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23. 理不尽 ※
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夕飯を食べ終えて、眠る支度も整った後、私は、机の上に大量の紙を並べて頭を捻っていた。その中には先日作った授業計画書もある。
寝室の扉が開いた。少しだけ開いた扉の向こうで、寝衣姿のテオドールが驚いた顔をしていた。
「エリーナ?まだ起きてたのか」
「テオ、おかえりなさい」
あらかじめ今日は帰りが遅いと言っていたテオドールは、本当に遅くに帰ってきた。
「ごめんなさい。いま片付けるね」
「いいよ。キリのいいところまでやりたいだろ。何してたんだ?」
「えっと……孤児院で教える内容の精査というか、考え直さなきゃいけないかなって」
「まだ数回しかやってないのに見直すのか?」
「うん……。その、二人があんまり楽しそうじゃなくて」
「え?楽しくする必要はないだろ。強制的に縛り付けて教えてるわけじゃないし、十分な環境じゃないか?」
テオドールの反応は、マリアと一緒だった。通常であれば彼らが享受できないレベルの教育を無料で施してあげているという状態で、さらに彼らが楽しく過ごせるようにする、という考え方が理解できないらしい。
前世で学校に通っていた私には、先生たちができるだけ生徒が興味を持てるように様々な工夫を凝らすことが普通だった。
子どもたちが渋い顔をして悩んだり、退屈そうにしたりするよりも、出来た時の喜びを感じて、これから学ぶことに対してワクワクして欲しいと思うのだけど、私では力不足で実現できていない。
「ん……せめて、今やってることがもう少し生活に結びつくと思って欲しくて。実践的にしたつもりだけど、あまり使う機会がなさそうなの」
「それはそうだろうな。王都じゃ街中で文字を見る機会は沢山あるけど、別に文字なんか読めなくても生活に困らない。俺の村じゃ大人もほとんど読めなかったし、生きるだけなら文字はいらない」
「……」
この国の書籍は主に宗教、魔法、医療に関するもので、どこに権力が集中しているのかよく分かる。子どもたちにはあまり関係ない世界だ。唯一関係がありそうな教会の教えについても、大切な部分は暗誦できる。
私は、子どもたちの生活に密着した内容にすれば、文字に興味を持ってもらえると思っていた。しかしその考えが甘くて、生活に深く関わる内容にしてしまうと、それこそ文字なんか全くいらない。
信号機の赤青黄色の下に、わざわざ『止まれ、注意、進め』と書いてあるようなものだ。
「やっぱり、そうだよね。すぐ思いつくことじゃないから今日はもう寝るね。ありがとう」
テオドールは何か考えている様子だ。
「その二人って、文字は全部読めて書けるか?数字も?」
「一応」
「そうか。じゃあ、仕事を与えるのはどうかな」
「仕事?」
「来月王都の地図を刷新するための調査が始まるんだ。民間から補助してくれる奴を集めてて、予算に少し浮きがあるからまだ突っ込める」
「そんなことしていいの?」
「俺が責任者だから問題ないよ。ただ、使えない奴は雇わない。二週間後にテストするって伝えてくれるか」
「……うん!ありがとう」
確かに仕事に繋がると思えば、ただ机に向かうよりもかなり実践的になる。
テオドールは私が広げた紙の一枚に目を向けた。
「これ、孤児院の出納帳か?」
「そうだよ。お金に関することなら生活に関わるかと思って借りてみたの」
「へぇ。収入のここが子どもたちの仕事だよな?」
「うん」
「一人一日多くていくら稼げるか分かるか」
「ええと……軽作業が90ルイン、繕い物は早い子で120ルイン、ゴミ集めが150ルイン……だったかな」
「じゃあ、一週間で一月分稼がせてやるって伝えてくれ。やる気が変わるだろ」
「そんなに違うの?」
「ああ。誰でもできる作業と、限られた人間しかできない作業は価値が違う。自分が作業するんじゃなくて、他人を動かせるようになれば桁違いになるけどな」
テオドールは出納帳の写しを紙の束に戻した。
「アーノルド騎士団長が俺に文字を教えてくれたのは、一兵卒から上がるのに必須だったからだ。それに貴族のくだらないマナーや教養も叩き込まれてる。そうすれば、俺がつまんないことで周りから足を引っ張られなくて済むって言ってたよ。やるべきことに集中したいなら、それ以外の余計なことに文句をつけさせるなって」
