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因縁編
13 愛撫と、上書き・前編*
しおりを挟む兄様はもとより薬の耐性をつけていて、あの程度の量では効かなかったらしい。
婚約解消の話を済ませ中庭に戻った兄様は、わたしがいないことにすぐ気付いてリリーさんに詰め寄ったという。リリーさんはわたしの居場所を教える事を条件に、兄様に寝室に移動するよう言ってきたという。
本来ならそこで、痺れ薬の効いた兄様と体を重ねるつもりだったのだろう。でも兄様に薬は効いていなくて、兄様はリリーさんを拒絶した。リリーさんは膝から崩れ落ちて、子どものようにわんわん泣いてしまったらしい。
そして、わたしを閉じ込めている場所を教えたそうだ。
兄様はすぐにわたしのもとへ駆けつけてくれた。
痺れ薬の効いていない兄様と違って、わたしはまだ体が上手く動かせない。わたしを横抱きにしたまま、兄様は伯爵家の馬車に近づいた。御者はたぶん驚いていただろうけれど、兄様が睨んで黙らせたみたいだ。
馬車に乗り込んだ瞬間、わたしの首筋に兄様が顔をうずめてきた。唇で食まれ、舌で舐められ、歯を立てられる。兄様の愛情を受けるのは随分久しぶりのはずなのに、身体は覚えているらしく、すぐに甘い声が迸る。
「………っあっ、あ」
いつの間にか、兄様によってブラウスのボタンが外され、完全に上半身が露になっていた。じっくりと上から下まで舐めるように見つめられ、羞恥に頬が染まる。
「『兄様』のときは何もしないんじゃ……っ?」
「上書きしてるだけ」
「それ、へり、くつ……じゃっ……っ」
「ルディが俺を怒らせるのがいけないんだよ。俺以外の男を目で追いかけたらダメって言ったはずだよね」
「そんなこと言われても……っ」
「しかもまた男に抱き込まれるなんて、ね。
ねえルディ、君はどれだけ俺を嫉妬させたら気が済むのかな」
「あれはわたしのせいじゃ……っんあ」
完全に怒ってる雰囲気の兄様が、わたしの鎖骨を甘噛みした。ちょっと痛い。兄様はすぐ痕をつけようとする。これがなかなか消えないのだ。監禁されたときにつけられたものも、全然消えなくて、しばらく部屋から出られなかった。
「見えるところにつけないでっ」
「見える場所につけるから意味があるんだよ」
「そ、んな……っ」
兄様はわたしの胸のふくらみ部分を舐め始めた。
「ねえ、どこ触られたんだい? ここ?」
舌はそのまま膨らみを這い、胸の先っぽを舌先がつつく。空いたもう片方の胸は兄様の大きな手で形がかわるほどに揉みこまれ、先端は指と指の間に挟まれ、ぐにぐにされる。
「ひぁ………っああっ!」
体が動かないから、快楽を受け流すところがない。
嬌声が大きくなり、唇を噛んで耐え忍ぶ。馬車だから騒音がかき消してくれると思うけれど、御者の人に聞かれたくなかった。
色々なところに舌を這わせながら「ここは?」と、聞いてくる兄様。舌先がお腹の筋を伝い、おへそまで下りてくる。兄様の手が、わたしの太ももの内側に触れていた。
「やだ……、そこ触らないで……っ」
「……………」
兄様が何かに気付いた。
白いタイツについたシミを、忌々しく見ている。
「今日は確か、ミレッタさんが夜まで帰ってこないよね」
「え…………」
「お風呂に入ろうか。洗ってあげるよ」
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