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兄様とわたし
23 兄様と繋がりたい*
しおりを挟むレザニード兄様から主導権を奪わないといけない。
そう思っているのだけれど、やっぱり兄様は完璧で、弱いトコロを全部把握していると言った通り、巧みな指使いに翻弄されるばかりだった。
「っあ、っんん……っ!」
すでにナイトワンピースの肩紐はずり下げられていて、胸と白いお腹が露出している。ツンと突起した赤い蕾は触ってほしそうに揺れているけれど、肝心のそこには触れずに、周りをくるくると円を描くだけ。
焦れったい。
けれども無視するには甘すぎる刺激。
「んっ、……ぁぅ」
わたしの耳たぶを甘噛みしたり引っ張ったりしていた兄様が、そのまま首筋におりていく。鎖骨、胸、おへその順番でキスを落とされた。
誕生日に“怖い兄様”に植え付けられた恐怖を、今の“優しい兄様”が上書きしているような、そんな不思議な感じ。
「や……っん」
兄様が、ナイトワンピースで隠れていた太ももの内側まで辿り着いた。わたしの片膝を立てさせ、軽く足を開かせて、際どいところに舌を這わす。
「ん、やぁっ……あぁ……っ!」
感覚が鋭敏になっていく。
赤い舌が次に狙うのは何だろうと、そのことばかり考えてしまう。でも、それじゃダメだ。流されちゃ、このあとの計画に支障が出る。何とか上体を起こして、兄様の腕を掴んだ。
「兄様……っ」
「うん?」
「顔を……」
「顔を?」
「顔を、近づけて……ください……っ」
「こうかい?」
兄様の顔が近づいてくる。
でも、まだ遠い。わたしが「もっと」と言うと、綺麗な顔がさらに近づいてくる。鼻と鼻がぶつかりそうで、互いの吐き出した息を吸い込めそうなほどの距離。見惚れるほど美しい紫水晶の瞳に、熟れた林檎みたいに赤くなったわたしの顔が映り込んだ。
兄様の首に、腕を回す。
また薄く目を見開いて驚く兄様に接近して、その厚めの唇にわたしの唇をそっと重ねた。
「っ」
「ッ」
薄く開かれた口に、遠慮がちに舌を入れる。より深く舌を入れようと思うと、わたしがもっと前のめりになるか、近付いてもらうしかない。仕方ないから、引き寄せようと腕に力を込める。
「それじゃ堕とせないよ」
「んっ!」
大きな手に頭を押さえつけられ、キスが深くなった。入れようと思っていた舌ごと絡み取られ、ちゅうっ、と吸われる。舌先を弄ばれ、上顎を舐められる。
激しいキスに頭がぽーっとしてくるけれど、目的を思い出し、応戦しようとしたところで唇が離れた。
「舌裏に隠してるのは薬かな」
気付かれてる……!!
兄様に飲ませるために、来る前から仕込んでいた。
薬は父の部屋にあったものを盗んだ。
兄様に飲ませようと思ったのだけれど、キスして飲み込ませる以外に思い付かなかった。
わたしはキスが下手だし、舌を入れるのが恥ずかしくて上手くできなかった。計画は失敗した。もうダメかも……。
「舌の上に薬を乗せて」
「え……っ?」
「いいから」
言われた通り、自分の舌の上に薬を乗せる。
「もっと舌を突き出して、唾液を絡ませて送り込まないと、飲み込ませるなんて到底ムリだよ」
兄様の顔が迫ってきた。
「ほら、舌を入れてごらん」
「っふぁ……っん」
「早く」
唇が兄様に食べられて、指でトントンっ、と合図された。
羞恥を我慢しながら舌を突き出す。奥に突っ込んでも、上手く流し込めなくて、泣きそうになる。それを見兼ねたのか、兄様がわたしの頭と腰を掴んだ。体勢が変わり、わたしが兄様を押し倒すようなかたちでキスすることになった。
「ふ、ぇ……っ」
……恥ずかしいけれど、これなら何とかなりそう。
奥に舌を突っ込み、懸命に唾液を流し込んでいると、ようやく兄様が薬を飲み込んでくれた。
「上手に出来たね」
わたしが優位な立場になる想定だったのに、なぜか主導権は兄様に握られたままで、しかも幼子をあやすように頭を撫でられている。……こんなはずじゃなかったのに、おかしいな……。
「睡眠薬。よく使っているやつより、ちょいキツめのものを2錠か。なるほど、一度眠ったらどんな物音を立てても、半日経たないと起きないだろうね」
兄様が起き上がった。覆いかぶさっていたわたしも、それにつられて上半身を起こす羽目になる。
あれ……全然効いてない……?