テオドールは過去を懐かしむように笑った。
「教え方はくそみたいだったけど、そのおかげで俺は出自くらいしか難癖をつけられなくなった。自分ができることが増えれば、身を置ける環境ががらっと変わるだろ。それを教えてやれたらいいんじゃないかな。楽しむのとはちょっと違うけど、あんたの与えてくれる時間をもっと意味のあるものにしたいと思うはずだよ」
考えもしていなかったことを言われて、ポカンとしてしまった。テオドールは、与えてもらった物を次の世代に与えたいという私の夢をもう実現している。
私がやりたいことを汲み取って、想像したこともなかった方法で助けてくれることに本当に驚いてしまう。惜しみなく手を差し伸べてくれることにまだ少し申し訳なさはあるけれど、嬉しくて胸がじんとした。
「テオ、ありがとう……ほんとにすごいね。アーノルド騎士団長がテオにどんどん仕事を回したくなるのも分かるかも」
「は……?」
テオドールは少し複雑そうな顔をして、机に手を置いてずいっと顔を近づけて来た。
「騎士団長に仕事を増やされるとちょっとイラつくけど、あんたなら許すよ。見直したか?」
「えっ」
見直すどころか、かなり最初からテオドールのことはすごいと思っている。無駄に顔が近くてドキドキしてしまう。
少し前に、私の存在がテオドールにとって迷惑じゃないということを丁寧に教えられた。彼は、卑屈で優しさを受け入れられない私を怒って、認めるしかない状態にした。テオドールは私を憎んでおらず、そばにいても良いという言葉をそのまま受け止めて良いと実感した時、胸が苦しくて、思わず涙が出てしまった。
私はそれを勝手に愛の言葉のように受け取って、自分がそのまま身を委ねようとしていたことに気付いてすごく恥ずかしくなった。ただ、それが私の気持ちと種類が違っていても、テオドールが私を大切に思ってくれていることは否定しようがないことだ。
そう思うようになってから、近くにいると今まで以上に胸が高鳴ってしまう。
「さ、最初からちゃんと尊敬してるよ。あの…テオ、近い……」
私が顔を逸らすと、テオドールは意外にもすっと引いた。テオドールは優しくて人が良いけれど時々すごく意地悪になるから、あっさり引かれて少し拍子抜けだ。
「この前恥ずかしいところをみられたから、上書きしたかったんだ。良かった」
この前、というのはテオドールの疲れが限界に達して甘えてきたことだろうか。あの時は驚いたけど、全然嫌じゃなかった。
「恥ずかしくないよ。……可愛かったな」
「……は?全然嬉しくない。やめろ、思い出すな。この話は終わりだ」
テオドールは私の頭の上の空気を乱すように手を動かした。本当に嫌そうな顔をしているのがおかしくて、つい笑ってしまって睨まれた。
*
テオドールの教えてくれたことを孤児院の本人たちに伝えると、すごくやる気が出たみたいだった。周りの子どもたちも文字に興味を持ってくれたようで、遊びの時間に代わりに学びたいと言ってくれる子も出てきた。
私はテオドールに資料をもらい、当日できるだけ他の大人の役に立てるよう、テストと練習用の問題を作成することにした。
先日と同じく寝る支度が終わっている状態で、テオドールにも一緒に内容を見てもらうことになった。迷惑とそうじゃないことの線引きが難しくて少し躊躇ってしまったけど、お願いしてみたら快く引き受けてくれてほっとする。
「テオが担当するってことは、地図を作るのって魔法を使うお仕事なの?」
疑問に思っていたことを聞くと、テオドールは苦い顔をした。
「いや……地図の修正は本当は第二騎士団の管轄なんだけど、あいつらが作ったやつが酷い出来で。騎士団長にこんなものなくても同じだし自分で手作業で作った方がマシって言っちゃったんだよ」
「そうなんだ」
あとはなんとなく想像できる気がした。テオドールはため息をついた。
「第三は今まで前線に出てることが多くて、俺も含めてあまり王都には馴染みのないやつが多いんだ。平時だからそれじゃいけないってことで、騎士団長が俺たちの勉強のために第三騎士団に任せてもらえないかありがたく交渉してくれて……今だよ。しかも、毎年ちょっとずつ改定すればよかっただけなのに、全部やり直しになった」
「た、大変だね……これから毎年やるの?」
テオドールは、私が作ったテストの内容と実際の資料を比べながら、修正した方が良いところにメモ書きをしている。目を伏せて書き物をしている姿は、いつもの雰囲気とも隊服を着ているときとも違い、じっと見たくなってしまう。
