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第三話
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次の日、マチルダが目を覚ますと、ベッドには誰もいなかった。
いつもなら目を覚ますと必ずカイルが隣にいるが、昨日の夜、カイルはリビングにあるソファで眠ったからだ。
呪いで恋心がリセットされる可能性があるから、隣で好きでもない男が寝ていて嫌な思いをしないように、というマチルダへの全くありがたくない気遣いを実行したのだった。
昨日は寂しくて泣いてしまいそうだったのに、今は、なぜそんな気持ちを抱いていたのかとても不思議だ。
大人なのだから一人で寝るくらいなんでもないことなのに。
マチルダはベッドから起き上がって、仕事のために身支度をした。髪を整え、化粧をしてからリビングに行くと、ソファで寝ているはずの夫はそこにはいなかった。
代わりに、ダイニングテーブルの上にメモ書きがある。
『おはよう。少し外出します。朝食はスープを作ってあります。夕方には帰ります。 カイル』
カイルの字は、本人の印象より少し雑なのだが、今日は随分几帳面に書いてある。
「スープ?」
キッチンに入ると、鍋の中にソーセージとキャベツ、ジャガイモの入ったミルクスープが用意されている。マチルダが一番好きな優しい味のスープだ。
早朝から出かけて忙しいのに、マチルダのために彼女の好きなものを作ってくれた。
マチルダは朝の身支度に時間がかかるから、普段から朝食はカイルが担当。夕飯は、仕事帰りにマチルダが買い物をして準備する。カイルは仕事に夢中になって、一日部屋から出ないこともある。そんな彼に、食欲をそそる香りで時間を教えてあげるのも、毎日のマチルダの楽しみである。
カイル自身はそれほど食欲旺盛ではないけれど、マチルダと一緒に食べるのは好きだという。美味しそうに食事してくれるのも、マチルダが食べている様子を見て嬉しそうに笑うところも、毎日一緒に食事をするだけで、マチルダのことをすごく嬉しい気持ちにしてくれる人だ。
(好き……!)
昨日夕食を一緒に食べていたときのカイルの笑顔を思い出して、マチルダは自分の胸がときめくのを感じた。それと同時に、今朝は一緒に食事できないことに気づいて、急に寂しくなってしまう。
行ってきますのキスもできずに仕事に行くなんて、それこそ結婚して以来、はじめてのことだ。
夕方までには戻ってくるということは、夕飯は一緒に食べられるはず。マチルダは今日はカイルが好きなものをたくさん作ろうと決めて仕事に出かけた。
*
「はぁ、いろいろ失敗しちゃった……」
夕方、マチルダは、玄関の扉を開く前に、深いため息をついた。
今の職場は勤め始めてから三年はたつので、日々の業務の基本はルーティーン。あまり失敗はしなくなっていたのに、今日は小さなミスを連発してしまった。
お釣りの計算間違えや、患者さんのカードをうっかり別の人に渡しそうになった。買い物をしたときにも、買い忘れに気づき、途中で折り返してもう一度買い物をしなければならなかった。
それもこれも、ことあるごとにカイルのことが頭に浮かんでしまって、そちらに気を取られるからである。ふわふわと浮き足立つような気持ちで、家に帰ったらカイルがいるのだと思ったら恥ずかしくなって、なんにも集中できない。
(困るわ。なんだか変なことも言っちゃいそうだし、呆れられちゃうかも)
まるで出会ったばかりのように、ちょっとしたことで心が乱れてしまう。カイルのことを想像するだけで浮き足立つ。実物に会ったらどうなってしまうのか。なんだか不安になって、マチルダは玄関の前で落ち着かない様子でうろうろしていた。
しばらくそうしていると、だんだん陽が落ちてくる。夕方の風を肌寒く感じて、マチルダはさすがに室内に入ろうと思ってドアノブに手をかけた。かちゃりとひねって、でも扉を開けられなくて、そのまま固まっていると、急に扉が押されて開いた。
「!」
「マチルダ⁉︎」
「カイル……!」
(本物だぁ~!)
