【R18】ヤンデレになった兄様に狂おしいほどの愛を注がれてます【本編・番外編ともに完結済】

べらる

文字の大きさ
上 下
32 / 46
兄様とわたし

20 もう抱かないって決めた

しおりを挟む



「……ぅん」

 身体が、とっても重い。
 倦怠感がひどくて、瞼を開けるのも億劫だ。

 それでも何とか目を開いて上体を起こす。
 見覚えのある部屋。
 自分の部屋だ。
 わたしはいま、ベッドの上にいる。

 頭がぼーっとしていて、考えがまとまらない。
 
 えと…………何があったんだっけ。エーベルト様の家で誕生パーティをして、レザニード兄様が迎えに来て、エーベルト様に婚約破棄をつきつけて……それで兄様と一緒に家に帰ってきて、誕生日プレゼントを貰って、それで……それで……?

『あの男よりも気持ちよくしてあげるからね、ルディ』

 そうだ。
 わたし……また、兄様に……。

 媚薬入りの果実ジュースを飲まされて、兄様に押し倒された。
 兄様に触れられたところが全部熱くなって、怖さを感じるくらい気持ちよくなって、今までずっと我慢していたのに大きな声で喘いでしまった。

 兄様自身ではなく、モノを模したよく分からない玩具を膣内に挿入された。わたしが怖いって言っても、止まってくれなかった。ザラザラの表面がナカを掻き乱す度に強烈な快楽に変わって、頭がおかしくなりそうになった。

「……っ」

 自分の体を抱き締めた。
 無理だ。
 思い出してしまったら、やっぱり怖くなってしまう。キスされたときに流れ込んできた狂気の感情や、表情、甘い声、わたしを閉じ込めようとする兄様の手が、とてつもなく恐ろしいものに思える。兄様を思い浮かべることすら拒否してしまいそうになった。

 でも。

『カラダだけでも、俺にちょうだい……?』

 意識を手放す前に、レザニード兄様が放った言葉。
 胸が締めつけられるような悲しい声だった。

 兄様は前に、自分が抑えられない、と話していた。

 だからあの時も言葉も、きっと本心からわたしが欲しいのは変わりないのだろうけれど、それと同時に、わたしに謝っていたのではないだろうか。

 不出来な兄様でごめんね、と。
 怖がらせてごめんね、と。

 だからわたしが意識を手放したあと、兄様は。
 わたしを犯すのを、やめたのではないだろうか。

 なんで、そんなことが分かるかというと。
 何となくだけれど、ずっと頭を撫でられていたような気がしたからだ。

 それに、今のわたしは意外と元気だ。確かに三度も達したことで疲労感はあるけれど、心が壊れて廃人になってる、とかはない。

「兄様……」

 兄様がおかしくなったのはわたしのせいだ。
 辛くて苦しんでる姿を見たくない。
 優しいレザニード兄様には幸せに生きてほしい。


 でもまだ、どうすればいいか分からない。


 扉がノックされた。
 きっとレザニード兄様だ。

「起きてるかい」

 沈痛な声。
 わたしは「は、はい!」と返事をした。
 声の震えは……抑えられなかった。

「……。食事を作ったのだけど、食欲はある? もうお昼過ぎてるから、そろそろお腹に何か入れないと気分が悪くなるよ」

 え? そんなに寝てたの……?

「ちょっとだけなら、食べられます。……ただ体が全然動かなくて……」
「……部屋、入ってもいいかい」
「えっ」

 動揺してしまった。
 わたしが怖がれば兄様が悲しい思いをするのに、何やってるんだろ、わたし。

「どうぞ……」
「入るよ」

 兄様が部屋の中に入って来る。
 カツン、カツン、と靴音が近づいてくるたびに心臓がドカドカと音を立て、金色の髪が視界に入ってきた時に、つい視線を逸らしてしまった。

「気分悪いとかはある?」

 ベットの傍にあるイスに、兄様が座る。

「ない、です……」
「体は……まぁ重いよね。水だけでも、ここで飲んでおこうか」

 ベッド横のテーブルには、水差しが置かれている。
 兄様が水差しを持って、渡そうとしてくる。
 水差しを受け取って、飲み始めたけれど、思いのほか水の勢いが強くてむせてしまう。顎やベッドが濡れてしまった。兄様がハンカチを取り出して、わたしの顎を拭こうと手を伸ばしてくる。

「や……っ!」

 そのまえに、わたしが腕でガードしてしまった。
 兄様を拒絶してしまった。
 そんなつもりはなかったのに、兄様の大きな手が近づいてくるのが分かって、ほぼ無意識にやってしまった。

「…………」

 拭おうとする兄様の手が離れていき、かわりにわたしの手の近くにハンカチが置かれる。震える声でお礼だけ言って、ハンカチを持って濡れたところを拭いていく。

 兄様はいま、どんな顔をしているのだろう。
 怒っているのだろうか。
 悲しんでいるのだろうか。
 怖くて、顔を見ることが出来ない。

「俺ね、一つ決めたことがあるよ」
「……」
「この先、もう二度とルディを抱かないし、キスもしない」
「……っ」

 見なくても、この真剣な声を聞けば分かる。
 兄様は真摯しんし的な表情で、わたしを静かに見つめているだろう。

「勘違いされたら困るから言っておくけれど、ルディを諦めたわけじゃないよ。この家には居てもらう。どれだけ俺が嫌いでも、怖くても、憎んでいても、俺の傍を離れることは許さない」

 椅子から立ち上がった音がした。

「部屋に昼食を持ってくるよ」

 靴音が離れていく。
 わたしは…………最後の最後までレザニード兄様の顔を見ることが出来なかった。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レンタル彼氏がヤンデレだった件について

名乃坂
恋愛
ネガティブ喪女な女の子がレンタル彼氏をレンタルしたら、相手がヤンデレ男子だったというヤンデレSSです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

処理中です...