「いやー……ここまで大規模にはもうやらないな。ただ、修正作業は第二騎士団も抱えたい仕事じゃないから、来年も戻せないだろうな。こんなん後任に残せないし、今は作業だけ頼める商工会を探してる。……やらかしたよ。地図が酷すぎて、あの人の前で人の仕事にケチつけちゃだめだって忘れてた」
テオドールはもう一度ため息をついた。その様子がなんだか可愛くて頬が緩んでしまう。寝る前は前髪を下ろしているから、それもあって余計に幼く見える。
テオドールは私にテストの問題用紙を差し出して、眉を顰めた。
「……エリーナ、また子ども達を見るときと同じ顔してる」
テオドールが不満そうに呟くので、私は慌てて首を振った。こんな気持ちはテオドール以外に向けたことなどないのに、なにか勘違いをしているみたいだ。
「そんなことないよ。テオのことかっこいいと思ってる。本当に頼りになるし」
「……」
不満気に目を細めたテオドールが、私の頬に手を当てて、両側に引っ張った。
「いたっ……!な、なにするの……んっ」
不意打ちで唇が重なり、テオドールの舌が私の唇を軽く舐めた。口が離れると、真剣な顔にじっと見つめられて、『昨日したよ』という言葉が出てこなくなってしまった。
「目が菫色に戻ってる」
「えっ?!う、うそ……!」
先程、寝室に来る前に鏡を見た時にはまだ緑色を帯びていた。魔法をたくさん練習するようになってから、色が戻るのがすごく早くなっている気がする。
ただの練習なのにテオドールに負担がかかるなんて申し訳なく、練習を控えていたら気付かれてしまった。結局、魔法はいつか役に立つから遠慮しないで続けたほうが良いと言われ元のペースに戻っている。孤児院の文字の話を例に出されたら、なにも言えなくなってしまった。
慌てて作りかけの答案用紙を机に置いて、手鏡を確認しようとしたら、テオドールがサイドテーブルのランプを消してしまった。腕を引かれて、後ろから抱きしめられた。
「あっ……!」
肩の寝衣の襟ぎりぎりのところをちゅう、と吸われて、ひくっと身体が跳ねた。そのまま、湿った舌先が私の首を耳のほうまですすす、と伝っていくと、それに併せて下から湧き上がるような快感に身体が震えてしまう。
エリーナの身体が感じやすいのはもちろん大きく影響しているとしても、私自身がテオドールの一挙一動に乱されてしまっている。
自分がいやらしいという事実は無視できなくて、いつもどこかに罪悪感がある。でも、これが私がテオドールを負担なく受け入れられるようにという気遣いと優しさであるのも分かっていて、今は羞恥からくる拒絶をなんとか抑えようとしている。
「ふっ、あ……!」
テオドールの指が、寝衣越しに胸に沈んだ。指の一本が、すっと円を描くように、固くなったところの周りをなぞられて、鳥肌が立つ。
(む、むり……!)
出来るだけ拒否しないようにしなきゃと思っても、結構な頻度でやりすぎだと感じる。正直そんなに丁寧に解されなくても、もう身体は蕩けている。
ちゅ、ちゅ、と音を立て背中にキスされると、ぞくぞくして腰が抜けてしまう。
「テ、テオ……やめ、……んぁっ!た、立てなく、なっちゃう……」
抱きしめられたまま、体重がかかってくる。力の抜けた身体ではその重さに耐えきれず、寝台に片膝をつくとさらにぐっとのしかかってこられて、うつ伏せで倒れ込んだ。胸が潰れてちょっと痛い。
「ちょっ……」
驚いて文句を言おうとしたのに、足の間にテオの硬くなったところを押し付けられて、息が詰まって何も言えなかった。
「……っ!!」
布越しにぐりぐり押し付けられて、その間にも肩と首筋に何度も何度も口付けされる。のしかかられていることも苦しくて、助けを求めるように手を動かすと上から手のひらが重なり、ぎゅっと握れて逃げられない。テオドールの腕の中に閉じ込められている。
舌が耳の中に入ってきて、ぴちゃ、と音を立てた。
「あっ……!」
性急な動きに翻弄されて震えながら、逃れられない快感に耐える。いつもはもう少し声もかけてくれるし、顔を見ることもできるし、キスで身体の緊張を解いてくれるのに、知らない人に抱かれているみたいだ。
「エリーナ」
「ひっ、ぅ……!」
吐息と共に名前を呼ばれて、大袈裟に反応してしまった。
「なぁ……こんなことされてても、俺のこと可愛いと思うのか?」
「ち、が……そんなこと、言ってな…っあ!」
またぐっと下半身を押し付けられた。
(すごい恨まれてる……!)
