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【8】明日死んでもいいと思えるほどの……※ その2
しおりを挟む胸のとがりを舐められて「ギャン!」と子犬が鳴くような声をあげる。舐めるだけでなく、吸われて、甘く噛まれ、もう片方も指でつままれ転がすようにされて、たまらないと胸に張り付く男の頭を抱きしめる。
そして、腹がぬれた感触がして、男も胸から顔を離して下を見おろす。
「胸だけで、イッてしまったんだね。可愛いな」
薄い腹を汚す白い蜜を男の長い指がすくい上げる。それにほろりとアンドレアスが涙をこぼしたのに、ローランはあわてて「どうしたの?」とそのこぼれた涙をなめとって、大きな瞳のまなじりに口づける。
「粗相を……」
「ああ、これはそんなんじゃない。気持ちいいって印だよ。アンドレアス、君、子供の作り方は知っているよね?」
「それでも止めるつもりないけど」と小さな声でつぶやいたローランに、アンドレアスは「性交は医学書で学びました」と普段とは違う、どこかぼんやりした声で応える。それにローランは「医学書じゃ動物の交尾と同じだろう」と顔をしかめ。
「じゃあ、朝になって下着がこんな白い蜜で汚れていたことや、興奮して、今のここみたいになったことは?」
そう、一度果ててもアンドレアスの赤く染まった花芯はさきからとろとろ蜜をこぼして、健気に立ち上がっている。
「こんな風になったことは一度もありません。そもそも幼い頃におねしょした記憶もないのに」
普段は淡々と冷静沈着なアンドレアスの口調はどこか幼い。「君の口から“おねしょ”なんて聞くと、イケナイ性癖に目覚めそうだ」とローランはとんでもないことを言うが、今のアンドレアスはそれを理解できず、ただ潤む瞳で彼の顔を見つめるのみだ。
そして「そうか君の涙の味も、これを知るのも俺のみか」と指に絡まる白蜜をペロリとなめる。それにアンドレスも顔を寄せ、薄い舌を差し出し男の指を舐めて、顔をしかめた。
「なにしているんだい?」
「あなたが舐めるから、おいしいのかと……マズイ」
「うん、俺にとっては甘くさえ感じるけど、普通はマズイものだよ」
口直しとばかり、口づけられて舌を絡め取られる。ひとしきり唇を重ねたあと、アンドレアスは下肢をもじもじさせて、男の手を大胆に自分の尻へと導く。
「ここ、せつなくてなにかヘン……」
「ああ、ぬれているね」
「ひゃっ……うんっ!」
胸の愛撫だけで前もはじけたならば、後ろの蕾もすでに濡れていた。男性オメガは発情すれば雄を受け入れるために、そこが濡れるようになるのだ。
長い指は抵抗なくするりと一本奥へと入りこんだ。「痛くない?」と聞かれてアンドレアスがゆるゆると首を振る。「ここかな?」と奥のあるところに触れられると、今までよりいっそう甘やかで甲高い声が上がり止まらない。指が二本、三本と増えて、抜き差しをされても。
「や…だ……」
「ん? いや?」
「ちがう…の……欲し……っ!」
なんなのかはわからない。ただ、欲しいとうわごとのようにアンドレアスが言えば「うん、うれしいよ」とローランは言って、指を引き抜く。足りないけれど、それでも満たしていたものがなくなってしまったことにアンドレアスが、瞳を潤ませれば「欲しいのはこれだろう?」とぴたりとあてられたモノの熱に、こくりと小さく喉がなった。
望んだものだと本能でわかる。
これこそ自分の欲するアルファの雄だ。
誰でもいいわけではない。
「ローランの……ローランだけが欲し……」
ずぶずぶと侵入してきた太くて熱くて長くて、お腹のなかがいっぱいになるんじゃないか?というものに、嬌声があがってあとは言葉にならない。
「まったく、君は、僕を喜ばせる天才だ」
普段は朗らかなテノールも、余裕がなくかすれている。はあ……と獣みたいな吐息が肌にかかるのさえ、アンドレアスは甘い声をあげる。
あとはただ、単純な律動に夢中になって、腕を足を絡ませあって、どうしてひとつになれないのだろう?とばかりに隙間なく。
そして、男の欲望が胎内に放たれる瞬間、そこだけぼんやりしていた頭が突然、雲が晴れたみたいになってようやくもらえたと思った。
寝椅子で一度、では二度となったのは、アンドレアスが寝台への移動をうながすローランに嫌がって、繋がったままのその腰に脚をからませて、腰をゆらしたからだ。なにも知らなかったオメガだというのに、一度抱かれたら、もう男がどうしたら悦び離れなくなるのか覚えてきている。
ローランはその誘惑に耐えられずに獣のようにうなって、もう一度。そして、ぐったりしたアンドレアスを抱きかかえて、奥の部屋の寝台へと運びこんだ。海のように深い色の蒼の天蓋のカーテンを乱暴に閉めれば、そこは昼間だというのに、二人きりの海の底のようだ。
一度はぐったりしたアンドレアスは再びローランを求めるように白い手を伸ばして、ローランはその手を引いて、自分の膝の上に後ろ向きに抱きかかえた。「顔が見えな…い、いや……」とかわいいことを言うのに、「俺がこうして抱っこしているから大丈夫。それにこれならここも、放りっぱなしだったここも愛してあげられる」と胸の尖りを摘まみ、脚の間の花芯をやんわりと握れば甘える声をあげてのけぞる。
再び繋がって、その体位のまま、一度、二度と、三度……と。三度目はアンドレアスは放つものがなくて、なのにローランの熱い欲望を胎に受けて、いっそうぶるぶると感じたようにふるえて啼いた。
そして、ローランはいまだ消えない自分を誘惑する甘い芳香に導かれるように。
後ろから抱きかかえた細い身体の、うなじに歯を立てた。
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