【運命】に捨てられ捨てたΩ

雨宮一楼

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第三章 愛した人

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【予定が空いている日はありますか?】

朝早く秀也からメッセージがあった。
まだ六時前だというのにこんな時間に送ってるのは、拓海がメッセージを確認する時間だと分かっているからだ。
拓海は仕事を始めてから、好きな時間にメッセージを確認出来なくなった。それがあって秀也への連絡が疎かになってしまった。
これが秀也を心配させる事だと拓海は気づき、朝昼晩決まった時間に確認することにした。
そのルーティンをしてから拓海の返信が途絶えてから、秀也からのメッセージは拓海が確認する時間帯の数分前に送られるようになった。
「マメな男だな」
拓海はコーヒーを飲みながら、返信する。
【仕事が始まったばかりだから、まだ暫く会えそうにない】

数分経って返信を知らせる音がなる。
【分かりました! いつでも大丈夫です。
お仕事頑張ってください!】

 良かった。特に気にしていなそうだ。……早く仕事に慣れて、秀也とよく話さないと。

拓海と秀也の気持ちがすれ違い、突然秀也がアパートに訪ねてきたあの日以来、二人の間の空気は良くないままだった。
夜、何もする事無く泊まった秀也。ずっと手を繋いだままベッドで眠った。時折、拓海に触れてこようとする手は握りしめると拓海の身体から離れた。
秀也が終始そんな様子だったため、拓海は女性について、何も聞くことはなかった。
また、秀也を気にしている理由はそれだけではなく、彼に"頼る"事をしなかった事にもある。それが秀也にとってどれほど思い悩んだのだろうか、拓海は考える事しか出来なかった。
秀也の気持ちを聞いてしまえば簡単に解決するのだと分かっている。しかし、全て聞いてしまっても、それは言葉で理解することは出来ても、彼の気持ちを同じに知ることは難しい。

 秀也はもっと思い悩めばいい、お前の事で俺がこんなに不安になって、惨めな思いをして、お前の行動でいちいち苦しめられているのだから。

「はあ。そろそろ行くか」

拓海は深いため息を吐いて、気持ちを落ち着かせた。
時刻は出勤までにまだまだ余裕がある。
今日はゆっくり歩いて出勤しよう。そう決めて、身支度を済ませた。拓海は鏡で最終確認すると、ずっと明るかった髪色から暗い色味になった違和感がなんとなく無くなってきた気がした。
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