まさかそんなことで怒っていると思わなくて、戸惑いと、少し呆れも混じった気持ちになる。この前は口に出したけど、今日は言ってない。根に持ちすぎじゃないだろうか。
少しだけテオドールの身体が浮いて、ほっとしたのも束の間、私を解放してくれた訳ではなく、慣らさないまま性急な動きでテオドール自身に身体を貫かれた。
「~~~っ!!」
それでも、先端の太いところが通る時に少し違和感があっただけで、私の身体はその熱量を抵抗もなく受け入れた。ぬるっと引き抜かれて、ゆっくりまた挿入される。いつもと当たる場所が違い、慣れない刺激にぞわぞわする。
「ひっ、あ……っ」
遠慮なくかかってくる体重と、ゆっくり追い詰められるような刺激で苦しくて、すぐに息が上がってしまう。
「はぁ……」
テオドールの息が耳元をくすぐった。両手を押さえられてのしかかられていては身動きも取れない。キスしたり胸を触られたりしないと意識を逸らすものがなく、繋がったところの感触だけを強く感じてしまう。じわじわ擦れて、熱い。
「ああ……っ!」
ぞくぞくっと身体が震え、その感覚に押し出されるように声が漏れる。ずる、と引かれて、ゆっくりまた挿入ってくる。全然激しくないのに、どんどんその鈍い刺激のことしか考えられなくなっていく。
「っあ、ん、~~~っ!」
ずっと変わらないゆったりとした動きなのに突然身体が達してしまった。テオドールの腕の中に閉じ込められて、小さく震えるしかなくて、すごく情けなくて恥ずかしい。
「……っあ!」
同じようにゆっくり引き抜かれて、今度は強く奥を穿たれた。そのまま、遠慮のない性急な動きになっていく。
「えっ?!な、ひっ……え、待って……!」
着いていけなくて、身体を起こそうとしたらそれを咎めるように奥にぐっと入り込んできた。
「ああっ!」
「逃げるな」
「っ……!!」
腰を掴まれて、ぐいっと上にあげられる。お尻を突き出すような格好になって、恥ずかしすぎて逃げたいけれど許してもらえない。後ろからの方がテオドールは身体の自由が効いて動きやすいようで、動きがどんどん激しくなる。腰を掴む手にも遠慮がない。
「やんっ…あっ、強、いよ……だめ、それ……!」
「はぁ、くそ…灯り、消さなきゃ良かった……」
揺れに合わせて、パンッと肌がぶつかる音と、柔らかいものが足の間に当たる感触がする。すごく恥ずかしい格好をしているのに、気持ち良くてそれどころじゃなくなってくる。ぐいっとさらに高く腰を持ち上げられて、上から押しつぶされると勘違いするくらいに最奥を犯される。
「あああっ!テオっ…や、苦し……っんああ!」
忘れた頃に背中にキスされて、それと一緒に挿入が深くなる。
「っ…あ……」
テオの手が離れて、私の腰を強く鷲掴みにした。それと同時に中で質量がどくんと上がったのが分かって、魔力の波が私の身体に満ちる。全て終わると、テオドールがため息と共に私の身体にまたのしかかってきた。
「重いよ……テオ……」
「ん……」
テオドールはのそのそ身体を起こして、私の横にごろんと寝転んだ。そのまま私の額あたりに触れて、髪を耳にかける。暗くて何も見えないけど、器用に私の場所を探り当てているようだ。
「ごめん……ちょっと乱暴だった。怒ってるか?」
性急で力強かった行為の後で、そんな風に心許ない声を出すのはずるいと思う。
「怒ってないよ」
「……」
私が答えると、テオドールは私の指先に触れた。私よりも大きな手をしてるのに、遠慮するように指先だけ握っている。指が絡んで、それからぎゅっと力が籠った。結んだり開いたりして、指がくすぐったく触れる。
すごく甘えられている感じがする。
(可愛いって言われたくないなら、可愛いことしないで……!)
