【R18】ハーフヴァンパイアは虚弱義妹を逃がさない ~虚弱体質の元貴族令嬢は義兄の執着愛に囚われる~

べらる

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第2章 黒王子と白王子

11 初デート(2)*

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 長い睫毛に縁どられた若葉色の瞳が、真剣にわたしを見つめている。

「愛しています。四年前に助けてもらった時から、ずっとユフィさんだけを想って生きてきました」
「え、と……」
「ユフィさんは、自分の体調面に不安があるから結婚も交際も出来ないと返事を書いてくださいましたよね。でも、俺が配慮すればいいだけのことです」
「その話は……えと……」
「ユフィさんはただ、俺の隣にいてくれればいい。だって、ユフィさんは俺の女神ですから」

 目を合わせられなくなって、とっさに顔を逸らす。
 不服だったのか、ランブルト様の手がわたしの頬に添えられ、ぐいっと正面を向けさせられた。

 いやでもランブルト様の真剣な顔が視界に入ってくる。
 後退しようと身を捩らせれば、たくましい腕が腰に絡みつき、抱き寄せられる。

 逃げられない。

「返事を聞かせてもらってもいいですか」
「ちょっと、結論を急ぎすぎじゃないですか……? ランブルト様はとても素敵な人だと思いますけど、たった一回会っただけでわたしと結婚したいなんて…………それに、いまのわたしは貴族じゃないですよ……?」
「ユフィさんと一緒になりたいのです。貴女じゃないと、俺はダメなんですよ」

 雰囲気が鬼気迫っていて、戸惑ってしまう。

「その……」
「他に好きな男でもいるのですか?」
「っ!」

 ひゅぅ……っ、とか細い息が漏れた。
 ランブルト様の気配が、完全に変わっている。

「それ…………まさかとは思いますが」
「い、い、いませんっ!」

 脳裏にちらついた黒い髪と、甘いテノールボイスを振り払う。
 違う。
 違うのだ。
 今のわたしに、好きな人なんていない。

 だって“あの人”は────





『そういう目で見られるのは困るよ』
『で、でもわたしは……っ!』
『そんな感情、ただのまやかしだから』




 わたしは、アゼル様のことが好きで、二年くらい前に意を決して自分の気持ちをぶつけてみた。

 そしたら。

『君の気持ちに応えることは出来ないよ』

 わたしの顔すら見ることなく、アゼル様にそう言われた。
 でもアゼル様が大事な人であることは変わらないから、もしアゼル様に好きな人が出来たら応援しようと思っていた。アゼル様の幸せの為に、何でもしようと思っていた。

 だってアゼル様は、わたしの救世主ヒーローだったから。

 なのに、アゼル様が魔力を提供するためとはいえ、わたしと一晩を共にした。
 だから、ほんのちょっとだけ期待した。

 アゼル様に異性として好かれているのかもしれない、と。

 でも、わたしの体に触れた翌日、アゼル様はいたって平静だった。いつも通りだった。

 アレは本当に治療以外の意味なんてなかったんだと思った。

 アゼル様にとって、わたしはただ義妹いもうとなのだ。
 ただ、アゼル様が心配性なだけ。
 過保護なだけ。


 ──これ以上期待して、辛い気持ちになりたくない。


「好きな人は……いません」
 
 視線を受け止める。
 ランブルト様は、まだ疑っているみたいだ。

「俺の目を見て言えますか?」
「は、……い」
「……。どちらにせよ、ユフィさんには俺にメロメロになっていただく必要がありますから」

 ランブルト様の指が、わたしの頬に触れる。
 口角をあげて、ランブルト様は扇情的な笑みを浮かべた。

「嫌だったら蹴り飛ばしてくださいって言って、蹴り飛ばさなかったのはユフィさんですからね?」

 ベンチに、押し倒されて。
 動こうとすれば、足の間に膝をさしこまれる。

「あ……、え……?」

 意味が分からず混乱するわたしに、ランブルト様はにこりと微笑んで。

「その可愛い唇からいただきますね」

 唇に、噛みついてきた。
 
「ん、んんっ」

 ランブルト様の舌が口腔内を暴れまわり、緩急をつけて刺激していく。押さえつけるような深いキスが、脳に送り込むはずの酸素と正常な思考を奪っていく。
 唇が離れ、酸素を吸おうとした瞬間にもう一度塞がれ、舌を絡み取られた。唾液をすりつけられ、こすぎあげられ、じゅるじゅると音を立てて吸われる。

「ん、や、ぁ……っ」
「ああ、やはりユフィさんと俺は魔力の相性がいいみたいですね。キス一つでこんなに蕩けてくれるなんて……」
「ん、んぅ……っ」

 アゼル様とはまた違う、ランブルト様の魔力。
 アゼル様がすっきりとした上質な甘い蜜だとすれば、ランブルト様はクラクラするほどの濃厚な蜂蜜酒だ。

 入り込んで浸透していく感覚に、じゅく……っと奥底が切なく疼く。

「は、ぁ……ま、って、……っ」
「可愛い…………もっとあげたくなる」

 無骨な指によって、服の上から優しくソフトタッチされる。胸のいただきを指の腹でトントンとされて、無意識に足を擦り合わせてしまう。

もどかしくなっていく。じれったい熱がおへその下あたりに溜まっていった。

「ここ、あまり人が通らないんですよ」
「あ、……っ!」
「大丈夫、誰か来たらそこでやめてさしあげますから」

 ランブルト様が、わたしのブラウスのボタンをパチンっと外した。 

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