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17 はじまりの夜
しおりを挟む二階に上がるとすぐ、慣れた様子で立野は涼の部屋に滑り込む。
誰もいないのに扉をしっかり閉じてから、また深く唇を重ねられた。
「立野くん……いきなり? 俺まだ風呂入ってない……」
「だめです、もう待てない」
ベッドの上に仰向けに押し倒され、涼は全ての服を剥ぎ取られた。首筋から胸の尖りまでいくつもの口付けを落とす立野の勢いに高められていく。
この意外と強引な立野の手に、身体を開け渡していく過程が堪らない。
「……それ、着たまましてって言ったら嫌?」
涼は立野のベージュのジャケットの裾を摘まんで言った。
「全然良いですけど……こういうの、好きなんですか?」
「立野くんがそういうスーツ着てんの、新鮮だから……っあ、ん……っ」
立野の指が二本、涼の後孔に入り込む。すっかり慎ましくなったそこの硬さに立野は瞬いていた。
「涼さん……?」
「……やってないよ、最近。だから、初日以上にキツいと思う……」
立野は徐々に呼吸を荒げ、カーキ色の瞳が暗闇でぎらついた気がした。
「涼さっ……好きすぎて狂いそう……っ」
「あッ……!?」
後孔から指が引き抜かれ、次いで訪れた熱に涼は反射で両脚を寄せた。立野の舌が涼の蕾を蹂躙し、否応なく拓かれていく。
「あ――…っ、あ、んぁ、や、舐め……っ、ゃだ、イく、イくっ……!」
じゅるじゅると水音を惜しげもなく響かせながら、涼の後孔は立野のために潤わされていく。立野の髪に指を差し入れて掻き回しながら、涼は背を反らして喘いだ。
「あぁっ……!」
全身を震わせた涼の屹立から白濁が溢れる。立野は収縮する後孔に舌を突き入れつつ、涼の白濁を手で受け止めた。
舌を離して息を吐いた立野は口元を舐め取りながら、涼の疼く蕾に白濁を纏った指を押し入れる。
「っあ、んあっ、立野く、も、いいからっ、はぁっ、も、挿れて……!」
「まだ狭いから、怪我しちゃいますよ……」
立野は荒い息で涼を諫めるが、気が急いているのか指の動かし方はどこか性急だった。
「はやく、もういい、来て……っ」
指だけの刺激ではもどかしい快感を持て余し、涼は半泣きになって強請る。
「っ……涼さん……本当、大胆……」
根負けした立野はベージュのスラックスの前立てだけを寛げ、血管の浮き出る男根を涼の秘部に当てた。
「あ……っ」
期待に上擦った声が漏れる。腰を押し込んだ立野の熱が涼のナカを割り開き、思っていたより滑らかに奥へ到達した。
「あっ……あ、っあぁ……ッ」
涼は口で呼吸を繰り返しながら、立野を無事受け入れられたことに安堵する。結合部へ指を持っていき、立野を咥え込んで拡がった自分の後孔と、強く脈打つ立野の肉棒をなぞるように撫でた。
「ぁっ、は、よかった……、入って……っ、ちゃんと、覚えてる……」
「す……っ、涼さんっ、煽らないで……!」
全て抜け出るほど腰を引いた立野は、一気に腰を進めて涼の奥を埋めた。
涼が感じる最奥へ迷いなく欲望を叩きつけてはすぐに引き、涼の汗ばんだ白い肌と薄桃に色付いた胸の尖りを同時に愛撫する。
「うぁっ、あ、あぁ……ん!」
全身を立野に預け、立野の動きに合わせて揺さぶられるだけの涼の屹立は透明な蜜を降り零す。立野が涼の奥で抉るように腰を突き上げると、涼の先端から決壊するように潮が流れ出た。
「あッ――――、あ、あっ、あ、それ好き、あっぁ、あっ! あ――――ッ!」
目を見開いて身体を捩りながら涼は悶える。零している間は息もできず、強い震えから解放された瞬間に激しい呼吸を繰り返した。