甘えたいなら甘えればいいのに、言っていることとやっていることが一致していない。それで私が可愛いと思ってしまったら怒るなんてすごく理不尽だ。
今私が頭を撫でたらどんな反応をするのか少しだけ気になったけれど、寝た子を起こす勇気はなくて、手を握り返すだけにしておいた。
寝室の扉が開いた。少しだけ開いた扉の向こうで、寝衣姿のテオドールが驚いた顔をしていた。
「エリーナ?まだ起きてたのか」
「テオ、おかえりなさい」
あらかじめ今日は帰りが遅いと言っていたテオドールは、本当に遅くに帰ってきた。
「ごめんなさい。いま片付けるね」
「いいよ。キリのいいところまでやりたいだろ。何してたんだ?」
「えっと……孤児院で教える内容の精査というか、考え直さなきゃいけないかなって」
「まだ数回しかやってないのに見直すのか?」
「うん……。その、二人があんまり楽しそうじゃなくて」
「え?楽しくする必要はないだろ。強制的に縛り付けて教えてるわけじゃないし、十分な環境じゃないか?」
テオドールの反応は、マリアと一緒だった。通常であれば彼らが享受できないレベルの教育を無料で施してあげているという状態で、さらに彼らが楽しく過ごせるようにする、という考え方が理解できないらしい。
前世で学校に通っていた私には、先生たちができるだけ生徒が興味を持てるように様々な工夫を凝らすことが普通だった。
子どもたちが渋い顔をして悩んだり、退屈そうにしたりするよりも、出来た時の喜びを感じて、これから学ぶことに対してワクワクして欲しいと思うのだけど、私では力不足で実現できていない。
「ん……せめて、今やってることがもう少し生活に結びつくと思って欲しくて。実践的にしたつもりだけど、あまり使う機会がなさそうなの」
「それはそうだろうな。王都じゃ街中で文字を見る機会は沢山あるけど、別に文字なんか読めなくても生活に困らない。俺の村じゃ大人もほとんど読めなかったし、生きるだけなら文字はいらない」
「……」
この国の書籍は主に宗教、魔法、医療に関するもので、どこに権力が集中しているのかよく分かる。子どもたちにはあまり関係ない世界だ。唯一関係がありそうな教会の教えについても、大切な部分は暗誦できる。
私は、子どもたちの生活に密着した内容にすれば、文字に興味を持ってもらえると思っていた。しかしその考えが甘くて、生活に深く関わる内容にしてしまうと、それこそ文字なんか全くいらない。
信号機の赤青黄色の下に、わざわざ『止まれ、注意、進め』と書いてあるようなものだ。
「やっぱり、そうだよね。すぐ思いつくことじゃないから今日はもう寝るね。ありがとう」
テオドールは何か考えている様子だ。
「その二人って、文字は全部読めて書けるか?数字も?」
「一応」
「そうか。じゃあ、仕事を与えるのはどうかな」
「仕事?」
「来月王都の地図を刷新するための調査が始まるんだ。民間から補助してくれる奴を集めてて、予算に少し浮きがあるからまだ突っ込める」
「そんなことしていいの?」
「俺が責任者だから問題ないよ。ただ、使えない奴は雇わない。二週間後にテストするって伝えてくれるか」
「……うん!ありがとう」
確かに仕事に繋がると思えば、ただ机に向かうよりもかなり実践的になる。
テオドールは私が広げた紙の一枚に目を向けた。
「これ、孤児院の出納帳か?」
「そうだよ。お金に関することなら生活に関わるかと思って借りてみたの」
「へぇ。収入のここが子どもたちの仕事だよな?」
「うん」
「一人一日多くていくら稼げるか分かるか」
「ええと……軽作業が90ルイン、繕い物は早い子で120ルイン、ゴミ集めが150ルイン……だったかな」
「じゃあ、一週間で一月分稼がせてやるって伝えてくれ。やる気が変わるだろ」
「そんなに違うの?」
「ああ。誰でもできる作業と、限られた人間しかできない作業は価値が違う。自分が作業するんじゃなくて、他人を動かせるようになれば桁違いになるけどな」
テオドールは出納帳の写しを紙の束に戻した。
「アーノルド騎士団長が俺に文字を教えてくれたのは、一兵卒から上がるのに必須だったからだ。それに貴族のくだらないマナーや教養も叩き込まれてる。そうすれば、俺がつまんないことで周りから足を引っ張られなくて済むって言ってたよ。やるべきことに集中したいなら、それ以外の余計なことに文句をつけさせるなって」
テオドールは過去を懐かしむように笑った。
