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『2本の剣』

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「いやー。まじで1位になるとは」
順位決戦の後、サクラと狼竜は帰っていた。
「うん。俺も驚き」
「にしても、狼竜強いな・・・」
「・・・」
(そんなに強くないよ・・・。世界は広いから、上には上がいる)
少し弱気な狼竜。
「家帰ったら、私と全力で戦って」
「え」
「狼竜の戦い見てたら、戦いたくなった」
「なら、モンスターを狩ろうよ」
「嫌だ。狼竜と戦う」
(こう来たら多分頑固だな・・・)
「わかったよ」
「やった!あ、本気だからね?」
「んー」
竜車に乗り込んだ。
「グガゴァ」
「サクラ。俺、見張りも兼ねて前にいるね」
「うんー」
竜の後ろに飛び乗り、紐で叩く。
それに反応して、竜が進み出す。
(刀見てみるか・・・)
レイとの戦いで、刃こぼれしていないか確かめた。
「うっわ・・・」
刃は予想通り、ボロボロだった。
(使えるけど・・・切れ味が悪すぎる)
「相当強かったんだな・・・。こいつには」
自分より、圧倒的な大きさの大剣と渡り合ったんだ。名刀だな。
「研げないし・・・。もう捨てるしか無いのか」
「何をだ?」
「うおっぐベル!」
「変な驚き方だな」
にこにこなサクラがヒョイっと顔を出している。
「それで、何を捨てるしか無いんだ?」
「これ」
サクラから貰った、呪いの宝刀を見せる。
「刃こぼれか・・・」
「うん」
狼竜は悲しげなな瞳で刀を見つめた。
「武器ってさ、永遠に使えたらなーとか、刃こぼれするなーとか思うじゃん」
「うん」
「でもさ、きちんと手入れしたら武器も喜ぶし、勝ちたかった強敵をその武器で倒したらさ、喜びも分かち合えるよね」
「・・・」
「だから、壊れたり、使えなくなると、かなしくなるよね」
「でも、まだ狼竜これそんな使ってないよね?」
「いや?こいつのおかげで勝てたし。何よりもサクラに貰ったから」
ドクンッとサクラの鼓動が速くなる。
(ああ、本当に優しいな)
心からサクラは思った。


        ☆


「帰ってきたー」
「ただいま」
玄関に寝転ぶサクラを立たせ、帰宅の知らせを告げる。
「おかえりなさいませ。サクラ様、狼竜様」
「うん。ただいま。ミラ」
「ところで、負けましたか?負けましたよね?」
(なんで全部負けなのさ・・・。まさかまだミラだけにって事、根に持ってる?)
「決してそうではありませんよ、狼竜様」
「だから人の心を読むなよ!」
とりあえず、中に入る。荷物を置き、もう一度、刀を見た。
「刃こぼれですか?」
「うん」
「直しましょうか?」
「いや、こいつはもう使えない」
「何故、ですか?」
本当に疑問に思ったのだろう。
「剣は直せば使えます」
「それは、心が生きていたら、だろ?」
「・・・」
「こいつの心は、もう終わってる。無理に直しても、心の無い武器は、ガラクタに過ぎない」
「では処分します」
「やめろ。俺がする」
少しだけ、睨んでしまった。
外に出て、少し歩いた。
「ふっ」
地面を、えぐった。
「今までありがとうな」
えぐって飛んだ土で軽い山を作る。
そして、刺した。
「ここで少し、眠っていてくれ」
そして、ここをあとにした。
「狼竜」
「サクラか」
「勝負、しよ」
「・・・うん」
「はい」
風を切り、剣が放たれた。それを受け取り、構える。
サクラも構えた。
「じゃあ、試合開始!」
走り出したサクラを見つめた。
(これだから、強くなるのはつまらないんだ)
1歩だけ、たった1歩歩き、手をこねた。
パキンッ、とサクラの剣を弾く。
そして、首に剣が置かれた。
「・・・私の敗け」
ああ、最悪なことをしたと心から思う。
弱いものいじめだ。
強過ぎる。
だからなんだというんだ。
自分だって制御出来ない。
弱くなりたい。
だけど、そんなことしたら、下の人に、失礼過ぎる。
強くなり過ぎた?なんだよそれ、ふざけんな。
高みを目指すのは、当たり前だ。
ただ、行き過ぎた。
ふと、サクラの声が聞こえた。
「狼竜は強くて、毎日が楽しいよな」
「ッ!?なん、で・・・そう思ったの?」
「だって強いから。それだけじゃん。楽しく無いの?」
「・・・」
純粋な強さか・・・。俺だって求めたよ。
「あと狼竜」
「ん?」
「強くなりすぎでつまんないなんて、思うな。上には上がいるからな。ご飯、出来たっぽいよ」
上には上がいる?そっか・・・。
「だめだ、今日はおかしいな」
自分で分かっていることを、言われるなんてな。
「でも、強ずきて悪いわけがないだろ。サクラをその分守れる」
少し考えた後、サクラを追った。