マチルダは心の中で叫んだ。ちょっとびっくりして目を見開いたのが可愛い。日の暮れかけた空の下、彼の柔らかそうな薄茶の髪が、部屋の灯りに照らされて橙色に縁取られて見えるのがとても神秘的に見える。
このまま絵画として取っておきたいと思って見惚れていたら、カイルが腕を伸ばし、マチルダを抱きしめた。
「!」
「よかった。そろそろ探しに行こうかと思っていたんだ」
カイルはすぐに身体を離した。
「ああ、ごめん! 僕と一緒に住むのが嫌になってるかもしれないけど、薬を飲んでからもう一度考えてみて」
「薬?」
「うん。呪いのことはかけた本人に聞くしかないから、リリアーナ様に会ってきたよ。解除するための薬を作ってもらって……今日はその材料集めで出かけていたんだ」
マチルダは目を見開いた。
まさかこんなに早く解決されるとは思っていなかった。それに宮廷魔導士であるリリアーナに昨日今日でアポイントを取ることができるなんて、どういう縁なのだろうか。
そして、リリアーナ本人と話をしたなら、カイルはきっと知っているはず。
今回の呪いは、マチルダ本人が、リリアーナに頼んでかけてもらった呪いなのだと。
「ごめんなさい……」
マチルダの目に、意図せず涙が滲んだ。
泣けば許してもらえると思っているのかと、昔よく母や姉に呆れられたものだ。そうじゃない。言葉が出なくなってしまって、その代わり涙が出るのだと、そう言いたかったけど、それもうまく言えなくて。
慌てたりパニックなったり不安になったり、少し感情が乱れると、マチルダの瞳は濡れてしまう。
マチルダの瞳からぽろぽろ涙が落ちる。カイルは心配そうにマチルダの顔を覗き込んだ。
「どうしたの? 何かあった? 寒いからとりあえず中に入ろう」
カイルが手を引いて部屋の中に案内してくれる。
天使みたいに純粋で、可愛いマチルダ。マチルダは幼い頃からいつも周りの人にそう言われてきたのに、本当はそうじゃないと知ったら、カイルにどう思われるのか。
不安がマチルダの胸に溢れて、そのせいでもっと涙が出てきた。
マチルダはカイルに手を引かれてソファに腰掛けた。
「何か温かいものを飲む?」
マチルダを首を横に振った。カイルはマチルダの横に腰掛けた。マチルダの様子を窺いながら、ハンカチを取り出して彼女に差し出した。
「大丈夫? どうしたの?」
マチルダはハンカチを受け取ることができなくて、涙の滲んだ瞳でカイルを見つめた。
「リリアーナ様に会ったのなら、本当のことを聞いたでしょう?」
「本当のこと?」
「リリアーナ様がわたしに呪いをかけたんじゃなくて、わたしがそう頼んだんだって」
「!」
カイルが目を見開いた。
「それは、聞いてないな。リリアーナ様は僕に嘘をついたよ。……マチルダは、どうして呪いをかけてほしいと思ったの?」
カイルの声はいつもどおり落ち着いている。その顔にもマチルダを責めるつもりなど全くないと書いてある。
初めて会ったときと同じだ。職場でカイルの祖母の会計をしていたときに、隣から全く別の患者さんが怒った様子で話しかけてきて慌ててしまい、マチルダは自分が何をしていたのか分からなくなった。
カイルはその患者さんの話を整理して、相手は最近変更のあった会計制度を誤解して、急に自己負担が増えたことに怒っていたのだと解き明かしてくれた。
その話が落ち着くまで待って、まだ不安の残っていたマチルダに対して、「ゆっくりで大丈夫です」と言って、その言葉のとおり急かさずにいてくれた。
そのあとマチルダに、「お詫びにデートしてほしい」とか、「顔だけで仕事してるからそうなる」などと、前の職場で言われたような嫌味も言わずに、普通に挨拶をして、普通に帰っていった。そのことにすごく救われて、とても素敵な人だと思ったのだ。
「わたしの気持ちが、カイルにとって重いんじゃないかと思って、不安だったから」
カイルは榛色の瞳を瞬きするだけだ。マチルダは、今の言葉だけでは、マチルダの気持ちの全部ではないなと思った。
カイルにとって、負担になるのが心配なのは事実だけれど、マチルダを不安にしているのは、二人の気持ちの不平等さだから。
「カイルは、わたしのこと、そんなに好きじゃないのかもしれないって思うときがあるの。わたしがカイルのことを大好きだから、大事にしようとしてくれるけど、押されて結婚しただけで、わたしが何もしなかったら、カイルはわたしと結婚しようとも思わなかったんじゃないかって!」
