全寮制男子高校生活~行方不明になってた族の総長が王道学園に入学してみた~

雨雪

文字の大きさ
上 下
15 / 24
ゲーム開始の合図

キングは犯罪行為が嫌い

しおりを挟む
あのゲームを持ちかけるメールをCROWメンバーに送った後は、梓と話していた。

それからすぐに担任の先生が来た。
先生の名前は水上ミナカミ 奏司ソウシと言うらしい。

王道っぽいホスト風……ではなくて、優しそうな雰囲気の男性だった。

それから先生が二言、三言話すだけで終わった。
明日からが本格的に始まるようだ。

明日は、委員会とかいろいろ決めなければいけないことが多いらしい。

で、寮に帰り、今は散歩中。

部屋割りは寮にくるまでわからなかった。
が、俺は特待生なので、1人部屋だった。

ま、その方が都合がいいからよかった。
CLOWNメンバーと同じ部屋だったりしなくて。

ヒント出したけど、この学園にいるってすごくわかりやすいヒントだと思うんだよね。
副総長のウルフ……狼牙は今2年。狼牙頭いーしここにいる生徒は大体覚えてるんじゃないかな?
だから年齢サバ読んでるってすぐバレると思うんだよなぁ。

ちなみに。
この学園の役員は基本的に2年生がやる。
3年生は受験に集中できるようにとの配慮だ。
だから、委員会の委員長、生徒会、風紀委員会は1、2年生で運営しているのだ。

とりあえず、俺は自分でボロ出したりしないように気をつければいいかな。
止むを得ずにばれちゃった場合は潔く戻ろう。
メールにもそう書いたしね。

いろいろ考えながら歩いていると、人の声が聞こえた。

「な、なんなんですか、あなたたち!」
「えー?何って、ここの地理に慣れていない外部生の後輩君を案内してるだけじゃん」
「そ、そんなのいいです!!」
「遠慮しないでー。ほら、俺ら穴場とか知ってるから」

先輩らしい不良っぽい人物は、立場の弱い外部生(らしい。そう言ってるし)を強引に連れて行く。

それを見た俺は、胸糞悪くなって今すぐボコボコにしてやろうかと思った。

うーん、バレるリスクがなぁ……
変装……?
今の顔隠れてる状態だと顔見えないけど普段からこれだからバレやすくなるしなぁ。

「や、やめて下さい!叫びますよ!!」
「だいじょうぶだって。こんなとこ、人なんか通らないから」
「そーそー。安心していいよ?見られる心配ないから」

なぁにが安心していいよ?だ!!安心できる要素ゼロじゃねぇか!!

はぁー、もうバレる覚悟でいったろーかな。
今も昔も顔隠してたしバレるリスクも低いか。

何故か持っていたピンで前髪を横に流してとめ、こちらも何故か持っていたヘアゴムで長い髪を結った。
これで顔は見えるだろうし、前顔隠してたから隠すよりはばれにくいだろ。

「おーい、そこのお二人さん。なーにやってんのかな?」
「!?え、なんでこんなとこに人がいるんだよ!?」
「し、知らねぇよ!」
「こ、こうなったら口封じにやっちまうか?」
「そうだな、あいつ何気に綺麗な顔してるし……」

ふーん?俺相手にやる気なんだ?
ってか、綺麗って誰がだよ。俺は平凡なんだけど。

「いーよ、来なよ。ボコボコにしてやっから」
「な、何を根拠に!」
「俺ら零に所属してるんだぞ!!」

へーえ?
ちょっとイオリさーん、監督不行き届きー。総長失格だぞー。

「ふーん?で?それがなに?俺が顔を知らないってことはお前ら下っ端か最近入ったんだろ?ここ半年くらいに。俺、零のメンバーも覚えてたしな」
「な、なに!?」
「なんだお前、偉そうに!もういい、やっちまえ!!」

