【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念

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第四章 最愛の番

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第三章 九 にて副院長の専門が「内科・心療」と打ち間違いがありました。「内科・小児科」です。
この時点を持ちまして、すでに書き換えてあります。把握のほどよろしくお願い致します。
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秀也から電話があり、会う約束をした日の前日。拓海は長期休暇を取って間もない南に相談せずにいた。
 もし、俺が秀也と会うって言ったら、付いて来てくれるだろうな。一緒にいてくれたら心強いけど、これは自分と秀也の問題だから、迷惑はかけられない。
拓海は秀也の話したい事が、どんな話なのかはおおよそ見当はついていたためか、そこまで落ち込むことはなかった。それでも、拓海の積み重なった傷心が消える事は無かったが。
 南先輩があの日助けてくれたから、前ほどストレスが溜まっていないのもあるだろうな。ヒートがきてもその期間は外に泊まってくれたから不安もなかったし。
ああでも、と拓海は明日秀也と会うのを考えてしまい、終日心を落ち着かせる事はなかった。

その日、拓海は最後の患者の診察をしていた。患者は小さな子供だった。母親に連れられて、鼻水が止まらないと症状を訴えた。
「花粉かしら?」
心配する母親の声を聞きながら、子供の耳の中を確認する。
「んー、鼻風邪だね~」
と母親に言って、拓海は子供の鼻水を機械で吸い取る。
その間、子供は驚きもせず、無表情のまま拓海の顔を見ていた。
 緊張しているのかな?
作業が終わると、最後に耳の中を確認する。
 まだ、大丈夫か。中耳炎になる前に耳の中も掃除しておくか。
「中耳炎になるかもしれないから、耳掃除しておくね」
母親にそう伝え、終えると。
 怖いよね。こんなに大人しくよく我慢しているな。
「よく頑張ったね」
拓海は作業を終えると、安心を与える笑顔で褒めた。
子供は「うん!」と言って、凄いでしょと言わんばかりの笑顔を拓海に向けた。
拓海は子供のその反応に対して笑顔で頷いた。
「お薬出しますので、あとは受付でお待ちください」
「新条先生、ありがとう!」
「うん、早く元気になれるようにお母さんの言う事をよく聞くんだよ?」
「はい!」
「あ、お母さん。もし風邪が長引くようでしたらまたお越しください」
「先生、ありがとうございました」と母親が頭を下げ、子供の手を握って診察室から出ていった。
書き込んだ診断書をコピーして裏から診察室を出ると、その廊下は受付に繋がるので、拓海は受付に声を掛けた。
「これ、さっきの患者さんの診断です」
と拓海は言って、受付の看護師に紙を渡して、診察室に戻ろうとした時、先程の子供と母親が待合室で拓海に手を振っていた。
拓海は子供に手を振り返し、母親に会釈した。
 あの子の体調が早く良くなると良いな。

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