「教え方はくそみたいだったけど、そのおかげで俺は出自くらいしか難癖をつけられなくなった。自分ができることが増えれば、身を置ける環境ががらっと変わるだろ。それを教えてやれたらいいんじゃないかな。楽しむのとはちょっと違うけど、あんたの与えてくれる時間をもっと意味のあるものにしたいと思うはずだよ」
考えもしていなかったことを言われて、ポカンとしてしまった。テオドールは、与えてもらった物を次の世代に与えたいという私の夢をもう実現している。
私がやりたいことを汲み取って、想像したこともなかった方法で助けてくれることに本当に驚いてしまう。惜しみなく手を差し伸べてくれることにまだ少し申し訳なさはあるけれど、嬉しくて胸がじんとした。
「テオ、ありがとう……ほんとにすごいね。アーノルド騎士団長がテオにどんどん仕事を回したくなるのも分かるかも」
「は……?」
テオドールは少し複雑そうな顔をして、机に手を置いてずいっと顔を近づけて来た。
「騎士団長に仕事を増やされるとちょっとイラつくけど、あんたなら許すよ。見直したか?」
「えっ」
見直すどころか、かなり最初からテオドールのことはすごいと思っている。無駄に顔が近くてドキドキしてしまう。
少し前に、私の存在がテオドールにとって迷惑じゃないということを丁寧に教えられた。彼は、卑屈で優しさを受け入れられない私を怒って、認めるしかない状態にした。テオドールは私を憎んでおらず、そばにいても良いという言葉をそのまま受け止めて良いと実感した時、胸が苦しくて、思わず涙が出てしまった。
私はそれを勝手に愛の言葉のように受け取って、自分がそのまま身を委ねようとしていたことに気付いてすごく恥ずかしくなった。ただ、それが私の気持ちと種類が違っていても、テオドールが私を大切に思ってくれていることは否定しようがないことだ。
そう思うようになってから、近くにいると今まで以上に胸が高鳴ってしまう。
「さ、最初からちゃんと尊敬してるよ。あの…テオ、近い……」
私が顔を逸らすと、テオドールは意外にもすっと引いた。テオドールは優しくて人が良いけれど時々すごく意地悪になるから、あっさり引かれて少し拍子抜けだ。
「この前恥ずかしいところをみられたから、上書きしたかったんだ。良かった」
この前、というのはテオドールの疲れが限界に達して甘えてきたことだろうか。あの時は驚いたけど、全然嫌じゃなかった。
「恥ずかしくないよ。……可愛かったな」
「……は?全然嬉しくない。やめろ、思い出すな。この話は終わりだ」
テオドールは私の頭の上の空気を乱すように手を動かした。本当に嫌そうな顔をしているのがおかしくて、つい笑ってしまって睨まれた。
*
テオドールの教えてくれたことを孤児院の本人たちに伝えると、すごくやる気が出たみたいだった。周りの子どもたちも文字に興味を持ってくれたようで、遊びの時間に代わりに学びたいと言ってくれる子も出てきた。
私はテオドールに資料をもらい、当日できるだけ他の大人の役に立てるよう、テストと練習用の問題を作成することにした。
先日と同じく寝る支度が終わっている状態で、テオドールにも一緒に内容を見てもらうことになった。迷惑とそうじゃないことの線引きが難しくて少し躊躇ってしまったけど、お願いしてみたら快く引き受けてくれてほっとする。
「テオが担当するってことは、地図を作るのって魔法を使うお仕事なの?」
疑問に思っていたことを聞くと、テオドールは苦い顔をした。
「いや……地図の修正は本当は第二騎士団の管轄なんだけど、あいつらが作ったやつが酷い出来で。騎士団長にこんなものなくても同じだし自分で手作業で作った方がマシって言っちゃったんだよ」
「そうなんだ」
あとはなんとなく想像できる気がした。テオドールはため息をついた。
「第三は今まで前線に出てることが多くて、俺も含めてあまり王都には馴染みのないやつが多いんだ。平時だからそれじゃいけないってことで、騎士団長が俺たちの勉強のために第三騎士団に任せてもらえないかありがたく交渉してくれて……今だよ。しかも、毎年ちょっとずつ改定すればよかっただけなのに、全部やり直しになった」
「た、大変だね……これから毎年やるの?」
テオドールは、私が作ったテストの内容と実際の資料を比べながら、修正した方が良いところにメモ書きをしている。目を伏せて書き物をしている姿は、いつもの雰囲気とも隊服を着ているときとも違い、じっと見たくなってしまう。