「不思議そうな顔してるね」
「ゃあぅ……っ」
ナイトワンピースの中に、兄様の手が入ってくる。その感覚だけでビリビリとした痺れが走って、声が出た。足の付根を撫でられて、ゾクゾクする。思わず身をよじった。
「この薬は即効性じゃないから、早くても15分かかる。しかも俺は薬に耐性があって効きにくい。だから、今飲ませた睡眠薬も30分は経たないと効果が出ない」
「や、っ……んっ!」
指が下着の上から肉粒を引っ掻いた。
「この30分で殺されないように頑張るつもりだから」
「だ、からっ、殺さないって、言ってるじゃ、ゃああっっ!」
指が下着の中に入り、肉粒に触れる。下の口から湧いてくる蜜を掬い、ゆるゆると愛撫されて肩がはねた。上体がぐらつき、支えが欲しくて兄様の肩に頭を預けてしまう。
「っあぁ……あっ……」
「溢れ出したら止まらないね」
「っう……ぁっ……あぁ」
「可愛い声」
頭上からクスクスと笑い声が聞こえたと思ったら、首元に唇を押し付けられて、後ろに倒された。
「我慢出来てないけど、いいのかい?」
指が蜜壺に沈み、硬く閉ざされていたソコを解していく。大量の愛液が分泌され、動かされるたびにぐちゅぐちゅと響いた。
真上にいる兄様が笑っている。
慈しむように細められた瞳。
優しげに上がった口角。
なによりその甘い声が、わたしの心を蕩けさせていく。
「なにか要望はある?」
「……あっ……あぁ……」
「いつもは俺がしたいようにやってるからね。
なにか要望があるのなら言ってみて。放して、やめて以外なら聞くよ?」
何も言わないわたしに、兄様は悲しげに眉をひそめる。
「俺に、言うわけないか……。変なこと聞いたね、今のは忘れて」
「…………にい、さま」
兄様に、両手を伸ばした。
何かに気づいてくれたのか、兄様はナカから指を抜いて、ほんの少しだけ、わたしに体を近づけた。
おかげで、兄様を抱き締めることが出来た。
「……くだ、さい」
兄様が顔を寄せる。わたしは兄様の頭を抱き込んで、声が小さくても聞こえる位置まで、引き寄せた。
「兄様を……兄様のものを、
……い……れて…………ください……っ」
兄様がまた、驚いたような気がする。
恥ずかしくて、目を瞑ったまま兄様の頭をぎゅうっと抱き続けた。しばらく、じぃっと見つめられているような気がした。兄様は、どんな顔をしているのだろう。
もしかしたら……嫌われた? あんなに嫌がってたのに、尻の軽い女だと思われた? やっぱり取り消そうかな。目を開けようとしたときに、耳もとに兄様の声が落ちてきた。
「いいよ。君のナカ、全部俺で満たしてあげる」
腰を掴まれ、思い切り引き寄せられた。
「ひゃあっっ!!」
刺激を待ちわびてピクピクと動く蜜口に、兄様の雄があてがわれる。愛液を纏わせて、入り口を確認するように数往復。それだけで大きな声が出そうになって、顔全体を手で覆う。
ぐぅ……っ、と腰を押し進められて、太く熱いものが内壁を抉って奥へと進む。
「あ、あっ、……っああっ!」
満たす。
言葉通り、ナカが兄様で満たされていく。異物感と痛みはすぐに消え去り、雄に支配される甘い感覚だけが全身を駆け巡った。
「ん、ぁあ……っ、っあっ」
「手をどかすよ」
手を引き剥がされる。
とても近い場所に兄様の顔があって、また恥ずかしくなった。
「や、……やっ、ぁあっ!」
「やだって言っても聞かないよ」
「見ないっ、でっ! ……っぁあっ!」
「ルディを見るのは俺だけの特権だから。
ほら、ちゃんと俺を見て、俺を感じて」
切なげに揺れる紫紺の瞳と目が合った瞬間、兄様に腰を大きく動かされた。
「あぁっ……っあぁっ…っ!!」
強く打ち付けられ、声が大きくなる。
頬を、大きな手が包み込んだ。
「俺に……俺だけに見せて。俺に突かれて可愛く啼くところ」
奥をグリグリと突かれて、目の奥がチカチカした。張ったエラの部分で強烈に擦られ、引き抜かれて、また嬌声があがる。
愛液に包まれた熱い雄が再び奥まで貫いて、快楽の頂まで一気に押し上げられた。
「…………」
「あぁ……っんぁ、ああっ……」
「…………」
「にい、さまっ、ぁあっ」
「…………ッ」
すがるものがなくて、シーツを掴む。
喉が反った。
「あっ! ふぁ……ん、っあぁぁっ!」
胸を、しゃぶるように舐められた。唾液をかけて丹念に愛撫されて、ナカがきゅんと締まる。苦しげな声が聞こえて、モノがドクンッと脈打った。
感じて、くれた……?
