【R18】ハーフヴァンパイアは虚弱義妹を逃がさない ~虚弱体質の元貴族令嬢は義兄の執着愛に囚われる~

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第4章 ハーフヴァンパイア

37 吸血衝動《愛してる》を押し殺して・前編*

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「や、……っ!」

 寝間着のズボンを半分ずらされたところで、アゼル様の動きが止まった。静かに、子どもを諭すような声で、話しかけてくる。

「認めたくないけど、ヨルの言う通りだよ。薬で抑えれば抑えるほど、君の体は強く発情している。解決するには、これが一番簡単で早い」
「だからって、アゼル様がやらなくても……っ」
「繊細な作業だから、他の奴には任せられない。お願いだから、分かって」
「やだ……や……っ」

 膝の上に座った子どもに言い聞かせるように、腰と肩に腕を回されて、逃げられないように抑え込まれる。それでも抵抗を示すわたしに、アゼル様はぎゅうぅと抱きしめてきた。

 首筋にアゼル様の吐息がかかって、体がピクンっと反応した。わたしの動きが止まると、アゼル様の手が寝間着のズボンを剥がしにかかる。とても丁寧で、びっくりするくらいに優しい動きだった。
 
「大人しくしてて、すぐに終わらせるから」
「やっ、ぁぁ……や……あぁっ」
「大丈夫だから」
 
 後ろからやわやわと胸を揉まれて、体がビクンビクンと跳ねる。うすぺっらい一枚の布きれは、さきほど己を慰めていたせいで、とろりとした粘性の液体にまみれている。

 恥部に張り付いた布の隙間に、細くて長い指が侵入してきたのが分かった。

 花溝を確認するようになぞりあげて、ゆっくり慎重にナカに沈ませてくる。たっぷりと蜜を湛えた蜜壺は嬉しそうにアゼル様の指を奥へと誘い込み、きゅうきゅうとしがみついた。

 痛みや異物感なんて全くなくて、すぐに根本まで咥え込んだ。ナカでわずかに曲げられただけで、甘えた子犬のような声が洩れる。

「大丈夫だよ。大丈夫だから」

 さきほどからアゼル様が繰り返し囁いている「大丈夫」という言葉は、わたしを怖がらせないためだろうか。最後に肌を重ねたのが、力を暴走させた時だから、それを気にしているのかもしれない。

 一度目の夜のような荒々しさもなく、二度目の夜に感じた性急さもなく、三度目の夜のような激しい怒りの感情もない。

 優しい触り方だった。

「や……っ、あぁっ、……は、なれて……っ」
「一回はイっておかないと、挿れたときが痛いよ」
「い、い……そんなこと、しなくて……いいで、すから……っ!」
「すぐに終わらせるから、もう少しだけ耐えて」
「そうじゃ、な……っ──や、ぁあっ!」

 ボソボソと囁かれながら、イイトコロをこすり上げられる。くちゅくちゅと淫らな音が鳴り響いて、高まっていく官能にぶるりと身が震える。

 ソレを否定するように、首だけは横に振り続けた。

 違う。
 アゼル様を欲しがっちゃいけない。

 アゼル様は……アゼル様は……っ!

「大人しくなってくれたね」
「ぁ、あっ、ああ……っ」
「イイ子。そのまま何も考えなくていいから、気持ちイイことだけ集中して」

 ……自分でシた、ときと……。
 ……ぜんぜん、違う……っ。

「ぁ、ぁあっ、……あっ!」
「その方が、俺も……──気が紛れるから」
「あっ、ぁ、んっ、ぁ……っ!」

 高みに押し上げていくような指の動きに、頭が真っ白になっていく。足先まで力が入って、背中が反りあがる。わたしを抱きしめるアゼル様の腕に爪を立てるようにして、迫りくるソレに耐えた。

 この圧倒的“気持ちいい”から逃げないといけないのに。
 
「────イって」
「やっ、あぁ、っっ……!」

 袖口をくわえていても、声が漏れてしまう。指が引き抜かれて、ナカが切なげに収縮した。何もないナカをきゅうきゅうと締め付けて、疼きが強くなる。

「や、だぁ……っ」
「ちゃんとイけたね。偉いよ」
「え、らくなんて、ない……っ! や、だ……アゼル、様、離してください……っ」

 アゼル様は。
 アゼル様だけは、欲しがっちゃいけないのに。

「離して、ください……っ」
「お願いだから、わがまま言わないで」

 どうして?
 どうしてそこまでするの?
 どうしてそこまでしてくれるの?