不満をぶつけたって、何にもならないのは分かっている。嫌なことは、口に出さないほうがいい。目を向けないようにして、笑っていれば、いつか過ぎ去るものだから。
マチルダはそう思って常に笑顔でいることを心がけているけれど、一度蓋を開けてしまった不安は無視できない。
「カイルは、自分からわたしに好きって言ってくれたことが一回しかないもの。付き合い始めたときの一回だけ……!」
好きという言葉に見返りを期待していたわけではないけれど、自分からたくさん好きと口にすれば、いつかカイルも返してくれると期待してしまっていたのは否めない。
言葉で返事がなくても、カイルはマチルダと一緒にいると楽しそうだし、優しいし、とても大切にしてくれる。「好き」と言えば、「僕もだよ」と返してくれる。だから気持ちを疑っているわけではない。
それでもときどき、どうしても心がもやもやする。
「好きって言って」と言えば言ってくれるけれど、頼まないと言ってくれない。いつしかマチルダはそれも頼まなくなっていた。
「マチルダ……ごめん、そんなふうに不安にさせていたなんて、全然気づいてなかった」
カイルがマチルダの手を握った。
じっと見つめられると、マチルダは落ち着かない気持ちになって、つい手を振り払って顔を背けてしまう。
「マチルダ」
悲しそうな声が、マチルダの名前を呼ぶ。
「違うの。拒否したわけじゃなくて……! どきどきしちゃうから手は握らないでほしいの」
「え?」
「呪いのせいで、初めて会ったときみたいなの! 目が合うだけで心臓が飛び出ちゃいそう」
「目が合うだけで?」
マチルダは恨みがましくカイルを見つめた。こんなところでも温度差を感じる。
「そうよ。わたしはあなたが薬局で助けてくれたときからずっとそうよ。大好きなの」
手を握らないでほしいと言ったのに、カイルはもう一度マチルダの手に自分の手を重ねてきた。
「カ、カイル……!」
本当に恥ずかしくて、マチルダの瞳には涙が滲む。マチルダの心は今日改めて恋に落ちたばかりで、大好きな人と結婚しているという事実だけでいっぱいいっぱいだから、これ以上距離が縮んだら受け止めきれない。
「また僕に恋してくれたの?」
「毎日してるわ」
カイルは口元を緩めて、マチルダと距離を縮めた。
「リリアーナ様に報告しなくちゃね。本当に、呪いをかけても問題なかった」
「問題は大ありだわ! そうだ、薬……」
マチルダはカイルがリリアーナのもとを訪れて手に入れたという薬瓶に目を向けた。ソファから立ち上がろうとしたのに、カイルに阻まれてできなかった。彼の手がマチルダの腕と、頬を固定して、唇を奪った。
「んんっ!」
遠慮のない動きで、カイルの舌が唇を割って入ってくる。舌が絡むと、マチルダの腰が震えた。恋心はリセットされても、身体が覚えている快感の記憶はなくならないらしい。
「ぁ……んぅ」
キスを続けているうちに、ずるずるソファに沈み込んで、いつの間にか押し倒されている。マチルダはぼんやりした顔でカイルを見つめた。
カイルがマチルダの唇のはしについた唾液を指で拭う。
「今日好きになったばかりの男に抱かれるのは嫌?」
「えっ⁉︎」
マチルダはグリーンの瞳を瞬きした。夫婦の営みに誘われることは今までもあったけれど、ソファでこんなふうに始まることはなかった。
「い、嫌じゃないわ」
マチルダの顔が熱くなる。カイルはその様子を見て優しく目を細めると、もう一度口付けを繰り返した。
彼の手が、マチルダの足を撫でる。スカートの中に侵入して、ストッキングの上から焦らすように愛撫する。
そのうち手が離れて、次は上半身へ。薬局の制服のボタンを外して、その中にある白いシャツのボタンを器用に外していく。付き合い始めたときは彼には女性の服を脱がせた経験がなく、両手でもたもた外していたが、今はキスしながらでも片手で器用に外せるようになっている。
「カイル……んんっ」
唇が離れたその隙に、マチルダはカイルの名前を呼んだ。先をねだる甘えた声。カイルはそれに応えてマチルダの柔らかい胸を揉んで、下着をずらして色づいた場所を指で引っ掻いた。
「あっ!」
指で胸の先端をこすられると、マチルダの身体は抵抗できず震えた。口から甘い声が漏れ、快感に耐えきれなくなった身体がくねる。
「マチルダ、好きだよ」
「……!」
耳の近くで名前を呼ばれ、好きだと言われて、その間にも快楽を与えようとする手が止まらない。マチルダはよく分からなくなってきて、泣きそうだった。
「泣かないで」
カイルがマチルダの目元に滲んだ涙を舐めた。
「きゃあっ」
「しょっぱい」