「いやー……ここまで大規模にはもうやらないな。ただ、修正作業は第二騎士団も抱えたい仕事じゃないから、来年も戻せないだろうな。こんなん後任に残せないし、今は作業だけ頼める商工会を探してる。……やらかしたよ。地図が酷すぎて、あの人の前で人の仕事にケチつけちゃだめだって忘れてた」
テオドールはもう一度ため息をついた。その様子がなんだか可愛くて頬が緩んでしまう。寝る前は前髪を下ろしているから、それもあって余計に幼く見える。
テオドールは私にテストの問題用紙を差し出して、眉を顰めた。
「……エリーナ、また子ども達を見るときと同じ顔してる」
テオドールが不満そうに呟くので、私は慌てて首を振った。こんな気持ちはテオドール以外に向けたことなどないのに、なにか勘違いをしているみたいだ。
「そんなことないよ。テオのことかっこいいと思ってる。本当に頼りになるし」
「……」
不満気に目を細めたテオドールが、私の頬に手を当てて、両側に引っ張った。
「いたっ……!な、なにするの……んっ」
不意打ちで唇が重なり、テオドールの舌が私の唇を軽く舐めた。口が離れると、真剣な顔にじっと見つめられて、『昨日したよ』という言葉が出てこなくなってしまった。
「目が菫色に戻ってる」
「えっ?!う、うそ……!」
先程、寝室に来る前に鏡を見た時にはまだ緑色を帯びていた。魔法をたくさん練習するようになってから、色が戻るのがすごく早くなっている気がする。
ただの練習なのにテオドールに負担がかかるなんて申し訳なく、練習を控えていたら気付かれてしまった。結局、魔法はいつか役に立つから遠慮しないで続けたほうが良いと言われ元のペースに戻っている。孤児院の文字の話を例に出されたら、なにも言えなくなってしまった。
慌てて作りかけの答案用紙を机に置いて、手鏡を確認しようとしたら、テオドールがサイドテーブルのランプを消してしまった。腕を引かれて、後ろから抱きしめられた。
「あっ……!」
肩の寝衣の襟ぎりぎりのところをちゅう、と吸われて、ひくっと身体が跳ねた。そのまま、湿った舌先が私の首を耳のほうまですすす、と伝っていくと、それに併せて下から湧き上がるような快感に身体が震えてしまう。
エリーナの身体が感じやすいのはもちろん大きく影響しているとしても、私自身がテオドールの一挙一動に乱されてしまっている。
自分がいやらしいという事実は無視できなくて、いつもどこかに罪悪感がある。でも、これが私がテオドールを負担なく受け入れられるようにという気遣いと優しさであるのも分かっていて、今は羞恥からくる拒絶をなんとか抑えようとしている。
「ふっ、あ……!」
テオドールの指が、寝衣越しに胸に沈んだ。指の一本が、すっと円を描くように、固くなったところの周りをなぞられて、鳥肌が立つ。
(む、むり……!)
出来るだけ拒否しないようにしなきゃと思っても、結構な頻度でやりすぎだと感じる。正直そんなに丁寧に解されなくても、もう身体は蕩けている。
ちゅ、ちゅ、と音を立て背中にキスされると、ぞくぞくして腰が抜けてしまう。
「テ、テオ……やめ、……んぁっ!た、立てなく、なっちゃう……」
抱きしめられたまま、体重がかかってくる。力の抜けた身体ではその重さに耐えきれず、寝台に片膝をつくとさらにぐっとのしかかってこられて、うつ伏せで倒れ込んだ。胸が潰れてちょっと痛い。
「ちょっ……」
驚いて文句を言おうとしたのに、足の間にテオの硬くなったところを押し付けられて、息が詰まって何も言えなかった。
「……っ!!」
布越しにぐりぐり押し付けられて、その間にも肩と首筋に何度も何度も口付けされる。のしかかられていることも苦しくて、助けを求めるように手を動かすと上から手のひらが重なり、ぎゅっと握れて逃げられない。テオドールの腕の中に閉じ込められている。
舌が耳の中に入ってきて、ぴちゃ、と音を立てた。
「あっ……!」
性急な動きに翻弄されて震えながら、逃れられない快感に耐える。いつもはもう少し声もかけてくれるし、顔を見ることもできるし、キスで身体の緊張を解いてくれるのに、知らない人に抱かれているみたいだ。
「エリーナ」
「ひっ、ぅ……!」
吐息と共に名前を呼ばれて、大袈裟に反応してしまった。
「なぁ……こんなことされてても、俺のこと可愛いと思うのか?」
「ち、が……そんなこと、言ってな…っあ!」
またぐっと下半身を押し付けられた。
(すごい恨まれてる……!)