 あの時も、分からなかった。
 あれは三度目の夜だ。まだわたしの意識がはっきりしている時に、アゼル様のツラそうな声を聞いた。
 すがるような。
 耐えるような。
 切ない声を聞いた。

 アレは……いったい何だったのだろう。

 アゼル様だって理性を失っていたから、あまりとやかく言うものじゃないかもしれない。

 アゼル様が優しければ優しいほど、申し訳なくなる。
、アゼル様にそこまでさせている自分が、イヤになる。

 心が、グリグリと抉られていく。

「どうして、そういうこと、出来るんですか……」

 ぽろりと漏れた本音。

「わたし、は……ヨル君に、してほしかったのに……」

 ヨル君なら、何も考えずに済む。
 それこそ快感だけに集中して、スッキリ終わるだろう。後腐れも何もない。ヨル君はそういう性格だ、気が楽でいい。

「それか……いっそのこと、ランブルト様でも……」
「それはダメだよ」
「だから……どうしてなんですかっ。どうしてそんなに、ランブルト様を目の敵にしてるんですか!」
「ユフィ、落ち着いて。暴れないで」
「わたしはランブルト様を好きになったんです!」

 一度口に出してしまったら、もう止められなかった。感情がせきを切ったように溢れてくる。

「ランブルト様に、手紙……取り下げられちゃいました。失望させちゃいました。誠意を見せなかったから、とっても怒ってるんです」

 失望した、とは言われていない。
 でもきっと、ランブルト様は不快に思ったはず。だから謝り続けろ、と言ってきたのだ。わたしはそれを粛々と実行している。日々、心の中で謝り続けている。

 閨の最中ではなく、直接ランブルト様に謝りたかったけれど、こんな体じゃ会いに行けない。

「最低、ですよね……だってわたし、ランブルト様一人だけを見られなかったんです。真正面から向き合えなかったんです」

 わたし……アゼル様に何を言おうとしてるんだろう。
 こんなの……。

「あともうちょっとだったんです。あともうちょっとで忘れられたんです。でも……アゼル様が、……ずっと、ずっとずっとずっと、頭の片隅から離れなくて……っ」

 

「ランブルト様だけを見たかったのに……っ!」

 こんなこと、言いたくなかったのに。

 アゼル様は関係ない。
 これは、わたしとランブルト様の問題だ。

 わたしはずっと優柔不断だった。
 ランブルト様から向けられる愛情を素直に受け止められず、ずるずると毎日を過ごしていた。

 だから、ケジメをつける目的でランブルト様に伝えようと思っていた。



 あなたと向き合うために、アゼル様への未練を断ち切る時間をください。



 真正面からランブルト様の気持ちを受け止めるには、心に占めるアゼル様の比重が大きすぎた。

 夢遊魔のことも、アゼル様の帰化問題もそう。それが不安要素として頭の片隅にある限り、ランブルト様とどれだけ楽しい時を過ごしていても、気持ちに応えられない。

 わたしの気持ちケジメを伝えたとして、ランブルト様に、もうそんなに待てないと言われるなら、それは仕方のないこと。

 当日は、どんな辛辣な言葉だって受け止めるつもりだった。

 罵られても仕方のないことをしたのだから、かなり覚悟した。

 でも、それを伝える前にランブルト様にフラれた。
 自業自得だ。
 ランブルト様を振り回したのはわたしだから、怒らせても文句は言えない。

「アゼル様は……」

 だめだ。
 
 感情が溢れてくる。
 とまって。
 とまってよ、おしゃべりな口。

「わたしのこと、どう思ってるんですか?」

 こんな事聞いても、意味ないのに。
 アゼル様に気を遣わせるだけなのに。


 ──


「………………」

 無言なのがツラくて、隙をついてアゼル様から離れた。身支度を整えてアゼル様の横を通り過ぎようとすると、腕を掴まれる。振り解こうと思ってもビクともしない。

「どこ行くの?」

 どうして離してくれないの?
 どうして行かせてくれないの?

 どうして?
 どうして???

「離してください……」
「嫌だ」
「離して……っ!」
「離さない」
「わたしはもう、一人になりたい……っ!」
「俺は君を、絶対に逃がしたりなんてしない」

 どうしてそんな事言うの。
 どうして、どうして、どうして!
 
「わたしのこと、守ってあげなくちゃいけないちっぽけな存在としか────ただの義妹いもうととしか思ってないくせに!!」

 場が、シィンと静まり返った。
 言ってしまった。
 そんな言い方……あんまりだ。
 自分の失態を全部アゼル様にぶつけているだけ。

 ──やっぱりわたしは、ランブルト様にも、アゼル様にも、どちらの隣にも相応しい人間じゃない。

 自分の感情すら満足に抑えられず、他人を傷つける。

 最低で……本当に、醜い子。
 いらない子。
 消えたい。
 このまま消えて、いなくなりたい。



 ──その瞬間。
 ぐっと掴まれている腕を引っ張られ、バランスを崩したわたしはベットに倒れ込んだ。

 勢いが強くて跳ねる体の上に、アゼル様が覆いかぶさってくる。さっき逃げようとした罰だろうか。腕を押さえつけられ、閉じようとした足の間に膝を入れられた。

「物置部屋に閉じ込められていた君を助け出した時から、君の事をただの義妹いもうとだと思ったことは

 荒くなっていく言葉に比例するかのように。
 わたしの腕を掴むアゼル様の力が、より強くなっていく。

 動けない。
 いいや、逃げられない。

 苦しんでいるような表情で。
 聞いているだけで、胸が張り裂けるような切実な声で。

「こんな体に生まれなければ…………俺は、とっくの昔に……ッ」
 
 アゼル様の瞳が、鮮血のような紅色に変わっていることに気付いたのは、その後のことで。



 何を……言われるの…………?


 
 純粋な疑問だけが、わたしの心を占めていた。



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