そのまま、舌が耳元や首筋を舐める。一体何をされているんだろうと思ってしまう。
「あっ、んんっ……あぁ」
カイルが何かするたびに、身体がびくんと跳ね上がる。マチルダの身体からはどんどん力が抜けて、ソファにぐったり沈み込んだ。その拍子に、マチルダの片足がソファから落ちそうになった。
「ちょっと狭いね。ベッドに行こうか」
カイルが苦笑いする。いつもと同じ落ち着いた声だが、その瞳の奥の熱さに「待ちきれない」と言われているような気がして、マチルダの心臓は大きく跳ねた。
カイルはマチルダの膝下に手を差し込んだ。そのまま抱き上げるつもりらしいが、一瞬固まって、なんとか立ち上がる。
「だ、大丈夫?」
「……ん。室内で仕事ばっかりしてるとだめだな……」
一度体勢を立て直すようにしっかり身体を密着させたあと、カイルはマチルダを二人の寝室に運んだ。昨日はマチルダ一人で眠った場所を、今日はいつものように、二人で使うことになる。
ベッドに横たえられて、どきどきしながらカイルがシャツを脱ぐのを見守った。マチルダは中途半端に服を着た半裸状態で、このまま続きをするならと思って自分でシャツを脱ごうとしたが、カイルがその手を止めた。
「今日は僕にやらせて」
そのままシーツに手を縫い付けられるようにして、身体を重ねて口付けをする。うっとりした気持ちで目を閉じる。
カイルは唇を離すと、マチルダの頬を親指で撫でた。
「君に好きでいてもらうのを当たり前だと思っちゃだめだよね。君の気持ちが呪いで消えたとしても、呪いが解除されたあとも、どちらにしろ好きになってもらう努力をしなきゃいけないなって、改めて思ったよ。今までずっと、甘えていてごめんね」
「カイ……んぅっ!」
激しくなった口付けがマチルダの言葉を奪う。カイルの手のひらが太ももの内側を撫でて、そのまま下着の上から彼女の鼠蹊部に移動した。
下着の上から秘部をなぞり、すでに濡れている場所の上を何度も往復して、マチルダの期待を高める。
「はっ、あ……やっ……」
マチルダは自分の身体の奥から、愛液が滲み出るのを感じた。早くカイル自身で満たしてほしいという欲が湧き上がってくる。
「マチルダ、腰が動いちゃってるよ。可愛い。気持ちいい?」
カイルの声が興奮でうわずっている。浅くなった呼吸や、少し遠慮のなくなった動きからも、彼の余裕のなさが伝わってきて、マチルダは嬉しくてまた泣きそうな気持ちになってしまう。
言葉が出なくて、とにかく頷く。
「もっと気持ちよくしてあげる」
「ああっ」
下着が足から引き抜かれて、カイルの指が愛液をすくった。敏感な花芯を優しく刺激されて、マチルダは痺れるような刺激に震えた。
「あ、ん……カイルっ……やぁん……!」
カイルの指が動くたびに、水音がうるさくなる。
「あっ、あ、中も、触って……!」
刺激が欲しくてたまらなくなって、マチルダは素直に欲しいものをねだった。
「中も? 一緒にしてほしい?」
マチルダは頷いた。
「カイルの指で気持ちよくして」
「ん」
「んアッ!」
長い指が濡れた場所に遠慮なく侵入してくる。腰から這い上がってくるような強い快感が、マチルダの心と身体を満たした。
指でぐちゅぐちゅにされると、何も考えられなくなるくらい気持ちいい。
「あー……ッ!」
指のくれる快感に夢中になっていたら、急に足を左右に開かれた。カイルが足元にしゃがみこんで、先ほど指で愛撫して敏感になっている陰核を舌先でつついた。
「きゃっ! ぁっ、や……だめっ、汚いから……!」
カイルはマチルダの言葉を無視して、愛液と唾液で濡れた場所を舐めた。指の動きも止まらないから、マチルダの身体は彼女の意思と関係なく限界を迎えた。
「あっ、あっ、待って……イっちゃう……! ~~ッ!」
達した余韻で震える身体から、ゆっくり指が引き抜かれる。カイルの呼吸がすっかり浅くなっている。優しさの消えた顔で見つめられると、マチルダは緊張と期待で心臓が跳ねた。
カイルが服を脱ぐと、彼のものがマチルダを求めて勃ち上がっているのが分かってマチルダは嬉しくなった。言葉で好きと言われなくても、夫婦の営みをするときにはカイルがマチルダを求めていることがしっかり分かるから、マチルダは抱かれるのが好きだ。
カイルはマチルダに覆い被さるように口付けした。熱いものがマチルダの足に触れる。
「マチルダ、好きだよ」
「あっ!」
挿入の刺激と、言葉で、マチルダの身体は繋がっただけでまた果てた。
「動いてないのにイッちゃった?」
「あんっ、……だって、気持ちいいから……!」
