【R18】ヤンデレになった兄様に狂おしいほどの愛を注がれてます【本編・番外編ともに完結済】

べらる

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兄様とわたし

20 もう抱かないって決めた

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「……ぅん」

 身体が、とっても重い。
 倦怠感がひどくて、瞼を開けるのも億劫だ。

 それでも何とか目を開いて上体を起こす。
 見覚えのある部屋。
 自分の部屋だ。
 わたしはいま、ベッドの上にいる。

 頭がぼーっとしていて、考えがまとまらない。
 
 えと…………何があったんだっけ。エーベルト様の家で誕生パーティをして、レザニード兄様が迎えに来て、エーベルト様に婚約破棄をつきつけて……それで兄様と一緒に家に帰ってきて、誕生日プレゼントを貰って、それで……それで……?

『あの男よりも気持ちよくしてあげるからね、ルディ』

 そうだ。
 わたし……また、兄様に……。

 媚薬入りの果実ジュースを飲まされて、兄様に押し倒された。
 兄様に触れられたところが全部熱くなって、怖さを感じるくらい気持ちよくなって、今までずっと我慢していたのに大きな声で喘いでしまった。

 兄様自身ではなく、モノを模したよく分からない玩具を膣内に挿入された。わたしが怖いって言っても、止まってくれなかった。ザラザラの表面がナカを掻き乱す度に強烈な快楽に変わって、頭がおかしくなりそうになった。

「……っ」

 自分の体を抱き締めた。
 無理だ。
 思い出してしまったら、やっぱり怖くなってしまう。キスされたときに流れ込んできた狂気の感情や、表情、甘い声、わたしを閉じ込めようとする兄様の手が、とてつもなく恐ろしいものに思える。兄様を思い浮かべることすら拒否してしまいそうになった。

 でも。

『カラダだけでも、俺にちょうだい……?』

 意識を手放す前に、レザニード兄様が放った言葉。
 胸が締めつけられるような悲しい声だった。

 兄様は前に、自分が抑えられない、と話していた。

 だからあの時も言葉も、きっと本心からわたしが欲しいのは変わりないのだろうけれど、それと同時に、わたしに謝っていたのではないだろうか。

 不出来な兄様でごめんね、と。
 怖がらせてごめんね、と。

 だからわたしが意識を手放したあと、兄様は。
 わたしを犯すのを、やめたのではないだろうか。

 なんで、そんなことが分かるかというと。
 何となくだけれど、ずっと頭を撫でられていたような気がしたからだ。

 それに、今のわたしは意外と元気だ。確かに三度も達したことで疲労感はあるけれど、心が壊れて廃人になってる、とかはない。

「兄様……」

 兄様がおかしくなったのはわたしのせいだ。
 辛くて苦しんでる姿を見たくない。
 優しいレザニード兄様には幸せに生きてほしい。


 でもまだ、どうすればいいか分からない。


 扉がノックされた。
 きっとレザニード兄様だ。

「起きてるかい」

 沈痛な声。
 わたしは「は、はい!」と返事をした。
 声の震えは……抑えられなかった。

「……。食事を作ったのだけど、食欲はある? もうお昼過ぎてるから、そろそろお腹に何か入れないと気分が悪くなるよ」

 え? そんなに寝てたの……?

「ちょっとだけなら、食べられます。……ただ体が全然動かなくて……」
「……部屋、入ってもいいかい」
「えっ」

 動揺してしまった。
 わたしが怖がれば兄様が悲しい思いをするのに、何やってるんだろ、わたし。

「どうぞ……」
「入るよ」

 兄様が部屋の中に入って来る。
 カツン、カツン、と靴音が近づいてくるたびに心臓がドカドカと音を立て、金色の髪が視界に入ってきた時に、つい視線を逸らしてしまった。

「気分悪いとかはある?」

 ベットの傍にあるイスに、兄様が座る。

「ない、です……」
「体は……まぁ重いよね。水だけでも、ここで飲んでおこうか」

 ベッド横のテーブルには、水差しが置かれている。
 兄様が水差しを持って、渡そうとしてくる。
 水差しを受け取って、飲み始めたけれど、思いのほか水の勢いが強くてむせてしまう。顎やベッドが濡れてしまった。兄様がハンカチを取り出して、わたしの顎を拭こうと手を伸ばしてくる。

「や……っ!」

 そのまえに、わたしが腕でガードしてしまった。
 兄様を拒絶してしまった。
 そんなつもりはなかったのに、兄様の大きな手が近づいてくるのが分かって、ほぼ無意識にやってしまった。

「…………」

 拭おうとする兄様の手が離れていき、かわりにわたしの手の近くにハンカチが置かれる。震える声でお礼だけ言って、ハンカチを持って濡れたところを拭いていく。

 兄様はいま、どんな顔をしているのだろう。
 怒っているのだろうか。
 悲しんでいるのだろうか。
 怖くて、顔を見ることが出来ない。

「俺ね、一つ決めたことがあるよ」
「……」
「この先、もう二度とルディを抱かないし、キスもしない」
「……っ」

 見なくても、この真剣な声を聞けば分かる。
 兄様は真摯しんし的な表情で、わたしを静かに見つめているだろう。

「勘違いされたら困るから言っておくけれど、ルディを諦めたわけじゃないよ。この家には居てもらう。どれだけ俺が嫌いでも、怖くても、憎んでいても、俺の傍を離れることは許さない」

 椅子から立ち上がった音がした。

「部屋に昼食を持ってくるよ」

 靴音が離れていく。
 わたしは…………最後の最後までレザニード兄様の顔を見ることが出来なかった。

 
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