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7 秘密の夜(2)
しおりを挟む立野が来てから一番変わったことといえば夜だ。
昼間の立野は何事もなかったような顔をするくせに、夜は涼を求めて部屋に来る。
もう何回、身体を重ねたかは忘れた。
「あ、ん……っ」
ベッドの上で膝立ちをした涼の脚の間、というより股の下に顔を寄せた立野は、涼の秘奥を舐っている。
震える蕾の周りを立野の指が引き伸ばし、薄く開いた後孔に熱い舌先が入る。それだけで涼の内腿は細かく震えた。
立野は涼の出した条件である「あまり最後まではしない」というルールを緩く守っていた。甘えて涼に懇願してくる時もあるが、作業が立て込んで涼の退勤が遅くなった日は部屋を訪れないなど、距離の取り方は上手い。
涼が今まで関係を持った男達のどれにも傾向が当て嵌まらない男で、しかし行為に及ぶ時は柔和な顔のくせに容赦がなかった。
(変な男……)
快楽に浮かされながら、涼は荒い息を繰り返す。
「ほら、涼さん……声」
熱い舌が抜け出て、後孔に囁きと吐息が当たる。それだけで腰を震わせてしまう涼は慌てて手の甲を押し付け、立野が渡したタオルを受け取って噛み締めた。
「んむっ……ん、んんっ……!」
再び舌が侵入すると、背骨を伝って旋毛まで電流のような刺激が突き抜ける。
顎を天に向けてタオルの中で叫ぶが、それでも達するには足りなくて腿や腰にもどかしい震えが残った。
見かねた立野が、先走りを零している涼の先端に手を伸ばして責め立てる。
「ン、んっ、んんぅ……んっ!」
涼は全身をしならせ、なす術もなく立野の脚の上に倒れ込んだ。びくびくと腰を戦慄かせながら立野の手の中へ白濁を零していく。
舌を離した立野は長い指で唇を拭い、目の前の男が自分に秘部を向けながら四つん這いで善がる様を食い入るように見つめた。
「……気持ちよかったですか?」
立野の声音に余裕が滲んでいて急に面白くなくなった涼は、顔の横でそそり立っている立野の性器を掴んで口に含んだ。
「ちょっ……」
慌てた立野が抑えた声で諫めるも、涼はその大きな怒張を喉奥まで咥え込む。手で握った時より口の中にいる方が大きく感じ、咥えたそばから口がはち切れそうになった。
口と喉を締めて啜ると口の中に苦い味が広がる。気を良くした涼は舌と唇を駆使して丹念に男根を貪り、頭を何度も動かして根元と先端を往復した。
「ぅっ……、は、ぁ……っ」
立野から浅い呼吸と感じ入った声が漏れる。涼の溜飲は下がったが、口内の熱はさらに重みを増した。
「涼さん、上手すぎ……っ、もう、妬けちゃうな……」
困ったように笑う声と軽いキスが涼の後孔に触れる。顎が限界に近付いている涼はもう一度喉奥まで立野を迎え、強請るように啜った。
「んんっ……!」
押し殺した立野の唸りと同時に、爆発したかのような衝撃と熱が口内と喉を襲う。
涼の目の前には星が散り、前を濡らさないオーガズムが涼の全身を包んだ。口内に流れ込んだ青臭い欲望を夢中で飲み下し、全身を巡る快感に酔いしれる。
白濁に塗れた立野の性器を舐め回してから音を立てて離すと、立野の窘めるような声が耳に届いた。
「……涼さんったら」
涼は脱力してベッドに寝転がりながら、立野を振り返る。立野は上半身を起こし、汗で額に貼りついた涼の髪を梳きながら尋ねた。
「フェラしながらイってませんでしたか?」
「……ねーよ……」
「うそ。お尻の穴がくぱくぱしてましたよ」
分が悪いとはまさにこのことで、涼は少し考えたのちに強引に立野の腕を引いた。
「ほら……キスしようぜ。見て、口の中。立野くんのまだ残ってる」
「うわあ……ぺっ、しましょ?」
「やだよ」
複雑な顔をした立野の首を引き寄せ、涼は唇を重ねる。
自分で勝手に決めたルールながら、際どいところまで愛撫されると最後までしてほしいと懇願しそうになる。しかし久しぶりに挿れられたら、今度は感じ過ぎてしまいそうで迂闊なことは言えない気がした。
こんな夜を何度過ごしても、翌朝になれば立野は先に起きて支度を済ませ、爽やかな顔で仕事に取り掛かるのだ。
(今更だけどあんま健全じゃねえよな……)
一回きりなら感情抜きで発散として片付けられるが、何度も肌を重ねるのは何か意味が生まれる気がした。
あの美貌に何度も求められるのだから、なおさらだ。
(……いや、流石に、自意識過剰だろ)
欲求不満は良くないと言われて始まった関係だ。始める前に立野は色々と言っていたが、あれらをうっかり真に受けて実際のところはセフレとしか認識されていなかった――なんてことになったら流石に立ち直れない。
(気のせい、気のせい……)
涼はそう自分に言い聞かせた。
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