「可愛い」
カイルがマチルダの耳元にキスした。ゆるゆる腰を動かしながら、何度も同じことをする。
「あっ、あ……カイル、好き……!」
カイルの口から重たい息が漏れた。
「僕も……じゃなかった。好きだよ。マチルダ、君のことが、本当に好きだ。初めて会ったときからずっと好きだよ」
思いがけない告白に、マチルダは目を見開いた。
薬局で出会ったときに好きになったのはマチルダだけだと思っていた。カイルは困っていたマチルダを助けてくれたけれど、マチルダはプロらしくない態度を取って慌てていただけだから。
もう少しその話を詳しく聞きたいと思ったが、抽送の動きが激しくなってしまって、マチルダは会話を続けることができなかった。
いつもなら目を覚ますと必ずカイルが隣にいるが、昨日の夜、カイルはリビングにあるソファで眠ったからだ。
呪いで恋心がリセットされる可能性があるから、隣で好きでもない男が寝ていて嫌な思いをしないように、というマチルダへの全くありがたくない気遣いを実行したのだった。
昨日は寂しくて泣いてしまいそうだったのに、今は、なぜそんな気持ちを抱いていたのかとても不思議だ。
大人なのだから一人で寝るくらいなんでもないことなのに。
マチルダはベッドから起き上がって、仕事のために身支度をした。髪を整え、化粧をしてからリビングに行くと、ソファで寝ているはずの夫はそこにはいなかった。
代わりに、ダイニングテーブルの上にメモ書きがある。
『おはよう。少し外出します。朝食はスープを作ってあります。夕方には帰ります。 カイル』
カイルの字は、本人の印象より少し雑なのだが、今日は随分几帳面に書いてある。
「スープ?」
キッチンに入ると、鍋の中にソーセージとキャベツ、ジャガイモの入ったミルクスープが用意されている。マチルダが一番好きな優しい味のスープだ。
早朝から出かけて忙しいのに、マチルダのために彼女の好きなものを作ってくれた。
マチルダは朝の身支度に時間がかかるから、普段から朝食はカイルが担当。夕飯は、仕事帰りにマチルダが買い物をして準備する。カイルは仕事に夢中になって、一日部屋から出ないこともある。そんな彼に、食欲をそそる香りで時間を教えてあげるのも、毎日のマチルダの楽しみである。
カイル自身はそれほど食欲旺盛ではないけれど、マチルダと一緒に食べるのは好きだという。美味しそうに食事してくれるのも、マチルダが食べている様子を見て嬉しそうに笑うところも、毎日一緒に食事をするだけで、マチルダのことをすごく嬉しい気持ちにしてくれる人だ。
(好き……!)
昨日夕食を一緒に食べていたときのカイルの笑顔を思い出して、マチルダは自分の胸がときめくのを感じた。それと同時に、今朝は一緒に食事できないことに気づいて、急に寂しくなってしまう。
行ってきますのキスもできずに仕事に行くなんて、それこそ結婚して以来、はじめてのことだ。
夕方までには戻ってくるということは、夕飯は一緒に食べられるはず。マチルダは今日はカイルが好きなものをたくさん作ろうと決めて仕事に出かけた。
*
「はぁ、いろいろ失敗しちゃった……」
夕方、マチルダは、玄関の扉を開く前に、深いため息をついた。
今の職場は勤め始めてから三年はたつので、日々の業務の基本はルーティーン。あまり失敗はしなくなっていたのに、今日は小さなミスを連発してしまった。
お釣りの計算間違えや、患者さんのカードをうっかり別の人に渡しそうになった。買い物をしたときにも、買い忘れに気づき、途中で折り返してもう一度買い物をしなければならなかった。
それもこれも、ことあるごとにカイルのことが頭に浮かんでしまって、そちらに気を取られるからである。ふわふわと浮き足立つような気持ちで、家に帰ったらカイルがいるのだと思ったら恥ずかしくなって、なんにも集中できない。
(困るわ。なんだか変なことも言っちゃいそうだし、呆れられちゃうかも)
まるで出会ったばかりのように、ちょっとしたことで心が乱れてしまう。カイルのことを想像するだけで浮き足立つ。実物に会ったらどうなってしまうのか。なんだか不安になって、マチルダは玄関の前で落ち着かない様子でうろうろしていた。
しばらくそうしていると、だんだん陽が落ちてくる。夕方の風を肌寒く感じて、マチルダはさすがに室内に入ろうと思ってドアノブに手をかけた。かちゃりとひねって、でも扉を開けられなくて、そのまま固まっていると、急に扉が押されて開いた。
「!」
「マチルダ⁉︎」
「カイル……!」
(本物だぁ~!)
