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IFストーリー
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しおりを挟む失敗した、と思った。
こんな寒い時期に、冬用のコートも着ずに、外に出るんじゃなかった。寒くて、手を擦り合わせる。寒い……寒いなぁ……。
だからって、今さら家に戻れない。
「どうしよ……とっさに家から飛び出しちゃった……」
シャワー室での一件のあと、わたしは身支度をちゃんと整えられた状態でベットに寝転がっていた。ぼーっとする頭で居間に行くと、テーブルの上に置手紙があった。
──食材がないから買い物に出かけてくる。陽が沈むまでには帰って来るから。
流麗な筆跡で書かれたソレを、見て。
わたしはとっさに、財布と薬だけ持って家を飛び出してしまった。
どうして、なんて自分でもよく分からない。もう少しでアゼル様が帰って来るって思ったら、心臓が急にバクバクし始めて、色んな感情がドッと押し寄せてきたのだ。
公園のベンチに一人で、座っている。
──さっきのアゼル様は、どうしてあんな……。
──もしかして……わたしのせい……。
答えの出ない問いがグルグル頭を回っている。
気分が滅入っちゃう。
やっぱり帰ろうかな。
家にわたしがいないって知ったら、アゼル様はものすごく心配するだろう。仕事も何もかも手がつけられなくて、わたしを探し出そうと……ううん、さすがに考え過ぎかな。そこまではいかなくても……きっと、アゼル様なら心配して……。
「────ようやく見つけた」
声が聞こえて、ビクンッと体が反応してしまう。
「探しましたよ」
一日に二回も会えるなんて、本当に珍しい。いつもなら嬉しいと思うはずなのに、今はちょっと複雑な気持ちになってしまう。できれば顔を合わせたくないと思っていた男性。
「ランブルト様……」
「そんな薄手で外に出たらダメですよ。大切な体なのですから」
着ていた外套を脱いで、ランブルト様がわたしにかけてくれる。とてもあったかい。そしてすごくブカブカ……。彼と目を合わせられなくて、外套を手でさすって気を紛らわす。
「あの……どうしてここに? 探しましたって、いったい……」
「それはですね、使用人に貴女の家を見張らせていたからですよ。家から出てくるタイミングで声をかける算段だったのですが……見失ってしまいましてね」
大事なものを失くした子どもみたいに、しゅんっとするランブルト様。
「家から出るかどうかも分からないのに、どうして……」
「ユフィさんの考えていることは、何でも分かりますよ」
「え……」
なんでも……。
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