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第四章 最愛の番
二
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南は自宅の玄関に拓海を座らせると、靴を脱がす。その拍子に目を覚ました拓海に、「起きたか?」と声を掛けた。
「ふふ」と目元を垂れさせて笑う拓海。
ああ、酔っ払いか。
拓海は靴を脱いだことに気付いて、勝手に南の部屋に上がった。
その様子にしょうがないなと笑みを零しながら、南も靴を脱いで廊下を見ると、ギョッとした。
先ほどまで拓海が身に着けていた衣服が跡を残すように脱ぎ捨てられていたからだ。
「まじか!」
つい口に出してしまうほど焦った南はリビングに恐る恐る足を踏み入れた。
手は出さない。手は出さない。
念じるように南は拓海の二本の腕がはみ出てるソファに近づく。
拓海がソファに寝っ転がりながら楽しそうに鼻歌を口ずさむ。
ああ、良かった。下着は身に着けてるな。
南は鼻歌が聞こえるなか、自室から新しい寝間着を取り出し、拓海に着替えさせた。
シャツのボタンを留めていると鼻歌の音程が外れて、それが可笑しかったらしく拓海は「ふふ、あはは」と笑う。
可愛いなと思いながら、拓海の頭を撫でる。
喉が渇いて水を取りに行こうと立ち上がったら、下に腕を引かれた。拓海が南の服の袖を掴んでいた。
「どうした?」
鼻歌をやめた拓海は下を向いて、ボソッと呟いた。
「ごめん、もう一回言って?」小さすぎて聞こえなかった南は耳を拓海の顔に近づける。
「離れないで」拓海は声を出さずに涙を流し始めた。
南はどうしようもなく、拓海を抱きしめた。
間違えているかもしれない。今俺がしている事を拓海が本当に求めているのは、池上だろう。でも。
拓海の体が小刻みに震えていたのを放っておくことは出来なかった。
落ち着いて眠ってしまった拓海をベッドに寝かせる。自分はソファで寝ようと傍を離れた時、また拓海に服の袖を引っ張られた。
「さみしい、一緒にいて」
きっと、無意識だろう。目を瞑ったままの拓海の口から悲しそうな声でそう言われて、南は拓海の横に体を倒した。
すると、泣きそうだった顔が自然に元に戻った。
俺の知らないところで辛い目にあわないでほしい。出来るなら、このままここに閉じ込めておきたい。……馬鹿だな俺、自分もそんなことを望んじゃいないのに。
南は拓海の頑張っている姿好きだった。医大生でバイトをしている人なんて自分の周りにはいなかった。恵まれた家に生まれて勉強をする事しか求められておらず、学生生活の不安なんて留年するかしないかだった。
だが、拓海は社会からより多くを求められ不安定な足元で立たされ続けているのにも関わらず、自分の足だけで立っていた。最初南はその姿を見てなんて痛々しいんだと思ったほどだ。
だから、強引にでも手助けをしてあげたいのだ。目の届かないところで危うい彼が崩れてしまわないよう、ずっと手元に置きたいと何度思っただろう。
「いつでも俺のところに来ていいからな」
拓海は「ふふ」と笑って寝返りを打った。南はずれた布団を拓海の顎の下までなおしてあげた。
「ふふ」と目元を垂れさせて笑う拓海。
ああ、酔っ払いか。
拓海は靴を脱いだことに気付いて、勝手に南の部屋に上がった。
その様子にしょうがないなと笑みを零しながら、南も靴を脱いで廊下を見ると、ギョッとした。
先ほどまで拓海が身に着けていた衣服が跡を残すように脱ぎ捨てられていたからだ。
「まじか!」
つい口に出してしまうほど焦った南はリビングに恐る恐る足を踏み入れた。
手は出さない。手は出さない。
念じるように南は拓海の二本の腕がはみ出てるソファに近づく。
拓海がソファに寝っ転がりながら楽しそうに鼻歌を口ずさむ。
ああ、良かった。下着は身に着けてるな。
南は鼻歌が聞こえるなか、自室から新しい寝間着を取り出し、拓海に着替えさせた。
シャツのボタンを留めていると鼻歌の音程が外れて、それが可笑しかったらしく拓海は「ふふ、あはは」と笑う。
可愛いなと思いながら、拓海の頭を撫でる。
喉が渇いて水を取りに行こうと立ち上がったら、下に腕を引かれた。拓海が南の服の袖を掴んでいた。
「どうした?」
鼻歌をやめた拓海は下を向いて、ボソッと呟いた。
「ごめん、もう一回言って?」小さすぎて聞こえなかった南は耳を拓海の顔に近づける。
「離れないで」拓海は声を出さずに涙を流し始めた。
南はどうしようもなく、拓海を抱きしめた。
間違えているかもしれない。今俺がしている事を拓海が本当に求めているのは、池上だろう。でも。
拓海の体が小刻みに震えていたのを放っておくことは出来なかった。
落ち着いて眠ってしまった拓海をベッドに寝かせる。自分はソファで寝ようと傍を離れた時、また拓海に服の袖を引っ張られた。
「さみしい、一緒にいて」
きっと、無意識だろう。目を瞑ったままの拓海の口から悲しそうな声でそう言われて、南は拓海の横に体を倒した。
すると、泣きそうだった顔が自然に元に戻った。
俺の知らないところで辛い目にあわないでほしい。出来るなら、このままここに閉じ込めておきたい。……馬鹿だな俺、自分もそんなことを望んじゃいないのに。
南は拓海の頑張っている姿好きだった。医大生でバイトをしている人なんて自分の周りにはいなかった。恵まれた家に生まれて勉強をする事しか求められておらず、学生生活の不安なんて留年するかしないかだった。
だが、拓海は社会からより多くを求められ不安定な足元で立たされ続けているのにも関わらず、自分の足だけで立っていた。最初南はその姿を見てなんて痛々しいんだと思ったほどだ。
だから、強引にでも手助けをしてあげたいのだ。目の届かないところで危うい彼が崩れてしまわないよう、ずっと手元に置きたいと何度思っただろう。
「いつでも俺のところに来ていいからな」
拓海は「ふふ」と笑って寝返りを打った。南はずれた布団を拓海の顎の下までなおしてあげた。
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