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新入生歓迎会
あまりにも速かったゲームの終わり
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「ん、」
ふわふわする……
疾風は、自分が揺られている感覚がして、目を覚ました。若干寝ぼけていたが。
「起きた?キング」
「んー……」
目を開けたそこには、海斗がいた。
ん……?海斗、風紀副委員長、カイ……カイ!?
「っ、え、なん、」
「あ、起きた。おはよー、そして久しぶり、キング」
しかもバレている。
ど、どうしてこうなった。
確か、梓と別れた後は隠れる場所を探して、大きな木があったからその木に上って……あれ、そこから記憶ないや。多分寝たんだろうけど。
で、どうしてカイが……
「な、なんで……」
「んー?覚えてないかー。でもめんどいから省くね」
「えー……」
「で、見つけたんだから戻ってきてくれるよね?」
「う……や、約束だから、な」
そう言ったら、カイは笑った。なんでだ?
「どうした?」
「だって、寝ぼけた時にも聞いたけど、同じこと言ってたから」
「そうなのか」
「この状況に何も言わないの?」
「何のこと……っ!?」
今まで気づいてなかったが、俺はカイに抱えられて移動していた。
俗に言うお姫様だっことやらで。
それに気がついた疾風は、恥ずかしさで顔が赤くなる。
「っ……お、おろしてくれ!」
「やだ。逃げられたくないもーん」
「に、逃げないから!!」
「それでもだーめ。このまま体育館行くよー」
もう一度抗議の声を上げようとしたが、カイはそれを遮って言った。
「どうしてもって言うならおろすけど、その場合は俺がキングに抱きついたまま行くからねー」
「抱きっ……!?」
「うん。後ろからぎゅーって」
それはわかる。
わからないのは何故抱きつかれていなきゃいけないのかだ。
「ほーらついたよー」
「っ!!」
閉じていた体育館の扉を開けて、カイは俺を抱えたまま体育館に入る。
カイが体育館に入った途端、騒つく生徒達。
そりゃそうか。
風紀委員会の副委員長様が人を抱えてたんだから。
しかも今は鬼ごっこの最中。
ここにいるのは捕まって戻って来た1年生だけだ。
騒つく生徒達を他所に、恥ずかしさで赤くなって固まる俺と、そんな俺を微笑みながら見るカイ。
そしてそんな俺達に近づく人物が1人。
「……海斗、その生徒はどうした」
「えー、狼牙わかんないの?」
「は……?というかお前、口調が」
そう、風紀委員長、桐谷 狼牙だ。
見回りをしていた彼は、強姦しようとしていた生徒を連行していて体育館にいたのだ。
海斗の言葉に不思議そうな声を出したが、狼牙にはわからなかった。
海斗が疾風を見て懐かしさを感じたように、狼牙も懐かしさを感じていた。
しかし、疾風の正体を知らない狼牙にとっては意味のわからない感情だ。
「あ、名前聞くの忘れてたー。教えて?」
「え、あ、……疾風……」
「疾風ねー」
「おい、一体何の……」
「ほんとにわかんないのー?」
狼牙が、疾風がキングだと気づかないことを不思議がる海斗。
というか、声だけで気づける海斗がおかしいのだが。
「うーん、疾風が前のように話しかけたら気づくのかなー?」
「意味がわからないんだが……」
「疾風ー。やってみー?」
「え、前のようにって……」
「ほんとに何なんだ?」
本気で意味がわからないという顔をする狼牙。
気付いてもらえなかったことには少しだけ落ち込んだ疾風である。
「いいのか……?」
「いいっていいってー。気付いてもらえなきゃ意味ないでしょー?」
「それもそうか……?」
「おい、何の話を……」
「ロウ」
いきなり雰囲気を変え、CLOWN副総長であるときの自分の名前を呼んだ疾風に驚く狼牙。
しかしその声の感じには狼牙にとって懐かしい響きがあった。
「……っ!?」
「ロウ、久しぶり」
「っキング!?」
その狼牙の声に体育館内が騒つく。
それもそうだろう。
キングという名前は、故山のCLOWNメンバーだけでなく、一般生徒にまで浸透していたのだから。
疾風がキングとして、校内で強姦しようとした生徒を潰したことが噂になっていたからだ。
しかも何件も同じことをしていたので、それはそれは有名になっている。
そのときの一般生徒の会話はこんな感じ。
「え、あのキング!?」
「噂の?」
「あんなに可愛いのに!?」
そう、今の疾風は自身の可愛らしい顔を惜しげもなく晒している。
長い前髪は海斗が何故か持っていたピンで横に流してある。
疾風が寝ている間に海斗が付けたものなので、疾風は気づいていないのだが。
「最後まで気づかなかったな」
「うっ……」
「ま、俺は顔を晒してなかったからしょうがないか」
「俺は気づいたけどねー」
「海斗に負けた……」
「勝負じゃないんだから……」
疾風はそう言って笑う。
その疾風の無邪気な笑顔に顔を赤くする生徒が大量発生。
それに気づいた海斗はムッとして生徒から隠すように疾風を正面から抱き締めた。
わけもわからずにいきなり抱き締められた疾風は赤くなって狼狽える。
そんな2人を微笑ましそうに眺める狼牙。
海斗の様子を見た生徒一同は、
(((((好きなんだろうなぁ……)))))
と、思っていた。
バレバレである。
そんな時、鬼ごっこの終わりを告げる、泉の声が聞こえた。
ふわふわする……
疾風は、自分が揺られている感覚がして、目を覚ました。若干寝ぼけていたが。
「起きた?キング」
「んー……」
目を開けたそこには、海斗がいた。
ん……?海斗、風紀副委員長、カイ……カイ!?
