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家出
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私は電車に揺られながら窓に移る自分を眺めていた。眩しい夕日が私を照らしていた。行先は決まってない。ただどこか遠くへ行きたかった。初めて1人で電車に乗った。この電車がどこへ向かってるかもわからなかった。私は家出をした。家出の理由は些細な喧嘩だった。私は嫌になって家を飛び出した。家に帰りたくなかった。家に帰ると怒られそうだったから帰りたくなかった。トンネルの中に入り顔がハッキリ見えた。なんとも寂しそうな顔をしてた。これからどうしようかと考えた。1人では暮らしていけない。だけど頼れる人はいない。ぼんやりと窓を眺めているとトンネルから抜けた。夕日で一瞬前が見えなくなったけど直ぐになれて驚いた。
「……海だ」
窓の外には海が拡がっていた。夕日でギラギラと輝く海はとても綺麗だ。車内のアナウンスが聞こえた。終点らしい。私は電車から降りて駅を出た。鼻に漂う潮の香りと、波の音が耳に入った。私は砂浜まで歩いた。海に来たのは何年ぶりだっただろうか。昔お姉ちゃんと来たのが最後だった。とても懐かしくて。楽しかった記憶がある。砂浜を歩いてると1人の女性を見かけた。誰だろうか?一人砂浜で座っていた。私と同じ家出をしている人なのかなと思って話しかけることにした。
「ここで何してるの?」
「何してるか…特に何もしていないわよ……」
特にびっくりした様子もなく、悲しそうに海を眺めながらただ私の質問に淡々と答えた。初めて会う人に話しかけられたら少しはびっくりすると思ったが、この人はびっくりしなかった。なんでだろうか?
「そうなんだね」
「あなたは、どうしてここにいるの?」
女性は、こっちを振り向かず。海をずっと眺めながら、質問をしてきた。
「私は、家出をしたの」
「家出?どうして?」
「些細な喧嘩で家出したの。そういうあなたはどうしてここにいるの?」
「些細な喧嘩ねぇ。まぁ私もそんな感じよ。聞いてもつまらないけど、聞きたい?」
女性はそう聞いてきた。実際少し興味があったから聞きたかった。だから私は言った。
「聞いてみたい」
そう言うと、女性はわかったと言って喋り始めた。
「私がまだ小学生の時に親と喧嘩したの。授業参観に来てくれると言っていたのに。仕事で出張することになって来れなくなったって、お母さんは言ったの。私は言ってしまったの。私よりも仕事を優先するお母さんは嫌いって。どっかに行っちゃえって言ったの。それから口を聞かなくなったの。そして授業参観の日。お母さんは朝から出張に出かけた。私はいつものように学校へ行ったの。そして2時間目の授業が終わったぐらいに。先生から呼び出された。お母さんが事故にあったって。私は状況が上手く飲み込めなかったけど。先生と一緒に病院へ行ったの。だけど着いた時にはもう遅かった。最後に何か話したかった。謝りたかった。だけどもう話せないし、謝ることも出来ない。私は後悔したわ。親に最後に言った言葉がどこかに行っちゃえなんて。私は本当にバカだよ。そして私はとある組織に拾われて、そして自分の手を汚してしまった。私ってなんで生きているんだろう。私に生きる価値なんてあるのかな?」
目の前の女性は泣いていた。この人が送ってきた人生はとても辛かったのだと話を聞いてるだけでわかった。女性の手は赤く染っていた。手を汚してしまったとはどういうことか?ペンキで汚してしまったのか?
「ごめんね。こんな話ししてもつまらないよね。だけど少し楽になった」
きっとこの女性はずっとひとりで抱え込んでいたんだろう。私に辛かったことを吐き出せて。少しは楽になったみたいで良かった。
「ありがとうね。それと私みたいに後悔しないようにしっかり謝っときなさいよ」
「分かった。あなたはこれからどうするの?」
「そうね……これから人生をやり直すことにするわ。もう後悔をしないように頑張るわ」
そして、女性は立ち上がった。
「もう行くの?」
「ええ、行くわ」
「わかった。今日はありがとう。ばいばい」
「ばいばい」
女性は笑みを浮かべ立ち去った。ペンキをこぼしたのか女性の服が赤く染っていた。そして、私は駅へ向かった。
私は家の前に来ていた。玄関のあかりがついていたことに安心した。だけどお姉ちゃんはまだ怒ってるかもしれない。怖かった、ちゃんと仲直りできるかがわからなかった。だけどあの女性は言っていた。『後悔しないようにしなさいよ』と。私は後悔したくない。お姉ちゃんと仲良く一緒に暮らしたい。あの女性は自分と同じ後悔はして欲しくないと言っていた。だから私はお姉ちゃんに謝る。私はそう心に決めて玄関の扉を開けた。
「……た、ただいま」
「おかえり」
お姉ちゃんは笑顔で出迎えてくれた。私は安堵してお姉ちゃんに謝った。お姉ちゃんは笑って許してくれた。やっぱりお姉ちゃんは優しくて、私はお姉ちゃんの事が大好きなんだと思った。後日の事だがテレビでとあるニュースが報道された。少女を殺した犯人が自首したと。犯人は捕まった時『人生をやり直したい』と言っていたそうだ。
「……海だ」
窓の外には海が拡がっていた。夕日でギラギラと輝く海はとても綺麗だ。車内のアナウンスが聞こえた。終点らしい。私は電車から降りて駅を出た。鼻に漂う潮の香りと、波の音が耳に入った。私は砂浜まで歩いた。海に来たのは何年ぶりだっただろうか。昔お姉ちゃんと来たのが最後だった。とても懐かしくて。楽しかった記憶がある。砂浜を歩いてると1人の女性を見かけた。誰だろうか?一人砂浜で座っていた。私と同じ家出をしている人なのかなと思って話しかけることにした。
「ここで何してるの?」
「何してるか…特に何もしていないわよ……」
特にびっくりした様子もなく、悲しそうに海を眺めながらただ私の質問に淡々と答えた。初めて会う人に話しかけられたら少しはびっくりすると思ったが、この人はびっくりしなかった。なんでだろうか?
