊張しているのかな?
作業が終わると、最後に耳の中を確認する。
まだ、大丈夫か。中耳炎になる前に耳の中も掃除しておくか。
「中耳炎になるかもしれないから、耳掃除しておくね」
母親にそう伝え、終えると。
怖いよね。こんなに大人しくよく我慢しているな。
「よく頑張ったね」
拓海は作業を終えると、安心を与える笑顔で褒めた。
子供は「うん!」と言って、凄いでしょと言わんばかりの笑顔を拓海に向けた。
拓海は子供のその反応に対して笑顔で頷いた。
「お薬出しますので、あとは受付でお待ちください」
「新条先生、ありがとう!」
「うん、早く元気になれるようにお母さんの言う事をよく聞くんだよ?」
「はい!」
「あ、お母さん。もし風邪が長引くようでしたらまたお越しください」
「先生、ありがとうございました」と母親が頭を下げ、子供の手を握って診察室から出ていった。
書き込んだ診断書をコピーして裏から診察室を出ると、その廊下は受付に繋がるので、拓海は受付に声を掛けた。
「これ、さっきの患者さんの診断です」
と拓海は言って、受付の看護師に紙を渡して、診察室に戻ろうとした時、先程の子供と母親が待合室で拓海に手を振っていた。
拓海は子供に手を振り返し、母親に会釈した。
あの子の体調が早く良くなると良いな。
17
お気に入りに追加
652
あなたにおすすめの小説
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
記憶喪失の君と…
R(アール)
BL
陽は湊と恋人だった。
ひねくれて誰からも愛されないような陽を湊だけが可愛いと、好きだと言ってくれた。
順風満帆な生活を送っているなか、湊が記憶喪失になり、陽のことだけを忘れてしまって…!
ハッピーエンド保証
【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~
ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる