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第十三話 結末

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 軍事力の拡大。それが本当の理由だった。

 まるでこれから先、戦争をするのが当たり前になるかのようなものの言い方。

 DSGを悪用するような計画。全世界の脅威になるように仕向ける使用目的。

 四人が黙っているわけがなかった。



「ふざけるな! そんなこと許されるはずがないだろう!」



「そうよ! 仮にも人格を作るということは人として生まれるということなのよ」



「その人を使って軍隊にいれるなんてもってのほかです!」



「絶対にDSGは渡さない!」



 加藤はそんな四人に対して「やれやれ」と呟いて、声を大にした。



「それならば仕方がない。力ずくでも奪うしかないな。この国の未来のためだ」



 四人は死んでも守りきるつもりで加藤がやって来るのに構えた。





 その時だった。突然、研究所の扉が開いた。

 四人の頭にまさか大勢で押しかけるよう応援を呼んでいたのではないかという考えがよぎった。 


 しかし、その扉の向こうにいたのは一人の老人だった。高齢で白いひげを生やした特徴的なその老人に川島は見覚えがあった。
「じいさん!」



 そう。全ての始まりとなった『秘妙堂』の店主だった。



「ほう。まだわしのことを覚えておったか?」



 店主はマイペースにそう言うと研究所の中に入ってくる。



「誰だ!? お前は! 部外者が入ってくるところではない!」



 加藤は急に入ってきた老人に言い放つ。



「部外者だと? この顔を見てもそう言い切れるか?」



 店主はそう言うと顔の仮面を剥ぎ取った。

 そこにあった真の顔はまだ若くして政府国家安全保障課理事長になった有村の顔だった。

 木村は先日、彼とニュース番組で共演したばかりだ。ほかの三人もテレビのニュースで顔は知っていた。



「有村!? 貴様、なぜここに」



 加藤は急に登場した彼に苦虫を潰したような表情で言う。



「お前たちの動きはおかしいと初めから睨んでいた。現在の国の安全保障は世界的に見てもトップクラス。そんな私を妬んでいるのは軍事課の面々であるのも読み取れていたしな」



 事の真相はこうだった。国の安全が保たれているのは全て有村が行ってきた政策のおかげだった。

 そんな国のあり方に軍事力の必要性を問われていたため、軍事課のトップである加藤は『医療保護課』と銘打ち今回のDSGを使った軍備拡大を図り、軍事力を強化させ有村の政策もろとも潰してやろうと考えたのだった。



 そして、有村は呼んでいた警察隊に二人を取り押さえさせた。こうして、事件の幕は意外にも一人の救世主によって閉じられた。

 一つ、気になっていたことを川島は有村に尋ねた。



「なぜ、あんなにいいタイミングで入ってこれたんだよ?」



「秘妙堂には秘密で妙な話がどんどん入ってくるのだわい。ほっほっほ。なーんてな」



 そう言うと不敵な笑みを浮かべて去っていった。そして、『秘妙堂』も閉店した。
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