【R18】前世でフッた男が今世の婚約者(ヤンデレ王子)だった公爵令嬢の結末。

べらる

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 彼から、離れないと!

 なぜか分からないけれど、シルヴィアはそう思った。
 もつれそうになる足を懸命に動かして、シルヴィアは中庭に飛び出した。外は思いのほか暗くなっていたけれど、満月の光が照らしている。

(大丈夫。あともうちょっと走れば、公爵家の馬車が……!)

 飛び乗って、公爵邸に帰ろう。
 そして父に、エリス殿下に魔法をかけられていることを言うのだ。父なら、きっと知恵を貸してくれる。魔法の解き方を考えるなり、父と一緒にエリス殿下に直訴するなり、方法はある。
 とにかく、あのままあそこにいるのは、かなりまずい。

「──あぁ、また無視するんだね」

 耳もとで、エリス殿下の声がして。

 シルヴィアが気付く頃には、腰をがっちり捕まれて顎に手をかけられていた。

「ど、どうやってここまで?」
「飛んできた」
「飛んで……っ?」
「瞬間移動だ。転移魔法って知ってるかな」

 転移魔法なんて、おとぎ話みたいな存在だ。使用する魔力量が膨大だし、なにより魔法を編む演算式が難しすぎる。

(でも……私を監視する魔法をかけてきたエリス殿下なら……)

 それが、できるかもしれない。

「きゅ、急に飛び出したのは謝ります。で、ですが、それをいうならエリスもお戯れはおやめください」
「本気で君の身を心配しているのに?」
「あの! はっきりいって困ります!!」

 エリス殿下が、瞳をすぅ……っと細めた。
 シルヴィアはエリス殿下に乱暴に腕を掴まれ、近くにあった東屋に押し込まれた。壁に押し当てらると同時に、両腕をバンザイさせられる。乱暴にブラウスを外され、零れ落ちてきた胸を鷲掴みにされた。

「シルヴィアさ、毎日のように誰かに犯される夢を見てるんじゃないのかな?」
「ど……して、それを……っ?」
「その夢を見せてるのが僕だからだよ」
「え」

 わけがわからなくて、シルヴィアは無意識に頭を振っていた。

「君を初めて見た瞬間、ああ、やっと僕のアリスに出会えたって思えたよ。でも前世の記憶がなかった。僕はあんなにアリスを愛していたのに、悲しかったよ。僕をフッたことすら覚えていないなんてね」
「私が……貴方を……?」
「そうだよ。前世の君はアリスという女の子で、魔導師だった僕をフッたんだ。私には愛する人がいますって」

 ならそれは、貴方の横恋慕では……?
 そう思ったが、とても口に出せなかった。

「仕方ないから、僕はアリスの来世──つまり今のシルヴィアを生涯愛し尽くそうと決めたんだ。アリスが望んだ、来世では王子様と結婚したいという願いを叶えるために、エリスヴァルドという王子に転生したんだよ。アリスと同じ魂を持つ君を探し出し、婚約者に迎えた。君が十八になるまで手を出さないように我慢もした。初恋も……許したんだよ? 寛大だよね、僕」

 エリス殿下は、嬉しそうに笑っている。
 だがシルヴィアには、狂気に満ちているように見えた。
 逃げたいのに逃げられない。
 エリス殿下に、強く手首を掴まれているからだ。

「僕が君をどれだけ愛しているかを思い出してもらうために、夢を見せた。まあ、今日という日を迎えるために、君の体を慣れさせるという意味でもあったのだけどね」

 ──シルヴィアは悟った。
 これから、あの悪夢のように、目の前にいるエリス殿下に犯されるのだと。
 


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