「そうなんだね」
「あなたは、どうしてここにいるの?」
女性は、こっちを振り向かず。海をずっと眺めながら、質問をしてきた。
「私は、家出をしたの」
「家出?どうして?」
「些細な喧嘩で家出したの。そういうあなたはどうしてここにいるの?」
「些細な喧嘩ねぇ。まぁ私もそんな感じよ。聞いてもつまらないけど、聞きたい?」
女性はそう聞いてきた。実際少し興味があったから聞きたかった。だから私は言った。
「聞いてみたい」
そう言うと、女性はわかったと言って喋り始めた。
「私がまだ小学生の時に親と喧嘩したの。授業参観に来てくれると言っていたのに。仕事で出張することになって来れなくなったって、お母さんは言ったの。私は言ってしまったの。私よりも仕事を優先するお母さんは嫌いって。どっかに行っちゃえって言ったの。それから口を聞かなくなったの。そして授業参観の日。お母さんは朝から出張に出かけた。私はいつものように学校へ行ったの。そして2時間目の授業が終わったぐらいに。先生から呼び出された。お母さんが事故にあったって。私は状況が上手く飲み込めなかったけど。先生と一緒に病院へ行ったの。だけど着いた時にはもう遅かった。最後に何か話したかった。謝りたかった。だけどもう話せないし、謝ることも出来ない。私は後悔したわ。親に最後に言った言葉がどこかに行っちゃえなんて。私は本当にバカだよ。そして私はとある組織に拾われて、そして自分の手を汚してしまった。私ってなんで生きているんだろう。私に生きる価値なんてあるのかな?」
目の前の女性は泣いていた。この人が送ってきた人生はとても辛かったのだと話を聞いてるだけでわかった。女性の手は赤く染っていた。手を汚してしまったとはどういうことか?ペンキで汚してしまったのか?
「ごめんね。こんな話ししてもつまらないよね。だけど少し楽になった」
きっとこの女性はずっとひとりで抱え込んでいたんだろう。私に辛かったことを吐き出せて。少しは楽になったみたいで良かった。
「ありがとうね。それと私みたいに後悔しないようにしっかり謝っときなさいよ」
「分かった。あなたはこれからどうするの?」
「そうね……これから人生をやり直すことにするわ。もう後悔をしないように頑張るわ」
そして、女性は立ち上がった。
「もう行くの?」
「ええ、行くわ」
「わかった。今日はありがとう。ばいばい」
「ばいばい」
女性は笑みを浮かべ立ち去った。ペンキをこぼしたのか女性の服が赤く染っていた。そして、私は駅へ向かった。
私は家の前に来ていた。玄関のあかりがついていたことに安心した。だけどお姉ちゃんはまだ怒ってるかもしれない。怖かった、ちゃんと仲直りできるかがわからなかった。だけどあの女性は言っていた。『後悔しないようにしなさいよ』と。私は後悔したくない。お姉ちゃんと仲良く一緒に暮らしたい。あの女性は自分と同じ後悔はして欲しくないと言っていた。だから私はお姉ちゃんに謝る。私はそう心に決めて玄関の扉を開けた。
「……た、ただいま」
「おかえり」
お姉ちゃんは笑顔で出迎えてくれた。私は安堵してお姉ちゃんに謝った。お姉ちゃんは笑って許してくれた。やっぱりお姉ちゃんは優しくて、私はお姉ちゃんの事が大好きなんだと思った。後日の事だがテレビでとあるニュースが報道された。少女を殺した犯人が自首したと。犯人は捕まった時『人生をやり直したい』と言っていたそうだ。
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