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◆番外編◆
完璧ではないあなたの心を癒してあげたい(3)_レザニード視点*
しおりを挟むレザニードには、幸せだと思う瞬間が2つ存在する。
1つは、妹の表情を見ること。天真爛漫という字面そのままに喜怒哀楽をよく表現するルディは、思っている事をすぐ顔に出してしまう。哀しい時は涙を流して大泣きし、怒る時は眉をぎゅっとひそめ、楽しい時や喜んでいる時は歯を見せて笑う。とりわけルディの笑顔は周りの心を和ませ、レザニードが生きていく上で欠かせない心の栄養剤となった。
もう1つは────
「んっ、んふぁ……」
「ルディは弱いトコロが多いね……」
「そ……れはっ、レニーに、さわられてるから……っ」
「またそうやって煽る……」
「だって事実……っ、ん、あぁっ……!」
「まだお腹しか触ってないよ」
「おへそっ、舐めちゃ……っや、ぁあっ!」
世界で一番愛くるしい妹を壁に押し付け、快楽と羞恥で身悶えさせる今この瞬間である。
もう二度と大事な妹から笑顔を奪わないように、手枷や鎖で繋ぐような事はしないとレザニードは決めている。その代わりに、自分自身の体を駆使して妹の自由を奪い、繊細な指使いで蕩けさせ、囁き声で逃げないように閉じ込める。
媚薬なんて必要ない。兄に触れられ続けて、妹の身体は淫蕩に熟した。薬に頼らずとも、愛を込めたキス一つで妹のまるっこい頬は上気し、舌を絡み合わせれば快感を耐えるように服を掴んでくる。
ルディの熱っぽく潤んだ薄紫の瞳に、自分の姿だけが映っている。何かを期待するように薄く口が開いている。誰にも邪魔されず、ルディが自分だけを考え、想い、焦がれ、さらなる快楽を求めて喘ぐ瞬間こそ、心の奥底でくすぶり続けるレザニードの暗い欲望と支配欲が満たされる。
「は、ぁ……ん、んっ!」
「いつ見ても美味しそう……」
「んんっ!」
たわわに実った白い果実を、感触を確かめるように揉む。
低身長で童顔のわりに胸が大きいと、ルディに相談を持ち掛けられたことがある。大きすぎるということはないが、確かに幼い見た目のわりに胸が大きめだとレザニードも思っている。
このギャップも、ルディが男に狙われやすい原因の1つだろう。ルディの胸を凝視した男は全員目を潰したいくらいだが、相談されたときはソレをおくびにも出さず、胸の膨らみを強調しない服装を心がけるように助言しておいた。
「また大きくなったかい?」
「そんなすぐにサイズなんて、変わらな……っぁんっ」
「こうやって触っていると、胸の飾りがツンと勃ち上がってきてくれるね」
「ち、くび、こりこり、やぁ……っ」
ビクビクと身体を震わせるルディ。
レザニードはルディの小さな耳に息を吹きかけた。
「しゃぶりつきたくなるくらいに、綺麗だよ」
「ん、ぁあ……っ」
「食べていいかい?」
言いながら、背中から腰にかけて手のひら全体で緩やかに撫でる。官能が高まっているのだろう。わずかに開いた唇から、熱っぽい吐息が漏れていた。
「食べてほしい?」
「……っ」
「言ってくれないと分からないよ?」
そのときルディが、レザニードの服の袖を引っ張った。そのままルディが首に腕を回す。距離が縮まり、レザニードの真正面にルディの顔が近づいた。
「い、じわる、しないで……?」
上目遣いで、懇願されて。
レザニードは、吐息交じりに笑う。
──本当に。
──この子は、身も心も俺のものだ。
ルディの顎に手をかけて、つやつやの唇にキスを落とす。先にルディが酸欠気味になって顔を離そうとしたが、レザニードがそれをさせなかった。押し付けるようにキスを深くしていく。
「ん、んぁ……」
ルディの体から力が抜け、膝から崩れ落ちそうになる。その瞬間に、レザニードが片腕をルディの膝裏に差し込み、軽々と持ち上げた。
「寝室に行こう。男女が愛し合うなら、やっぱりそこじゃないとね」