マチルダは心の中で叫んだ。ちょっとびっくりして目を見開いたのが可愛い。日の暮れかけた空の下、彼の柔らかそうな薄茶の髪が、部屋の灯りに照らされて橙色に縁取られて見えるのがとても神秘的に見える。
このまま絵画として取っておきたいと思って見惚れていたら、カイルが腕を伸ばし、マチルダを抱きしめた。
「!」
「よかった。そろそろ探しに行こうかと思っていたんだ」
カイルはすぐに身体を離した。
「ああ、ごめん! 僕と一緒に住むのが嫌になってるかもしれないけど、薬を飲んでからもう一度考えてみて」
「薬?」
「うん。呪いのことはかけた本人に聞くしかないから、リリアーナ様に会ってきたよ。解除するための薬を作ってもらって……今日はその材料集めで出かけていたんだ」
マチルダは目を見開いた。
まさかこんなに早く解決されるとは思っていなかった。それに宮廷魔導士であるリリアーナに昨日今日でアポイントを取ることができるなんて、どういう縁なのだろうか。
そして、リリアーナ本人と話をしたなら、カイルはきっと知っているはず。
今回の呪いは、マチルダ本人が、リリアーナに頼んでかけてもらった呪いなのだと。
「ごめんなさい……」
マチルダの目に、意図せず涙が滲んだ。
泣けば許してもらえると思っているのかと、昔よく母や姉に呆れられたものだ。そうじゃない。言葉が出なくなってしまって、その代わり涙が出るのだと、そう言いたかったけど、それもうまく言えなくて。
慌てたりパニックなったり不安になったり、少し感情が乱れると、マチルダの瞳は濡れてしまう。
マチルダの瞳からぽろぽろ涙が落ちる。カイルは心配そうにマチルダの顔を覗き込んだ。
「どうしたの? 何かあった? 寒いからとりあえず中に入ろう」
カイルが手を引いて部屋の中に案内してくれる。
天使みたいに純粋で、可愛いマチルダ。マチルダは幼い頃からいつも周りの人にそう言われてきたのに、本当はそうじゃないと知ったら、カイルにどう思われるのか。
不安がマチルダの胸に溢れて、そのせいでもっと涙が出てきた。
マチルダはカイルに手を引かれてソファに腰掛けた。
「何か温かいものを飲む?」
マチルダを首を横に振った。カイルはマチルダの横に腰掛けた。マチルダの様子を窺いながら、ハンカチを取り出して彼女に差し出した。
「大丈夫? どうしたの?」
マチルダはハンカチを受け取ることができなくて、涙の滲んだ瞳でカイルを見つめた。
「リリアーナ様に会ったのなら、本当のことを聞いたでしょう?」
「本当のこと?」
「リリアーナ様がわたしに呪いをかけたんじゃなくて、わたしがそう頼んだんだって」
「!」
カイルが目を見開いた。
「それは、聞いてないな。リリアーナ様は僕に嘘をついたよ。……マチルダは、どうして呪いをかけてほしいと思ったの?」
カイルの声はいつもどおり落ち着いている。その顔にもマチルダを責めるつもりなど全くないと書いてある。
初めて会ったときと同じだ。職場でカイルの祖母の会計をしていたときに、隣から全く別の患者さんが怒った様子で話しかけてきて慌ててしまい、マチルダは自分が何をしていたのか分からなくなった。
カイルはその患者さんの話を整理して、相手は最近変更のあった会計制度を誤解して、急に自己負担が増えたことに怒っていたのだと解き明かしてくれた。
その話が落ち着くまで待って、まだ不安の残っていたマチルダに対して、「ゆっくりで大丈夫です」と言って、その言葉のとおり急かさずにいてくれた。
そのあとマチルダに、「お詫びにデートしてほしい」とか、「顔だけで仕事してるからそうなる」などと、前の職場で言われたような嫌味も言わずに、普通に挨拶をして、普通に帰っていった。そのことにすごく救われて、とても素敵な人だと思ったのだ。
「わたしの気持ちが、カイルにとって重いんじゃないかと思って、不安だったから」
カイルは榛色の瞳を瞬きするだけだ。マチルダは、今の言葉だけでは、マチルダの気持ちの全部ではないなと思った。
カイルにとって、負担になるのが心配なのは事実だけれど、マチルダを不安にしているのは、二人の気持ちの不平等さだから。
「カイルは、わたしのこと、そんなに好きじゃないのかもしれないって思うときがあるの。わたしがカイルのことを大好きだから、大事にしようとしてくれるけど、押されて結婚しただけで、わたしが何もしなかったら、カイルはわたしと結婚しようとも思わなかったんじゃないかって!」
不満をぶつけたって、何にもならないのは分かっている。嫌なことは、口に出さないほうがいい。目を向けないようにして、笑っていれば、いつか過ぎ去るものだから。
マチルダはそう思って常に笑顔でいることを心がけているけれど、一度蓋を開けてしまった不安は無視できない。