「ふふ……涼さん、気持ちよさそう。ちゃんとタオルあるから、気にせず出して大丈夫ですよ……」
涼は再三訪れる絶頂の予感を恐れて立野に縋り付く。震える脚を立野の腰に回しながら、何度も首を横に振って訴えた。
「はぁっ、はぁっ、まっ、て、また、んぁ……ッ! ァ、止まらなっ……ッ!」
「ッ……涼さんっ……今もイってる? きゅうきゅう吸い付いてくる……かわいい……好き……」
余裕のなくなった立野のピストンが速まり、収縮し続ける涼の奥を何度も責める。
首を仰け反らせた涼は、耐え切れないほどの鋭利な快楽に泣きながら喘いだ。
「あッ、ゃば、ぁ、またイくっ……また、出ちゃ、っあ、あ、あ、ぁ――……ッ!」
「はっ、イく……っ、涼さっ、中、出していい……?」
涼は先端から涙のように潮を流しながら何度も頷いた。その直後、立野が強く脈打ち涼に欲を注ぎ込む。
「はぁ……、ぁ、ぁあ……ん」
ナカがじわりと温かいもので満たされていく感触に、涼は甘い声を漏らした。
「……僕、涼さんの我慢してない時の声好きです……」
「そりゃどうも……」
立野が上気した顔で微笑み、急に羞恥を覚えた涼は目を逸らす。
「はあ……あつい……涼さん、脱いで良いですか……?」
「あ、うん……」
立野は手で顔を扇ぎながらようやくジャケットとシャツを脱ぐ。久しぶりに見る美しい肢体に目を吸い寄せられていると、立野が照れたように笑った。
「涼さん、今きゅって締まった」
再び下腹に力が入ってしまったのを取り繕うように、涼は話題を探す。
「そ……それよりごめん、かなりスーツ汚したかも……」
「ああ、全然大丈夫ですよ? むしろ今日の記念にこのままでも――いたたた」
「すぐに洗え……」
立野の頬を摘まんで被せて言った。
「は~い」
どこかで聞いたような生返事にため息を吐きながら、涼は腰を引いて立野の性器を自分で引き抜く。
流れ出てくる白濁と、自分が身体の上に巻き散らした透明な水たまりを立野がいつの間にか用意していたタオルで拭いた。――抜け目のなさにちょっとだけ腹が立つ。
「……そういや立野くん、体調は?」
スラックスを脱ぎ落としていた立野は顔を輝かせて涼に振り向いた。
「おかげさまで、大分良くなりました。演奏の機会も減って落ち着いて、専門医の先生も紹介してもらえて……!」
そこで何かを思い出したのか表情を固めた立野に、涼は片眉を上げる。
「……良かったじゃん。どうした?」
「えっと……今後通うには、ちょっとお金を貯めなきゃいけなくて……今、本当に一文なしで……」
たはは、と立野は頭を掻く。頬杖を突いて聞いていた涼は、細長いため息の後に思わず笑みを零した。
「……じゃあ、年明けから働くしかないな」
「はいっ。よろしくお願いします!」
「はいはい、こちらこそよろしく」
全裸でベッドの上に正座し、最初の日のように平伏する立野に笑みが更に込み上げる。
立野の肩の前に流れた流星色の髪を梳きながら、涼は立野を見上げた。
視線が合うと立野が顔を寄せてくる。涼は目を閉じてそれを受け入れ、ふたりの唇は自然と重なった。
「大好きです、涼さん」
キスの合間の囁きに、涼も応える。
「……俺も好き」
立野がカーキ色の目を丸くして口付けを深めてくる。立野の激しい感情が流れ込んでくるようなキスを、涼は溺れそうになりながら受け止めた。会えなかった時間を埋めるように、はじまりの予感を噛みしめるように、時間をかけて。
つかの間のふたりきりの夜は、静かに更けていく。
了
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