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揺れ動く心
19 暗い誕生日・後編*
しおりを挟む奥底が震えた。
全身に、急激な熱が広がり始める。
もしかしたら。
もしかしたら今の兄様になら、言えるかもしれない……。
ずっと、わたしが言えなかったこと。
「にい、さま……」
喉が震える。
レザニード兄様が、わたしの胸の膨らみに手をかけた。
「可愛いよ、ルディ」
胸の先端をこねくり回される。指の腹でくにくにと形を変えられ、円を描くようにさわさわと撫でられた。思わず兄様の服を掴んでしまう。
「ん、ぁ……」
兄様はわたしをソファに押し倒した。
兄様の骨ばった指がわたしのスカートの内側に侵入する。
眉間に力が入る。
「可愛い顔で睨まないでくれるかい。誕生日なのに酷くしたくなる」
「ひゃぁ……っ」
指がスライドしていく。足のきわどいところを人差し指が這い、また顔に力が入る。兄様はわたしの表情をなめるように観察しながら、するりと下着の内側に入り込んできた。
兄様に触れられたところが、全部熱い。
まるで血液が沸騰しているみたいだった。
「ヘンな、感じが、するっ……んっっ」
「どんな感じ?」
「熱い……っ。や、やぁっ、ああ!」
兄様の指が、刺激を待ち望んで蜜を排出し続けるソコに、軽く触れた。それだけでとんでもない疼きが広がって、大きな声が出る。
おかしい。
ありえないくらいの快楽が襲ってくる。
兄様から愛情を受ける時、声を抑えることが出来ていた。
でも今は、全然抑えられない。
まるで……あのときみたいだ。
監禁されて、媚薬を飲まされた時と同じ感覚。
それに気付いて、顔から一気に血の気が引いた。
「やだっ、兄様っ! 何か、したのっ?」
「少しだけ、ね。数時間で効果が切れるよ」
もしかして、さっきのジュースに……?
「やだ、やだよっ。薬はやだ! 兄様、兄様っ!」
兄様の胸板をドンドン叩くけれど、まったくビクともしない。それどころか、体重をかけてわたしを押さえつけようとしてくる。
閉じ込められる……っ!
「やだ、怖いよぉっ!」
「大丈夫だよ。怖くないからね」
イヤイヤするようにわたしが首を振れば、目から溢れた涙を兄様が拭ってくれた。
薬によって強制的に発情させられた状態で、これから兄様に与えられるであろう快楽が、とても恐ろしい。
わたしが、わたしでなくなる気がする。
「やっ! んっ、っああ!」
淫液を絡ませながら、焦らすように秘唇を上下に撫でられる。
身体がガクつき、血が下腹部に集中していく。
「んやぁ、っああっっ!」
「気持ちイイだけだよ。怖くないからね」
「いらな、いっ! わたしが欲しいのは、そういうのじゃないっ!」
「何も心配しなくていい。俺に身を委ねて、俺を感じて」
「ひっ、やぁああ!」
兄様がゆっくりと指をわたしのナカに入れてくる。秘壁が悦んで指を咥え込み、淫液を垂れ流してさらなる快楽を生み出そうとし始めた。
「兄様も、兄様も飲んでっ! わたしだけじゃやだっ!」
「俺は飲まないよ」
「や、兄様も! お願い、だからっ!」
「今日は誕生日だから、気持ちよくなるのはルディだけだよ」
「ひとりはやだ、やなのぉ……っ!」
「大丈夫だよ」
兄様が、わたしの耳もとに唇を寄せてきて。
暗くて甘い声が、耳の穴を通って脳髄に浸透した。
「あの男よりも気持ちよくしてあげるからね、ルディ」
股の秘唇を滑っていた指が、急に三本も入ってきた。
「あぁあぁあっっ!」
エーベルト様との閨事で達しなかったのが原因だろう。
入れられて、軽く擦られただけなのに、ナカが収縮して、一気に熱が弾けて達してしまった。
ソファから浮いてしまうほど、背中が弓なりに反る。
「上手にイけたね。彼に可愛がられたのが原因かな?」
「ぁっく……ぁやだ……」
「本当に彼には嫉妬させられてばかりだよ。殺したいくらいだ」
「ゃ……だ……」
「そんなことしないよ。心配させてごめんね」
「んんっ……っ!」
今度は貪り尽くすようなキスをされた。兄様の舌が、わたしの舌に深く絡みついてくる。流れ込んでくるのは、大量の唾液と兄様の熱。濃厚な嫉妬と狂おしいほどの愛が、まるで呪詛のようにわたしの身体に沁み込んでいく。
兄様が指を動かし始めた。じゅぶじゅぶと耳を塞ぎたくなるような音が広がる。ここは居間だ。両親やミレッタさんと会話し、兄様から勉強を教わった場所。そんなところで、わたしは兄様に犯されている。
快楽に身を任せた方が楽なのではないか、そんな心の声も聞こえてきた。
「んっ、ぁあ。や……っぁあっ!」
一度イったはずなのに、また熱が蓄積され始めている。
兄様の唇がわたしの耳に移動した。耳の縁を上唇と下唇で食んで、そのまま首筋に移動する。胸にまでくだると、丹念にねぶられた。何も出ないのに、ちゅうっ、と先端を吸われる。
「美味しい」
軽く歯を立てられ、足先にまで力が入った。
指の抽送が激しくなって、またナカがぎゅぅうと痙攣し、視界に白い星が飛んだ。
「あっ、あああっうっっ!!」
二度目の絶頂。
呂律が回らず、むせび泣くような喘ぎが漏れる。
出来るのは、首を振って兄様を拒絶することだけだった。
「…………やっぱりダメ、か」
兄様の呟きが聞こえて、下腹部の異物感が消える。
終わったかと、淡い期待を抱いたけれど。
秘唇に、指でも『雄』でもない、全く知らないものが宛がわれた。
「ルディが前に、俺に言った言葉を覚えてるかい? あげられるのは体だけで、心は彼と共にあるって」
「っぁ……」
何かが、ナカに入り込んでくる。
質量は雄と一緒かそれ以上で、圧迫感がわたしを襲う。
ただ、モノ以上にザラザラした表面がわたしの秘壁をこすりあげ、強烈な快楽をもたらした。
これじゃない。
わたしが欲しかったのはこれじゃないっ!
兄様にそれを伝えたいのに、身体が全然言う事聞かなかった。
「本当は心も欲しいんだよ。でもルディの心は彼のものなんだよね。そこは潔く認めるよ」
ふるふると首を振って、兄様に手を伸ばす。
「ま、って……──」
「だからね、きっと俺の事は憎いだろうけれど」
兄様が、ソレを膣内に押し込んでくる。
ごりゅっ、と、奥底にぶつかり、わたしは喉を反らして嬌声をもらした。
意識を失う前に見えた、レザニード兄様の顔は────
「カラダだけでも、俺にちょうだい……?」
心なしか、泣いているように見えた。
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【後書き】
次から最終章です。
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