見たい。
レザニード兄様がどんな顔をしているのか見たくて、手を伸ばした。
「れ、……にー…………っ」
兄様がそれに応えてくれる。
背中に腕を回され、抱き締められた。
わたしも兄様の首に腕を回す。
「ッ」
兄様は、耐えるように眉根を寄せて、わたしを見つめている。
その瞳に、狂おしいほどの熱を秘めて。
「ルディ……ッ」
「き、す、して……くださ…っ」
唇が重なる。
舌を絡ませ合う。
ごちゅんっ、と、最奥でも兄様と繋がる。
互いに求め合いながら、わたしと兄様は一緒に達した。
夜が明けた。
わたしはしばらく、兄様の腕の中にいた。兄様は瞳を硬く閉ざし、小さな寝息を立てて眠っている。
最低でも半日以上は眠る想定の睡眠薬だけれど、やっぱりわたしは、音を立てたら起きてしまうんじゃないかって思ってしまう。できるだけ音を立てないように身をよじる。
わたしを強く抱きしめたまま眠ってしまっているので、兄様の腕から脱出するのは一苦労だった。
風邪をひかないように、兄様の体に掛け布団をかける。
改めて見ると綺麗な寝顔。
こんなふうに寝ている姿を見るのは、初めてかもしれない。監禁部屋にいたときは、兄様が先に起きていたから、見られなかった。
ここを出る前にしっかり兄様の顔を見ておこうと思ったのだけど、なんだか視界がぼやけてきた。
「あ、……れ……」
わたしは…………泣いていた。
ぽたぽたと、目から雫が落ちていく。
おかしいな。
ずっと前から、兄離れしようって、兄様から離れなきゃって、思っていた。
兄様は優しいから、わたしがいると自分を犠牲にし始める。
わたしは穢れてるから、兄様の人生を狂わせてしまう。
わたしが離れないと兄様がもっと不幸になってしまう。
頭脳明晰な兄様なら、頭の悪いわたしなんていなくてもオルソーニ家を守っていける。わたしが料理を作らなくても家政婦を雇えば暮らしていける。わたしがいなくても……わたしより美人で優しくて気立てが良い女性が、きっと兄様に恋をして、兄様もきっと、わたしがいなければその人と付き合うだろう。
だから、今日はとても嬉しい日のはずだ。
兄様のために、兄様のためにって、ずっと思っていて、いまようやく、兄様から離れることができる。兄様の幸せを思うのなら、兄様の隣にわたしはいらないはずだ。
なのに。
どうして、こんなに胸が締め付けられるんだろう。
どうして、涙が止まらないんだろう。
「……本当にだめな子だ、わたし」
別れを意識した瞬間、兄様が好きだという気持ちが溢れてくるなんて。
「────行こう」
荷物は、多くない。
トランクケースに詰めたのは、高く売れそうなドレスと小さな宝石、多少の着替え。
あとは、昔好きだった少女向けの絵本。王子様と平凡な女の子がハッピーエンドを迎える話だから、辛い事があったら読み返すつもりだ。
兄様から誕生日プレゼントとして貰った靴を履いて、外に出る。
16年も兄様と過ごしてきた温かな場所から、飛び出した。
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