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ゲーム開始の合図

キングは犯罪行為が嫌い

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あのゲームを持ちかけるメールをCROWメンバーに送った後は、梓と話していた。

それからすぐに担任の先生が来た。
先生の名前は水上ミナカミ 奏司ソウシと言うらしい。

王道っぽいホスト風……ではなくて、優しそうな雰囲気の男性だった。

それから先生が二言、三言話すだけで終わった。
明日からが本格的に始まるようだ。

明日は、委員会とかいろいろ決めなければいけないことが多いらしい。

で、寮に帰り、今は散歩中。

部屋割りは寮にくるまでわからなかった。
が、俺は特待生なので、1人部屋だった。

ま、その方が都合がいいからよかった。
CLOWNメンバーと同じ部屋だったりしなくて。

ヒント出したけど、この学園にいるってすごくわかりやすいヒントだと思うんだよね。
副総長のウルフ……狼牙は今2年。狼牙頭いーしここにいる生徒は大体覚えてるんじゃないかな?
だから年齢サバ読んでるってすぐバレると思うんだよなぁ。

ちなみに。
この学園の役員は基本的に2年生がやる。
3年生は受験に集中できるようにとの配慮だ。
だから、委員会の委員長、生徒会、風紀委員会は1、2年生で運営しているのだ。

とりあえず、俺は自分でボロ出したりしないように気をつければいいかな。
止むを得ずにばれちゃった場合は潔く戻ろう。
メールにもそう書いたしね。

いろいろ考えながら歩いていると、人の声が聞こえた。

「な、なんなんですか、あなたたち!」
「えー?何って、ここの地理に慣れていない外部生の後輩君を案内してるだけじゃん」
「そ、そんなのいいです!!」
「遠慮しないでー。ほら、俺ら穴場とか知ってるから」

先輩らしい不良っぽい人物は、立場の弱い外部生(らしい。そう言ってるし)を強引に連れて行く。

それを見た俺は、胸糞悪くなって今すぐボコボコにしてやろうかと思った。

うーん、バレるリスクがなぁ……
変装……?
今の顔隠れてる状態だと顔見えないけど普段からこれだからバレやすくなるしなぁ。

「や、やめて下さい!叫びますよ!!」
「だいじょうぶだって。こんなとこ、人なんか通らないから」
「そーそー。安心していいよ?見られる心配ないから」

なぁにが安心していいよ?だ!!安心できる要素ゼロじゃねぇか!!

はぁー、もうバレる覚悟でいったろーかな。
今も昔も顔隠してたしバレるリスクも低いか。

何故か持っていたピンで前髪を横に流してとめ、こちらも何故か持っていたヘアゴムで長い髪を結った。
これで顔は見えるだろうし、前顔隠してたから隠すよりはばれにくいだろ。

「おーい、そこのお二人さん。なーにやってんのかな?」
「!?え、なんでこんなとこに人がいるんだよ!?」
「し、知らねぇよ!」
「こ、こうなったら口封じにやっちまうか?」
「そうだな、あいつ何気に綺麗な顔してるし……」

ふーん?俺相手にやる気なんだ?
ってか、綺麗って誰がだよ。俺は平凡なんだけど。

「いーよ、来なよ。ボコボコにしてやっから」
「な、何を根拠に!」
「俺ら零に所属してるんだぞ!!」

へーえ?
ちょっとイオリさーん、監督不行き届きー。総長失格だぞー。

「ふーん?で?それがなに?俺が顔を知らないってことはお前ら下っ端か最近入ったんだろ?ここ半年くらいに。俺、零のメンバーも覚えてたしな」
「な、なに!?」
「なんだお前、偉そうに!もういい、やっちまえ!!」

あーらら。本当に来るんだ。
相手の力量も見抜けないと早死にすっぞー?
偉そうに、っていうか実際CLOWNの総長だし偉いんじゃね?多分。

2人の拳を軽~く避け、鳩尾に一発ずつ蹴りを入れる。
それだけで2人は気絶した。

「あっけないな。お前ら本当に零に入ってんのか?」

返答はない。
疾風の蹴りがモロに入って意識を飛ばしたためだ。

「んー、なんだかなぁ、この消化し損ねた的な感じ……」
「あ、あのっ」

あ、忘れてたわ。
今多分本気で。

「助けてくれて有難うございます!」
「いや。別に。俺強姦とか犯罪とか大嫌いだからね。次は気をつけなよ?助けてあげられないと思うから」
「はい、気をつけます」

素直な子だなー。いい子いい子。
俺そういう子好きだわ。つい撫でちゃう。

「あ、あの……」
「ああ、ごめんつい。で、こいつらどうするの?」
「えっと、確か……風紀委員に……」
「……あー、怖いと思うけどお願いしていいかな?俺今風紀委員に会っちゃうとまずいからさ。……いやまぁ顔バレしてないけどさ」
「あ、は、はい!わかりました!」
「風紀委員に連絡する方法は?」
「あ、知ってます!」
「じゃ、お願いね?あ、委員長に伝言頼んでいいかな?」
「え、あ、いいですけど……お知り合いで?」
「まあ、ね。じゃあ、“イオリに言って。監督不行き届き。総長の仕事ちゃんとしろよー。”って。キングが言ってたとも言ってねー」
「はい。了解しました」
「んじゃね」

そう言い残して、風紀委員が来る前にさっさと寮に帰る。
あの子、ちゃんと伝言してくれるかなぁ。
まあ、このくらいはいいでしょ。

**********

今日、風紀委員に連絡があった。
2年が外部の新入生を人のいない場所に連れて行こうとしたらしい。

現場に行ったのは俺と湊。
海斗は他の仕事をしてる。

報告があったのが被害者から直接だったから、今は風紀委員室で事情聴取中だ。

「で、どうしたんだ?」
「え、えっと、僕がこの2人に連れて行かれそうになった時、助けてもらいました。それで、あの状態に……」
「助けた人物は?」
「えと、風紀委員に会うとまずいと言って、どこかに……」
「俺らに会うとまずいって、問題児ですかね?」
「うーん……」

相当ひどい問題児……この学園、そんな奴いすぎてわからんな。

「あの、その人が委員長に伝言してくれと……」
「なんだと?」
「伝言?なんて?」
「えっと、“イオリに言って。監督不行き届き。総長の仕事ちゃんとしろよー。”らしいです、けど」
「庵……?なぜ?」
「確か、この2人が零に入っていると言ったからだと……」

この2人が?
まあ、とりあえず庵に伝えておくかな。

「あ、あと」
「まだ何か?」
「あの……キングが言っていたとも伝えて欲しい、と」
「……っ!!」
「キング!?」

その言葉を聞いた瞬間、俺と湊は驚きに目を見開いた。

「キング……ゲームを持ちかけたとたんに出てくるか……」
「キング、犯罪とか大嫌いでしたもんね。それじゃないですか?」
「そう、だな」

キングは昔から、仲間が傷つけられることと、犯罪が大嫌いだった。
身勝手な理由でCLOWNメンバーがリンチされた時も、『お返し、しなきゃなァ?』とか言ってそのチーム潰してた。1人で。
今回のことも、おそらくそういうことなのだろう。

「変わってない、ですね」
「ああ……」

被害者である新入生が?を頭に浮かべていたが、そんなことに構わず2人で感慨深い気持ちになった。
本当に……










半年前、CLOWNから姿を消す前の優しいキングのままだ。
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