まさかそんなことで怒っていると思わなくて、戸惑いと、少し呆れも混じった気持ちになる。この前は口に出したけど、今日は言ってない。根に持ちすぎじゃないだろうか。
少しだけテオドールの身体が浮いて、ほっとしたのも束の間、私を解放してくれた訳ではなく、慣らさないまま性急な動きでテオドール自身に身体を貫かれた。
「~~~っ!!」
それでも、先端の太いところが通る時に少し違和感があっただけで、私の身体はその熱量を抵抗もなく受け入れた。ぬるっと引き抜かれて、ゆっくりまた挿入される。いつもと当たる場所が違い、慣れない刺激にぞわぞわする。
「ひっ、あ……っ」
遠慮なくかかってくる体重と、ゆっくり追い詰められるような刺激で苦しくて、すぐに息が上がってしまう。
「はぁ……」
テオドールの息が耳元をくすぐった。両手を押さえられてのしかかられていては身動きも取れない。キスしたり胸を触られたりしないと意識を逸らすものがなく、繋がったところの感触だけを強く感じてしまう。じわじわ擦れて、熱い。
「ああ……っ!」
ぞくぞくっと身体が震え、その感覚に押し出されるように声が漏れる。ずる、と引かれて、ゆっくりまた挿入ってくる。全然激しくないのに、どんどんその鈍い刺激のことしか考えられなくなっていく。
「っあ、ん、~~~っ!」
ずっと変わらないゆったりとした動きなのに突然身体が達してしまった。テオドールの腕の中に閉じ込められて、小さく震えるしかなくて、すごく情けなくて恥ずかしい。
「……っあ!」
同じようにゆっくり引き抜かれて、今度は強く奥を穿たれた。そのまま、遠慮のない性急な動きになっていく。
「えっ?!な、ひっ……え、待って……!」
着いていけなくて、身体を起こそうとしたらそれを咎めるように奥にぐっと入り込んできた。
「ああっ!」
「逃げるな」
「っ……!!」
腰を掴まれて、ぐいっと上にあげられる。お尻を突き出すような格好になって、恥ずかしすぎて逃げたいけれど許してもらえない。後ろからの方がテオドールは身体の自由が効いて動きやすいようで、動きがどんどん激しくなる。腰を掴む手にも遠慮がない。
「やんっ…あっ、強、いよ……だめ、それ……!」
「はぁ、くそ…灯り、消さなきゃ良かった……」
揺れに合わせて、パンッと肌がぶつかる音と、柔らかいものが足の間に当たる感触がする。すごく恥ずかしい格好をしているのに、気持ち良くてそれどころじゃなくなってくる。ぐいっとさらに高く腰を持ち上げられて、上から押しつぶされると勘違いするくらいに最奥を犯される。
「あああっ!テオっ…や、苦し……っんああ!」
忘れた頃に背中にキスされて、それと一緒に挿入が深くなる。
「っ…あ……」
テオの手が離れて、私の腰を強く鷲掴みにした。それと同時に中で質量がどくんと上がったのが分かって、魔力の波が私の身体に満ちる。全て終わると、テオドールがため息と共に私の身体にまたのしかかってきた。
「重いよ……テオ……」
「ん……」
テオドールはのそのそ身体を起こして、私の横にごろんと寝転んだ。そのまま私の額あたりに触れて、髪を耳にかける。暗くて何も見えないけど、器用に私の場所を探り当てているようだ。
「ごめん……ちょっと乱暴だった。怒ってるか?」
性急で力強かった行為の後で、そんな風に心許ない声を出すのはずるいと思う。
「怒ってないよ」
「……」
私が答えると、テオドールは私の指先に触れた。私よりも大きな手をしてるのに、遠慮するように指先だけ握っている。指が絡んで、それからぎゅっと力が籠った。結んだり開いたりして、指がくすぐったく触れる。
すごく甘えられている感じがする。
(可愛いって言われたくないなら、可愛いことしないで……!)
甘えたいなら甘えればいいのに、言っていることとやっていることが一致していない。それで私が可愛いと思ってしまったら怒るなんてすごく理不尽だ。
今私が頭を撫でたらどんな反応をするのか少しだけ気になったけれど、寝た子を起こす勇気はなくて、手を握り返すだけにしておいた。
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