【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念

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第一章 運命の出会い

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【カフェに着きました。先に中に入ってます。ゆっくり来てください】
 
 拓海へメッセージを送った後、秀也はニヤつく顔をなんとか抑えながら、テーブルの下で絡ませている長い足を解いたりしてを繰り返しては、カフェの窓の外を見て拓海の姿を待ち遠しそうに探している。
 秀也は今日が楽しみ過ぎて、居ても立ってもいられず、約束の時間よりかなり早めに外に出て本屋に行ったり、適当に雑貨屋さんに入っていたが、最終的には拓海と待ち合わせしている最寄り駅から近いカフェに一時間前には入っていた。早く着きすぎたのは自分の都合なので、拓海に気を使わせないと約束の時間の十分前にメッセージを送った。

 まさか、約束を守ってくれるとは思わなかった。眠そうにして相槌を打っていたから、無理やり約束をこじつけたようなものなのに。それに、悲しい条件を持たされたが連絡先まで貰えた。……あの人、意外とガード緩いな。

 スマホの写真フォルダを開き、いくつもの隠し撮りをした拓海の写真を横にスライドして眺めている。いつ撮ったのか分からないものから、二人でいる時でしかも真横から撮った眠たそうにしている横顔の写真など、許可など取っていないような写真を、すでに何百枚も保存している。 
 写真をスライドしている手が、ある写真で止まった。

 この男、父さんに連れていかれた懇親会で見た事がある。確か、病院経営の方の五十嵐さんの息子だったかな。
 
 写真に顔の半分だけ映っている男は、まさしく拓海の先輩の南だった。秀也は笑っている南の顔に爪を立てる。そして、爪で数回その上でカツカツと音を立て、それを見ている彼の目が南を睨みつけている。
 すると、メッセージがあったのを告げる音が鳴った。すぐに相手のメッセージを開く。

【ごめん、電車が遅延してる。あと二駅過ぎたら着く】

 遅刻をする旨のメッセージでありながらも、秀也は相手が告白をしてきたかのように緩み切った表情を浮かべる。まあ、拓海以外の人が秀也に告白をしたとしてもきっと彼は、このような顔を浮かべることはないだろう。
 秀也は先ほどの苛つきなどすでに忘れて、愛おしい人に返事をした。

【大丈夫ですよ! 階段に気を付けてカフェに来てください】

 そう送るとスマホをテーブルに置き、鞄からシンプルなグレーの眼鏡ケースを取り出し、中から眼鏡拭きを取ると、丁寧に両手で銀フレームの眼鏡を外し、ゆっくりと傷をつけないよう優しくレンズを拭いた。
 その姿はまるで、歴史ある絵画や名の知れた芸術品を修復する保存修復師のような繊細な所作だった。
 
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