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美羽ルート
ブラコン姉妹は、天使だろうか? 美羽√(19)
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「……心配無い。何でも無いから、気にしないでくれ」
「いやいやいや、目の前で滅多に泣かない人が泣いてたら流石に気にしますってば。先輩はあれですか?ボクに人でなしになれって言うんですか!?それは無理な相談ですよ?先輩。ボク、結構しつこいですから」
「確かに、お前はストーカーよりもしつこいかもな」
「いや、そこまではしつこくないです。っていうか、止めてください。そんな犯罪紛いな事を平気でして来たように言うのは。何も知らない人が聞いたら、勘違いしちゃうでしょう?」
ふざけた話題を投げつつ、幸一は自分が触れたくない話題から逸らすようにして言葉を続けた。だがしかし、小鳥遊幽は分かっているのだ。幸一が触れて欲しく無いと言っているのが、彼の声のトーンや表情から全てを読み取っていたのである。それに気付かない。いや、気付かせないようにして彼女は幸一の会話に乗っていた。
これ以上、幸一の心を傷付けないように、細心の注意を払いながら。
「ところで先輩、もうすぐ休み時間が終わりますよ?そろそろ帰らなくて良いんですか?」
「そうだな。雨も降りそうだしな。傘を持ってないし、今日のところは急いで帰るよ。邪魔したな」
「いえいえ。先輩が来たくなったら、またいらして下さい。いつでも待ってますよ!」
「あぁ。それじゃあな」
「ええ。またです、先輩」
幸一と別れの挨拶を交わした小鳥遊は、溜息混じりに自分の胸を押さえた。それは自分が抱いている感情を抑える為、これ以上彼に負担を掛けたくないという願いからの行動なのだろう。彼を好きという感情を広げたが、何も返ってくる事は無かった。それが答えであり、今はまだその時ではないという証拠だ。
抑えなくてはならない。控えなくてはならない。そんな事を思いながら、彼女は一人で声を押し殺すのだった。
灰色の空の下。何も感じない虚無感を背負ったまま、幸一は鼠色の雲を見つめて帰路を進んでいた。今にも押し潰されそうに見える幸一を背中を眺めていた彼女は、か細い声で幸一の制服を掴んで呼び止めるのだった。
「あ、兄者?」
「……っ、美羽」
心配そうな表情で彼を見上げる美羽だったが、幸一はそんな彼女の顔から視線を逸らす。昨夜の事もあり、静寂という気不味い空気がチクチクと胸に刺さるのを感じる。何を話したら良いか分からないという戸惑いの中、美羽は幸一にある提案をするのであった。
「ねぇ、兄者。今から少し、一緒に何処かに行かない?」
「美羽?」
「えへへ。放課後デート、やっぱり……ダメかな?」
幸一が振り返ると同時に気付いた。美羽の肩が、小刻みに震えている事に。いつも元気な美羽の事を知っているから、幸一はそんな彼女の様子を見ては居られなかった。そして我慢出来ず、幸一は美羽の手を取るのであった。
「あぁ、良いよ」
「っ!!」
「いやいやいや、目の前で滅多に泣かない人が泣いてたら流石に気にしますってば。先輩はあれですか?ボクに人でなしになれって言うんですか!?それは無理な相談ですよ?先輩。ボク、結構しつこいですから」
「確かに、お前はストーカーよりもしつこいかもな」
「いや、そこまではしつこくないです。っていうか、止めてください。そんな犯罪紛いな事を平気でして来たように言うのは。何も知らない人が聞いたら、勘違いしちゃうでしょう?」
ふざけた話題を投げつつ、幸一は自分が触れたくない話題から逸らすようにして言葉を続けた。だがしかし、小鳥遊幽は分かっているのだ。幸一が触れて欲しく無いと言っているのが、彼の声のトーンや表情から全てを読み取っていたのである。それに気付かない。いや、気付かせないようにして彼女は幸一の会話に乗っていた。
これ以上、幸一の心を傷付けないように、細心の注意を払いながら。
「ところで先輩、もうすぐ休み時間が終わりますよ?そろそろ帰らなくて良いんですか?」
「そうだな。雨も降りそうだしな。傘を持ってないし、今日のところは急いで帰るよ。邪魔したな」
「いえいえ。先輩が来たくなったら、またいらして下さい。いつでも待ってますよ!」
「あぁ。それじゃあな」
「ええ。またです、先輩」
幸一と別れの挨拶を交わした小鳥遊は、溜息混じりに自分の胸を押さえた。それは自分が抱いている感情を抑える為、これ以上彼に負担を掛けたくないという願いからの行動なのだろう。彼を好きという感情を広げたが、何も返ってくる事は無かった。それが答えであり、今はまだその時ではないという証拠だ。
抑えなくてはならない。控えなくてはならない。そんな事を思いながら、彼女は一人で声を押し殺すのだった。
灰色の空の下。何も感じない虚無感を背負ったまま、幸一は鼠色の雲を見つめて帰路を進んでいた。今にも押し潰されそうに見える幸一を背中を眺めていた彼女は、か細い声で幸一の制服を掴んで呼び止めるのだった。
「あ、兄者?」
「……っ、美羽」
心配そうな表情で彼を見上げる美羽だったが、幸一はそんな彼女の顔から視線を逸らす。昨夜の事もあり、静寂という気不味い空気がチクチクと胸に刺さるのを感じる。何を話したら良いか分からないという戸惑いの中、美羽は幸一にある提案をするのであった。
「ねぇ、兄者。今から少し、一緒に何処かに行かない?」
「美羽?」
「えへへ。放課後デート、やっぱり……ダメかな?」
幸一が振り返ると同時に気付いた。美羽の肩が、小刻みに震えている事に。いつも元気な美羽の事を知っているから、幸一はそんな彼女の様子を見ては居られなかった。そして我慢出来ず、幸一は美羽の手を取るのであった。
「あぁ、良いよ」
「っ!!」
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