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美咲ルート
ブラコン姉妹は、天使だろうか? 美咲√(12)
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今より小さい時の事だ。私、神楽坂美咲がまだ椎名崎幸一という存在に心を開いていない時期があった。美羽は性格上、すぐに義兄となった彼と仲良くなったけれど……私は兄が高校二年に上がる直前まで心を開いていなかった。
「……なぁ美羽、俺って美咲に嫌われてるのか?」
「んー、どうだろ。美咲はああ見えて誰とも話せる部分もあるから、完璧に嫌われていないと思うよ?あぁでも、心を開いてない時は壁を作る癖があるからそれかも」
「まぁ人見知りなら急がせはしないけどさ。……あれは無いだろ」
彼がそう言いながら後方へと指を差す。私から見えるか見えないかギリギリの位置で、親指で後方へと美羽に見るように促す。その様子を少し離れた場所から眺め、電柱から顔をひょこっと出す少女が居た。
そう。それが私、神楽坂美咲が取っていた行動なのである。
――今思い出せば、恥ずかしくて穴に入りたい気分だ。
「……美咲ぃ、そろそろ時間じゃないの?って、聞いてないし……まぁ良っか。あれだけ気合が入ってれば、嫌でも兄者に気持ちが伝わるだろうし」
部屋から出て、脱衣所にある鏡を睨んで自分の髪や身なりを整える。軽くお化粧をした風にする為、リップも微かに塗っている私が映っている。我ながら、かなり冒険したなぁという事を思ってしまう程だ。派手という訳でも無いが、オシャレをした事が無い私にとってはこれだけで十分冒険と言えるのだ。
だって仕方が無いだろう。だって今日は……。
「お、やっと来たか」
「お待たせしました!お兄様」
念願だった。お兄様とのデートなのだから――。
――家の扉から、弾けたように飛び出して来た女の子。自分の妹であるのだが、ここまで張り切って出て来るとは思いもしなかった。思わずドキリとしてしまったが、俺は平常心を保ちながら美咲へと視線を落とした。
フリルの付いたワンピース。
綺麗に結われている黒く長い髪。
そして極め付けは、艶のある唇。
妹と忘れてしまうぐらい、今の美咲は可愛らしい姿で目の前に現れた。というか、エンカウントしてしまった。平常心を保つ事に精一杯で、何を話すべきなのか全て飛んでしまったぐらいだ。しかし俺の動揺を知らない美咲は、笑みを浮かべながら俺の手を取って言った。
「さぁお兄様、今日は宜しくお願いしますね♪」
「あ、あぁ」
珍しくお洒落をしている我が妹の姿。正直に言えば、俺は動悸が伝わらないか心配なぐらい、握られた手に汗が滲んでいる。テンパッてるんだろうな、俺。でもそれぐらい、今の美咲が可愛く見えるのかもしれない。
「美咲、良く似合ってるぞ。その服」
「っ……あ、ありがとうございます。お兄様」
髪の毛の毛先を指先でぐるぐるしながら、照れた様子でそう返した美咲。その赤く染まった表情を見た瞬間、俺の中で弾けた物があった。いや、もしかすればずっと前から目を背けていたのかもしれないと思った。
この時、俺は神楽坂美咲が好きだと自覚したのだ。妹ではなく、一人の女の子として好きだと――。
「……なぁ美羽、俺って美咲に嫌われてるのか?」
「んー、どうだろ。美咲はああ見えて誰とも話せる部分もあるから、完璧に嫌われていないと思うよ?あぁでも、心を開いてない時は壁を作る癖があるからそれかも」
「まぁ人見知りなら急がせはしないけどさ。……あれは無いだろ」
彼がそう言いながら後方へと指を差す。私から見えるか見えないかギリギリの位置で、親指で後方へと美羽に見るように促す。その様子を少し離れた場所から眺め、電柱から顔をひょこっと出す少女が居た。
そう。それが私、神楽坂美咲が取っていた行動なのである。
――今思い出せば、恥ずかしくて穴に入りたい気分だ。
「……美咲ぃ、そろそろ時間じゃないの?って、聞いてないし……まぁ良っか。あれだけ気合が入ってれば、嫌でも兄者に気持ちが伝わるだろうし」
部屋から出て、脱衣所にある鏡を睨んで自分の髪や身なりを整える。軽くお化粧をした風にする為、リップも微かに塗っている私が映っている。我ながら、かなり冒険したなぁという事を思ってしまう程だ。派手という訳でも無いが、オシャレをした事が無い私にとってはこれだけで十分冒険と言えるのだ。
だって仕方が無いだろう。だって今日は……。
「お、やっと来たか」
「お待たせしました!お兄様」
念願だった。お兄様とのデートなのだから――。
――家の扉から、弾けたように飛び出して来た女の子。自分の妹であるのだが、ここまで張り切って出て来るとは思いもしなかった。思わずドキリとしてしまったが、俺は平常心を保ちながら美咲へと視線を落とした。
フリルの付いたワンピース。
綺麗に結われている黒く長い髪。
そして極め付けは、艶のある唇。
妹と忘れてしまうぐらい、今の美咲は可愛らしい姿で目の前に現れた。というか、エンカウントしてしまった。平常心を保つ事に精一杯で、何を話すべきなのか全て飛んでしまったぐらいだ。しかし俺の動揺を知らない美咲は、笑みを浮かべながら俺の手を取って言った。
「さぁお兄様、今日は宜しくお願いしますね♪」
「あ、あぁ」
珍しくお洒落をしている我が妹の姿。正直に言えば、俺は動悸が伝わらないか心配なぐらい、握られた手に汗が滲んでいる。テンパッてるんだろうな、俺。でもそれぐらい、今の美咲が可愛く見えるのかもしれない。
「美咲、良く似合ってるぞ。その服」
「っ……あ、ありがとうございます。お兄様」
髪の毛の毛先を指先でぐるぐるしながら、照れた様子でそう返した美咲。その赤く染まった表情を見た瞬間、俺の中で弾けた物があった。いや、もしかすればずっと前から目を背けていたのかもしれないと思った。
この時、俺は神楽坂美咲が好きだと自覚したのだ。妹ではなく、一人の女の子として好きだと――。
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