「カイルは、自分からわたしに好きって言ってくれたことが一回しかないもの。付き合い始めたときの一回だけ……!」
好きという言葉に見返りを期待していたわけではないけれど、自分からたくさん好きと口にすれば、いつかカイルも返してくれると期待してしまっていたのは否めない。
言葉で返事がなくても、カイルはマチルダと一緒にいると楽しそうだし、優しいし、とても大切にしてくれる。「好き」と言えば、「僕もだよ」と返してくれる。だから気持ちを疑っているわけではない。
それでもときどき、どうしても心がもやもやする。
「好きって言って」と言えば言ってくれるけれど、頼まないと言ってくれない。いつしかマチルダはそれも頼まなくなっていた。
「マチルダ……ごめん、そんなふうに不安にさせていたなんて、全然気づいてなかった」
カイルがマチルダの手を握った。
じっと見つめられると、マチルダは落ち着かない気持ちになって、つい手を振り払って顔を背けてしまう。
「マチルダ」
悲しそうな声が、マチルダの名前を呼ぶ。
「違うの。拒否したわけじゃなくて……! どきどきしちゃうから手は握らないでほしいの」
「え?」
「呪いのせいで、初めて会ったときみたいなの! 目が合うだけで心臓が飛び出ちゃいそう」
「目が合うだけで?」
マチルダは恨みがましくカイルを見つめた。こんなところでも温度差を感じる。
「そうよ。わたしはあなたが薬局で助けてくれたときからずっとそうよ。大好きなの」
手を握らないでほしいと言ったのに、カイルはもう一度マチルダの手に自分の手を重ねてきた。
「カ、カイル……!」
本当に恥ずかしくて、マチルダの瞳には涙が滲む。マチルダの心は今日改めて恋に落ちたばかりで、大好きな人と結婚しているという事実だけでいっぱいいっぱいだから、これ以上距離が縮んだら受け止めきれない。
「また僕に恋してくれたの?」
「毎日してるわ」
カイルは口元を緩めて、マチルダと距離を縮めた。
「リリアーナ様に報告しなくちゃね。本当に、呪いをかけても問題なかった」
「問題は大ありだわ! そうだ、薬……」
マチルダはカイルがリリアーナのもとを訪れて手に入れたという薬瓶に目を向けた。ソファから立ち上がろうとしたのに、カイルに阻まれてできなかった。彼の手がマチルダの腕と、頬を固定して、唇を奪った。
「んんっ!」
遠慮のない動きで、カイルの舌が唇を割って入ってくる。舌が絡むと、マチルダの腰が震えた。恋心はリセットされても、身体が覚えている快感の記憶はなくならないらしい。
「ぁ……んぅ」
キスを続けているうちに、ずるずるソファに沈み込んで、いつの間にか押し倒されている。マチルダはぼんやりした顔でカイルを見つめた。
カイルがマチルダの唇のはしについた唾液を指で拭う。
「今日好きになったばかりの男に抱かれるのは嫌?」
「えっ⁉︎」
マチルダはグリーンの瞳を瞬きした。夫婦の営みに誘われることは今までもあったけれど、ソファでこんなふうに始まることはなかった。
「い、嫌じゃないわ」
マチルダの顔が熱くなる。カイルはその様子を見て優しく目を細めると、もう一度口付けを繰り返した。
彼の手が、マチルダの足を撫でる。スカートの中に侵入して、ストッキングの上から焦らすように愛撫する。
そのうち手が離れて、次は上半身へ。薬局の制服のボタンを外して、その中にある白いシャツのボタンを器用に外していく。付き合い始めたときは彼には女性の服を脱がせた経験がなく、両手でもたもた外していたが、今はキスしながらでも片手で器用に外せるようになっている。
「カイル……んんっ」
唇が離れたその隙に、マチルダはカイルの名前を呼んだ。先をねだる甘えた声。カイルはそれに応えてマチルダの柔らかい胸を揉んで、下着をずらして色づいた場所を指で引っ掻いた。
「あっ!」
指で胸の先端をこすられると、マチルダの身体は抵抗できず震えた。口から甘い声が漏れ、快感に耐えきれなくなった身体がくねる。
「マチルダ、好きだよ」
「……!」
耳の近くで名前を呼ばれ、好きだと言われて、その間にも快楽を与えようとする手が止まらない。マチルダはよく分からなくなってきて、泣きそうだった。
「泣かないで」
カイルがマチルダの目元に滲んだ涙を舐めた。
「きゃあっ」
「しょっぱい」
そのまま、舌が耳元や首筋を舐める。一体何をされているんだろうと思ってしまう。
「あっ、んんっ……あぁ」
カイルが何かするたびに、身体がびくんと跳ね上がる。マチルダの身体からはどんどん力が抜けて、ソファにぐったり沈み込んだ。その拍子に、マチルダの片足がソファから落ちそうになった。
「ちょっと狭いね。ベッドに行こうか」
カイルが苦笑いする。いつもと同じ落ち着いた声だが、その瞳の奥の熱さに「待ちきれない」と言われているような気がして、マチルダの心臓は大きく跳ねた。