          ☆


今は何時だろう。
サクラは夢を見ていた。
深い、深い深い海のような。
音が聞こえない世界。
夢、なのだろうか。
動ける。苦しい。助けて。
「お、狼竜・・・」
求める。何も出来ないから、助けを求める。
「たす・・・け、て」


遡って30分前
「今日はスライム100匹の討伐だ」
「100か・・・」
「数が数だから、人呼んだよ」
「やあ、君がサクラ君の騎士か」
「それでいて1位ね」
(2人か・・・。そして、どちらも女の人・・・)
「私はクレイ・アスクフォート。よろしく」
「私はね~。アスカ・ベイルーツだよ。よろしく~」
2人の挨拶が済んだあと、森に向かう。
「狼竜君、イケメンじゃない?」
「だよね。わかるわ」
「こら。私の騎士だぞ」
「はーい」
3人の女の子の後ろをついていく狼竜。さっきの会話を悪口と思い、冷や冷やした。
「あ、いたよ」
「うっわ。きもい・・・」
そこには大量のスライムがいた。
ぬちゃぬちゃと動くスライムは不気味だった。
「んじゃ、行こうか」
中級のスライムといえど、質より量のスライムは討伐に時間がかかる。
「あーあ、1匹になってくれたらいいのに」
このサクラの一言により、スライムが動いた。
「ん?」
「ありゃ」
親スライムが来た。子供の4倍位の大きさだった。
サクラの上に飛び跳ね、どんどん大きくなっていく。
「くそ!くそ!」
足止めと言わんばかりの雑魚スライムにより、回避ができなかった。
「んっ!!?」
巨大なスライムに雑魚ごと、サクラを飲み込んだ。
狼竜達の雑魚も、寄って合体した。
「サクラ!」
武器のない狼竜は拳を放つ。しかし、ダメージはない。
「ッ!?」
瞬間、サクラがもがいた。
(まさか、こいつら!)
「くそ!」
クレイが剣を振るう。しかし、柔らかすぎて、剣が通らない。
アスカのハンマーが放たれた。
「やめろ!」
急に呼び止められ、なんとか攻撃を中止する。
「な、なんで!?サクラを助けないと!」
「分かってる!だけど、俺が殴ったとき、サクラが苦しんだ。こいつ、衝撃をサクラに集めたんだ。打撃はサクラに危険が及ぶ」
「剣も無理だった」
「なら、どうするの!サクラが死んじゃう!」


『俺を・・・使え!』


カードが光出した。
(まさか、これが?)
「ええい、もうどうにでもなれ!」
『なら叫べ!カード、インバイトと!』
「カード、インバイト!!」
瞬間、カードの輝きが増した。
「くっ」
余りの眩しさに目をつぶる。目を開けると、刀と剣が、浮いていた。
『使え!助けたいなら!』
刀をとり、抜き取る。
その刀は黒かった。
(まるで、呪いの宝刀見たいだ・・・。いや、あれより黒い!)
「はあ!」
その刀を振るった。
刀は切れ味が良過ぎた。スライムと大地を切り裂いた。
(す、すごい・・・)
「サクラ!」
その切れ味で瞬く間にスライムが刻まれる。そして、サクラを救い出せた。
「・・・ガハァ!ハアハア」
苦しかったのか、荒い呼吸をする。
「サクラ大丈夫!?」
クレイとアスカが駆け寄った。
「う、うん。スライムは?」
「狼竜がやっつけてくれたよ」
「そっか・・・。あれ?狼竜その刀・・・」
苦しいはずのサクラは声を振り絞る。
「ああ、俺の、俺の刀だ」
「そっか・・・。よかっ・・・たね」
その時、サクラは意識を失った。
「サクラ!?」
狼竜はすぐに、首筋に手を置いた。
「大丈夫、気絶しただけだ。呼吸困難だったから、そっとしておこう」
サクラをお姫様抱っこして、立ち上がる。
「帰ろう。スライムは倒した」
「う、うん」
(この剣達は・・・?)
『お前の剣さ』
「そうか、ありがとう。またあとで話そう」
こうして、スライム退治は終わり、狼竜は剣を手に入れた。
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