あーらら。本当に来るんだ。
相手の力量も見抜けないと早死にすっぞー?
偉そうに、っていうか実際CLOWNの総長だし偉いんじゃね?多分。

2人の拳を軽~く避け、鳩尾に一発ずつ蹴りを入れる。
それだけで2人は気絶した。

「あっけないな。お前ら本当に零に入ってんのか?」

返答はない。
疾風の蹴りがモロに入って意識を飛ばしたためだ。

「んー、なんだかなぁ、この消化し損ねた的な感じ……」
「あ、あのっ」

あ、忘れてたわ。
今多分本気で。

「助けてくれて有難うございます!」
「いや。別に。俺強姦とか犯罪とか大嫌いだからね。次は気をつけなよ?助けてあげられないと思うから」
「はい、気をつけます」

素直な子だなー。いい子いい子。
俺そういう子好きだわ。つい撫でちゃう。

「あ、あの……」
「ああ、ごめんつい。で、こいつらどうするの?」
「えっと、確か……風紀委員に……」
「……あー、怖いと思うけどお願いしていいかな?俺今風紀委員に会っちゃうとまずいからさ。……いやまぁ顔バレしてないけどさ」
「あ、は、はい!わかりました!」
「風紀委員に連絡する方法は?」
「あ、知ってます!」
「じゃ、お願いね?あ、委員長に伝言頼んでいいかな?」
「え、あ、いいですけど……お知り合いで?」
「まあ、ね。じゃあ、“イオリに言って。監督不行き届き。総長の仕事ちゃんとしろよー。”って。キングが言ってたとも言ってねー」
「はい。了解しました」
「んじゃね」

そう言い残して、風紀委員が来る前にさっさと寮に帰る。
あの子、ちゃんと伝言してくれるかなぁ。
まあ、このくらいはいいでしょ。

**********

今日、風紀委員に連絡があった。
2年が外部の新入生を人のいない場所に連れて行こうとしたらしい。

現場に行ったのは俺と湊。
海斗は他の仕事をしてる。

報告があったのが被害者から直接だったから、今は風紀委員室で事情聴取中だ。

「で、どうしたんだ?」
「え、えっと、僕がこの2人に連れて行かれそうになった時、助けてもらいました。それで、あの状態に……」
「助けた人物は?」
「えと、風紀委員に会うとまずいと言って、どこかに……」
「俺らに会うとまずいって、問題児ですかね?」
「うーん……」

相当ひどい問題児……この学園、そんな奴いすぎてわからんな。

「あの、その人が委員長に伝言してくれと……」
「なんだと?」
「伝言?なんて?」
「えっと、“イオリに言って。監督不行き届き。総長の仕事ちゃんとしろよー。”らしいです、けど」
「庵……?なぜ?」
「確か、この2人が零に入っていると言ったからだと……」

この2人が?
まあ、とりあえず庵に伝えておくかな。

「あ、あと」
「まだ何か?」
「あの……キングが言っていたとも伝えて欲しい、と」
「……っ!!」
「キング!?」

その言葉を聞いた瞬間、俺と湊は驚きに目を見開いた。

「キング……ゲームを持ちかけたとたんに出てくるか……」
「キング、犯罪とか大嫌いでしたもんね。それじゃないですか?」
「そう、だな」

キングは昔から、仲間が傷つけられることと、犯罪が大嫌いだった。
身勝手な理由でCLOWNメンバーがリンチされた時も、『お返し、しなきゃなァ?』とか言ってそのチーム潰してた。1人で。
今回のことも、おそらくそういうことなのだろう。

「変わってない、ですね」
「ああ……」

被害者である新入生が?を頭に浮かべていたが、そんなことに構わず2人で感慨深い気持ちになった。
本当に……










半年前、CLOWNから姿を消す前の優しいキングのままだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

生徒会会長と会計は王道から逃げたい

玲翔
BL
生徒会長 皇晴舞(すめらぎはるま) 生徒会会計 如月莉琉(きさらぎりる) 王道学園に入学した2人… 晴舞と莉琉は昔からの幼馴染、そして腐男子。 慣れ行きで生徒会に入ってしまったため、王道学園で必要な俺様とチャラ男を演じることにしたのだが… アンチ転校生がやってきて!? 風紀委員長×生徒会長 親衛隊隊長×生徒会会計 投稿ゆったり進めていきます!

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

かつらぽーん

うりぼう
BL
かつらがぽーんと吹き飛ぶ。 王道学園物と見せかけた普通の学園もの。 一人の生徒を生徒会の連中その他が気に入り、親衛隊連中が色々と嫌がらせをしている。 そんな騒動の最中の話。 ※王道とみせかけた普通学園 ※親衛隊あり

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが

なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です 酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります 攻 井之上 勇気 まだまだ若手のサラリーマン 元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい でも翌朝には完全に記憶がない 受 牧野・ハロルド・エリス 天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司 金髪ロング、勇気より背が高い 勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん ユウキにオヨメサンにしてもらいたい 同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

そういった理由で彼は問題児になりました

まめ
BL
非王道生徒会をリコールされた元生徒会長が、それでも楽しく学校生活を過ごす話。

婚約破棄をしようとしたら、パパになりました

ミクリ21
BL
婚約破棄をしようとしたら、パパになった話です。

それはきっと、気の迷い。

葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ? 主人公→睦実(ムツミ) 王道転入生→珠紀(タマキ) 全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?

処理中です...