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第一章/第二陣 元少年、Sランクへの道!

第7話 鉱山

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 宿で食事を済ませると、冒険者ギルドに向かう。
 この街の冒険者ギルドは荘厳な雰囲気を保ち、入っていく者は皆胸を張っていた。人の出入りは激しく、中からは受付業務の話し声がひっきりなしに聞こえてくる。
 ちなみに、この街は王都と二番目に大きな街と言われている、ライセンブルクの街までにある一つの街、リウドの街。
 王都からライセンブルクの街は一直線で繋がっており、ところどころ森や谷、山で迂回路を取る必要があるけれど、基本的には一直線だ。地図で見れば、左から3番目の街である、お爺ちゃんの実家のルクセンブルクの街も、この道で繋がっている。
 これらはお爺ちゃんとの勉強時間で聞いたことで、今でも鮮明に思い出せた。今は亡きお爺ちゃんの言ったことを、しっかり覚えていられるのは嬉しい。
 このリウドの街なのだけど、馬車で一日ほど行った先に鉱山があるらしい。街が出来た後に鉱山が発見されたようだから、若干距離があるのだ。本当なら、鉱山の麓に大きな街を作りたかったみたい。けれど、その鉱山の麓にも人は大勢集まるため、村が設置された。それが、リウドの村である。

 依頼板の中に護衛依頼はないらしく、僕とミスティは代わりに別の依頼を受ける。

「お姉ちゃん、これおもしろそうだよ? 『鉱山の調査。奥には大きな結晶があるのではないか、と推測されており、その確認を依頼する』だってさ! 私、結晶見てみたい!」

 最近では、僕は依頼を選ばず、ミスティに任せることが多い。小さな子どもは飽きっぽいから、せめて自分で選ばせて、飽きたとしても放り出さないようにするのだ。とは言え、キチンと確認などはしている。
 ……ミスティは冒険者登録はしていないのだけど。
 興奮するミスティを微笑ましく見ながらも、依頼書を見て一つ頷いた。

「うん、いいんじゃないかな? 僕も見てみたいし、行こう。ランクと人数は大丈夫?」

「大丈夫だよ! Aランクで単独有りって書いてあるし、報酬額もかなり高めで、白銀貨1枚!」

 白銀貨とは、銀貨50枚分を指している。これまで受けてきた依頼の中でも破格で、一番の値打ちがついている。
 興奮が収まらない様子のミスティの頭を撫でた。

「単独有りってことは、報酬額は一定ってことだね。パーティは組まずに行こっか」

「うん、早く行こ!」

 目を輝かせるミスティに少し落ち着くように言う。
 パーティを組むと報酬額が上乗せされる場合もあるけれど、単独有りと書かれいている依頼では出ない場合が多く、報酬額は一定なのが普通だ。
 受付に座っている職員さんに依頼受諾を申し出ると、

「確かに。では、気を付けての。氷と癒しよ」

「はい。ありがとうございます」

 略されて呼ばれるのは初めてだ。
 そんなことを思いながらも、受付の人と別れる。

「おっ、氷のリステリアと癒しのミスティは鉱山に行くのか? なら、俺も連れてってくれ。報酬はいらないし、邪魔もしないからよ」

 見たことのない冒険者の男がそう言いながら、僕たちに近づいてきた。悪意はないようで、気持ち悪い感じもしない。本心から、そう思っているのだろう。

「えーっと、どうしようか?」

「私はどっちでもいいよ? お金はあげなくてもいいんでしょ?」

「それもそうだね。わかりました! 絶対、手を出さないでくださいね」

 最後にギロリと睨んで釘をさすと、他の人も挙手してついてきたいと申し出る人が出てきた。今日に限って、ついていない。
 最終的には僕とミスティ含め15人という大所帯となってしまったのは、御愛嬌だ。
 僕たちは例の如く、地図を購入する。この世界に世界地図はないので、各地の冒険者ギルドで販売している周辺地図だけが頼りなのだ。これは隣町までの道が書いているのだけど、そこまで詳しく書いていない。特に、隣町の近くにある村、といった記述は皆無である。

 地図を確認し、何も忘れ物などがないか確認した僕たちは、早速街を出た。
 鉱山はよく行かれるので、街道のような、踏み鳴らした道が出来ていて非常に歩きやすい。流石に、馬車を用意するわけにもいかないので徒歩となるのだけど。
 馬車で1日かかるところを、僕たちは2日弱かけて移動した。ミスティがまだ体力が出来上がっていないし、僕も、それほど自信はないため、多めに休憩を取っていたのだ。
 リウドの村に着くと、リウドの街よりも活気に満ち溢れているような感覚で、夜だというのに騒がしさがまるで落ち着きを見せない。村を照らしている火の魔法が光を生み出していることも、関係しているのだろう。なにせ、日が変わるまで光が消えないのだから。
 そして、リウドの村には、正確には宿がなく、元々この鉱山の麓に住んでいた人の家に居候するということになる。そのため、何かお土産が必要となるのだけど、僕たちには関係がない。他の冒険者たちのことは、歯牙にもかけない。

「ミスティ、あれ立てるよ」

「わかった!」

 素直にミスティが頷くと、僕たちは村から少し離れた場所に移動する。他の冒険者たちは既に、宿の取り合い状態だ。
 移動した先では、収納からテントを取り出して、それを立てる。これは僕が作った物で、将来必要になるかもしれない道具は全て、制作済みだ。
 僕とミスティの二人が入ればいいのだけど、5人用のテントをイメージして作り上げているため、結構な広さを確保しなければならず、だから村の中では建てられなかった。ちなみに、同じものがもう一つあるのだけど、出番がない事を祈る。
 そうしてテントを張ると、今度はそれにかぶさるようタープを張っていく。とは言え、簡単に組上がるようにしているため、労力も時間もかからない。たった数分で終わった。
 タープは縦10メートル、横幅4メートルで縦長のもので、周りは網で囲まれている。奥にはテントがあって、手前は少しのスペースがある。
 その少しのスペースに、調理器具と道具を広げた。
 ミスティはその間に、タープの周囲に不可侵領域を作り出す。これも魔法の一種で、結界魔法というものだ。
 ミスティは癒しの歌姫と呼ばれるようになってから、オリジナルの歌詞とリズムを詠唱としているため、そのまま定着してしまったという過去を持つ。彼女の楽しそうにしている歌声は聞いていて、本当に落ち着いた。何か嫌なことがあっても、乗り越えられそうだ。

 いつものように夕食を作り、ミスティと食べる。そのことになんだか、幸福を覚えた。
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