「っ、え、なん、」
「あ、起きた。おはよー、そして久しぶり、キング」
しかもバレている。
ど、どうしてこうなった。
確か、梓と別れた後は隠れる場所を探して、大きな木があったからその木に上って……あれ、そこから記憶ないや。多分寝たんだろうけど。
で、どうしてカイが……
「な、なんで……」
「んー?覚えてないかー。でもめんどいから省くね」
「えー……」
「で、見つけたんだから戻ってきてくれるよね?」
「う……や、約束だから、な」
そう言ったら、カイは笑った。なんでだ?
「どうした?」
「だって、寝ぼけた時にも聞いたけど、同じこと言ってたから」
「そうなのか」
「この状況に何も言わないの?」
「何のこと……っ!?」
今まで気づいてなかったが、俺はカイに抱えられて移動していた。
俗に言うお姫様だっことやらで。
それに気がついた疾風は、恥ずかしさで顔が赤くなる。
「っ……お、おろしてくれ!」
「やだ。逃げられたくないもーん」
「に、逃げないから!!」
「それでもだーめ。このまま体育館行くよー」
もう一度抗議の声を上げようとしたが、カイはそれを遮って言った。
「どうしてもって言うならおろすけど、その場合は俺がキングに抱きついたまま行くからねー」
「抱きっ……!?」
「うん。後ろからぎゅーって」
それはわかる。
わからないのは何故抱きつかれていなきゃいけないのかだ。
「ほーらついたよー」
「っ!!」
閉じていた体育館の扉を開けて、カイは俺を抱えたまま体育館に入る。
カイが体育館に入った途端、騒つく生徒達。
そりゃそうか。
風紀委員会の副委員長様が人を抱えてたんだから。
しかも今は鬼ごっこの最中。
ここにいるのは捕まって戻って来た1年生だけだ。
騒つく生徒達を他所に、恥ずかしさで赤くなって固まる俺と、そんな俺を微笑みながら見るカイ。
そしてそんな俺達に近づく人物が1人。
「……海斗、その生徒はどうした」
「えー、狼牙わかんないの?」
「は……?というかお前、口調が」
そう、風紀委員長、桐谷 狼牙だ。
見回りをしていた彼は、強姦しようとしていた生徒を連行していて体育館にいたのだ。
海斗の言葉に不思議そうな声を出したが、狼牙にはわからなかった。
海斗が疾風を見て懐かしさを感じたように、狼牙も懐かしさを感じていた。
しかし、疾風の正体を知らない狼牙にとっては意味のわからない感情だ。
「あ、名前聞くの忘れてたー。教えて?」
「え、あ、……疾風……」
「疾風ねー」
「おい、一体何の……」
「ほんとにわかんないのー?」
狼牙が、疾風がキングだと気づかないことを不思議がる海斗。
というか、声だけで気づける海斗がおかしいのだが。
「うーん、疾風が前のように話しかけたら気づくのかなー?」
「意味がわからないんだが……」
「疾風ー。やってみー?」
「え、前のようにって……」
「ほんとに何なんだ?」
本気で意味がわからないという顔をする狼牙。
気付いてもらえなかったことには少しだけ落ち込んだ疾風である。
「いいのか……?」
「いいっていいってー。気付いてもらえなきゃ意味ないでしょー?」
「それもそうか……?」
「おい、何の話を……」
「ロウ」
いきなり雰囲気を変え、CLOWN副総長であるときの自分の名前を呼んだ疾風に驚く狼牙。
しかしその声の感じには狼牙にとって懐かしい響きがあった。
「……っ!?」
「ロウ、久しぶり」
「っキング!?」
その狼牙の声に体育館内が騒つく。
それもそうだろう。
キングという名前は、故山のCLOWNメンバーだけでなく、一般生徒にまで浸透していたのだから。
疾風がキングとして、校内で強姦しようとした生徒を潰したことが噂になっていたからだ。
しかも何件も同じことをしていたので、それはそれは有名になっている。
そのときの一般生徒の会話はこんな感じ。
「え、あのキング!?」
「噂の?」
「あんなに可愛いのに!?」
そう、今の疾風は自身の可愛らしい顔を惜しげもなく晒している。
長い前髪は海斗が何故か持っていたピンで横に流してある。
疾風が寝ている間に海斗が付けたものなので、疾風は気づいていないのだが。
「最後まで気づかなかったな」
「うっ……」
「ま、俺は顔を晒してなかったからしょうがないか」
「俺は気づいたけどねー」
「海斗に負けた……」
「勝負じゃないんだから……」
疾風はそう言って笑う。
その疾風の無邪気な笑顔に顔を赤くする生徒が大量発生。
それに気づいた海斗はムッとして生徒から隠すように疾風を正面から抱き締めた。
わけもわからずにいきなり抱き締められた疾風は赤くなって狼狽える。
そんな2人を微笑ましそうに眺める狼牙。
海斗の様子を見た生徒一同は、
(((((好きなんだろうなぁ……)))))
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バレバレである。
そんな時、鬼ごっこの終わりを告げる、泉の声が聞こえた。
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