カイルはマチルダの膝下に手を差し込んだ。そのまま抱き上げるつもりらしいが、一瞬固まって、なんとか立ち上がる。
「だ、大丈夫?」
「……ん。室内で仕事ばっかりしてるとだめだな……」
一度体勢を立て直すようにしっかり身体を密着させたあと、カイルはマチルダを二人の寝室に運んだ。昨日はマチルダ一人で眠った場所を、今日はいつものように、二人で使うことになる。
ベッドに横たえられて、どきどきしながらカイルがシャツを脱ぐのを見守った。マチルダは中途半端に服を着た半裸状態で、このまま続きをするならと思って自分でシャツを脱ごうとしたが、カイルがその手を止めた。
「今日は僕にやらせて」
そのままシーツに手を縫い付けられるようにして、身体を重ねて口付けをする。うっとりした気持ちで目を閉じる。
カイルは唇を離すと、マチルダの頬を親指で撫でた。
「君に好きでいてもらうのを当たり前だと思っちゃだめだよね。君の気持ちが呪いで消えたとしても、呪いが解除されたあとも、どちらにしろ好きになってもらう努力をしなきゃいけないなって、改めて思ったよ。今までずっと、甘えていてごめんね」
「カイ……んぅっ!」
激しくなった口付けがマチルダの言葉を奪う。カイルの手のひらが太ももの内側を撫でて、そのまま下着の上から彼女の鼠蹊部に移動した。
下着の上から秘部をなぞり、すでに濡れている場所の上を何度も往復して、マチルダの期待を高める。
「はっ、あ……やっ……」
マチルダは自分の身体の奥から、愛液が滲み出るのを感じた。早くカイル自身で満たしてほしいという欲が湧き上がってくる。
「マチルダ、腰が動いちゃってるよ。可愛い。気持ちいい?」
カイルの声が興奮でうわずっている。浅くなった呼吸や、少し遠慮のなくなった動きからも、彼の余裕のなさが伝わってきて、マチルダは嬉しくてまた泣きそうな気持ちになってしまう。
言葉が出なくて、とにかく頷く。
「もっと気持ちよくしてあげる」
「ああっ」
下着が足から引き抜かれて、カイルの指が愛液をすくった。敏感な花芯を優しく刺激されて、マチルダは痺れるような刺激に震えた。
「あ、ん……カイルっ……やぁん……!」
カイルの指が動くたびに、水音がうるさくなる。
「あっ、あ、中も、触って……!」
刺激が欲しくてたまらなくなって、マチルダは素直に欲しいものをねだった。
「中も? 一緒にしてほしい?」
マチルダは頷いた。
「カイルの指で気持ちよくして」
「ん」
「んアッ!」
長い指が濡れた場所に遠慮なく侵入してくる。腰から這い上がってくるような強い快感が、マチルダの心と身体を満たした。
指でぐちゅぐちゅにされると、何も考えられなくなるくらい気持ちいい。
「あー……ッ!」
指のくれる快感に夢中になっていたら、急に足を左右に開かれた。カイルが足元にしゃがみこんで、先ほど指で愛撫して敏感になっている陰核を舌先でつついた。
「きゃっ! ぁっ、や……だめっ、汚いから……!」
カイルはマチルダの言葉を無視して、愛液と唾液で濡れた場所を舐めた。指の動きも止まらないから、マチルダの身体は彼女の意思と関係なく限界を迎えた。
「あっ、あっ、待って……イっちゃう……! ~~ッ!」
達した余韻で震える身体から、ゆっくり指が引き抜かれる。カイルの呼吸がすっかり浅くなっている。優しさの消えた顔で見つめられると、マチルダは緊張と期待で心臓が跳ねた。
カイルが服を脱ぐと、彼のものがマチルダを求めて勃ち上がっているのが分かってマチルダは嬉しくなった。言葉で好きと言われなくても、夫婦の営みをするときにはカイルがマチルダを求めていることがしっかり分かるから、マチルダは抱かれるのが好きだ。
カイルはマチルダに覆い被さるように口付けした。熱いものがマチルダの足に触れる。
「マチルダ、好きだよ」
「あっ!」
挿入の刺激と、言葉で、マチルダの身体は繋がっただけでまた果てた。
「動いてないのにイッちゃった?」
「あんっ、……だって、気持ちいいから……!」
「可愛い」
カイルがマチルダの耳元にキスした。ゆるゆる腰を動かしながら、何度も同じことをする。
「あっ、あ……カイル、好き……!」
カイルの口から重たい息が漏れた。
「僕も……じゃなかった。好きだよ。マチルダ、君のことが、本当に好きだ。初めて会ったときからずっと好きだよ」
思いがけない告白に、マチルダは目を見開いた。
薬局で出会ったときに好きになったのはマチルダだけだと思っていた。カイルは困っていたマチルダを助けてくれたけれど、マチルダはプロらしくない態度を取って慌てていただけだから。
もう少しその話を詳しく聞きたいと思ったが、抽送の動きが激しくなってしまって、マチルダは会話を続けることができなかった。
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