林檎のように顔を赤くしているルディに、にこりと微笑みかけるレザニード。
お姫様抱っこでルディを運び、毎夜を共にしているベッドに優しく横たわらせた。
レザニードは知っている。
ルディが自分に向ける“愛”と、自分がルディに向ける“愛”とでは、重さが全く違う事に。
だが、レザニード自身が不平等さを嘆くことは、決してない。
不満をルディにぶつけてしまったが最後、今度こそ本当に、優しく穏やかな時間が壊れてしまうからだ。
「レニー……っ」
暗い感情とも、うまく折り合いをつけられている。なによりルディが理解して、どす黒い支配欲の塊みたいな自分を受け入れてくれた。もうルディが恐怖で顔を歪めることはない。
心の底から、幸せだとレザニードは思った。
ルディの笑顔を守りながら、ルディから愛されている。
(愛おしい…………)
ルディの柔らかい頬を撫でる。
レザニードは口を開いた。
──その言葉を、言おうとして。
「愛して────」
『────おまえは私の最高傑作だ』
口を、閉ざす。
あぁ、最悪だとレザニードは思った。
最愛の妹と触れ合い、慈しみ合う最高に甘く幸せな時間に、この世で最も汚く醜い男の顔がちらつくなんて。
本当に、今日はついてない。
「レニー……っ?」
ルディが戸惑いがちに瞳を揺らしている。
不安にさせてはいけない。
そう思ってレザニードは微笑んだが、ルディは起き上がってしまった。守るべき存在である小さな体に抱きしめられる。レザニードは戸惑った。
「レニーの心の痛みを、わたしにも分けてください」
「え……?」
「一緒に背負いたいんです。今まで、ずっとレニーに守ってもらってばっかりで、何もしてあげられなかったから」
「でもそれは、当たり前の事だからだよ。俺がルディを守るのは、本当にごく自然のことで、君はただ俺の傍で笑いかけてくれれば……」
ルディは、ふるふると首を振った。
「わたしはもう守られるだけの妹じゃない。わたしは、ただのルディです。あなたを愛して、あなたに愛される一人の女の子です」
透き通った紫の瞳が、レザニードを射抜く。
「あれだけ兄様と呼ばれるのがイヤだったくせに、レニーはまだわたしを妹扱いするの? それってあんまりじゃない? レニーはわたしを一人の女性として愛してくれてるんでしょ?」
「ああ、もちろんだよ」
「だったら教えて。わたしはレニーのものであり、レニーはわたしのものですから」
「…………」
顔の上半分を手で覆って、レザニードは息を吐きだした。
(全く、この子は………)
変なところで、頑固で強引だ。
昔からそうだった。
こうだと思ったら曲げない。傍にいたら不幸になるからっていう思い込みで、2年近くも家出したような女の子だ。
レザニードは、ルディの髪に指を通した。柔らかく、温かい。ずっと触っていたくなるような感触を楽しむ。
「可愛いルディには、あまり聞かせたくないような人間の汚くて醜い話だよ?」
「いいです。どんと来てください。それがレニーの味わった痛みなら、全部受け止めます」
そうだった。
妹は──ルディは、こういう子だった。
柔らかくて、温かくて、周りを明るく照らしてくれるお陽様みたいな存在。
レザニードは、この小さなお陽様の笑顔に何度も救われている。
ルディがいなければ、レザニードはとっくの昔に、心を殺されていた。
実の父親の手によって。
「どこから話せばいいかな。ひとまず、ルディが産まれる前の話から……」
「産まれる前……?」
「うん……」
部屋の隅っこを眺めて。
ぽつり、ぽつりと、レザニードは話し始めた。
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レザニードの過去編に入っていきます。
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