8 / 84
【8】伝説の魔法剣士
しおりを挟むユキノジョウなんて名前なのだから、その魔法剣士は、昔の日本の人物なのかもしれない。もっとも、ユキノジョウという現代日本人もいないことはないが。
そのユキノジョウであるが、最初の勇者が現れたとき、聖女とともにこの世界に召喚されたという。勇者と共に旅をし、見事に魔王を討ち果たしたと。
その魔王討伐において受けた“恩恵”が不老だったのだという。
さらに次の勇者が現れるまで、彼は霊廟の石の棺で眠りについているのだと。
「不老の身体はともかく、なんで棺で寝ているんだ?」
まるで吸血鬼だ……とアルファード思う。いくら不老の身とはいえ、ストイック過ぎないか? と。
理由はわからないとダンダレイスは答える。
「神託によって勇者が現れたときに、ユキノジョウもまた目覚めて、勇者の元へとやって来る。が、今回は来なかった」
「勇者“候補”が二人現れたからだろうって、レジナルド殿下がわざわざ北の辺境にある霊廟まで“起こしに”いったのさ」
ところが石の棺の中は空っぽだったという。
「空の棺も気になるが、なんでレジナルド王子“だけ”が、伝説の魔法剣士様とやらを迎えに行ったんだ?」
「そのとき私は西の魔獣討伐をしていた」とダンダレイスは答える。ツイロも「俺も副団長として同行していた」と言い「いつもの妨害だよ」と続けた。
すべての勇者の魔王討伐に同行した伝説の魔法剣士ユキノジョウ。その彼をより早く“取り込む”ためにレジナルド王子のみを迎えに行かせたというわけだ。
「しかし、魔王がいて、神託により勇者が選ばれ、異世界より聖女が召喚されるって、いわば世界の危機だっていうのに、派閥争いなんて愚かしいことだ。
勇者候補が二人いるなら、二人協力してってことにはならないのか?」
たぶん、ならないんだろうなと思いながらアルファードは問いかける。それにダンダレイスが「そのとおりだ」とうなずく。
「私はレジナルドと争うつもりはないと十五で勇者の神託を受けたときに皆に告げた。次の王は彼だとも」
「王?」とアルファードは首をかしげる。ツイロがすかさず口を開いた。
「歴代の勇者は魔王に勝利したあと、必ずこのレスダビアの王になってる」
なるほど勇者となることイコール王位となれば、レジナルド王子の背後にいる者達は、どうしてもダンダレイスを蹴落としたいだろう。
「レジナルド王子はなんて言ったんだ?」
アルファードはふと気になり訊ねた。
「勇者に選ばれるのただ一人。どちらが選ばれようとも遺恨はもたぬようにしよう。私が勇者に選ばれたときは、喜んで協力すると言った」
「ふうん。優等生の答えだな」
脳裏に浮かぶのは昨日見た、完璧な王子様の完璧すぎる微笑だった。
そして“爆弾”を落とすことにする。
「ユキノジョウという魔法剣士の棺は空っぽで当然だな。彼は不老を捨てて、次の転生に入ったんだから」
「どうして、それを知っている?」
ダンダレイスが固い声で訊ねる。モップの前髪で表情は見えないが、緊張しているのはわかる。
「そりゃ、ユキノジョウは俺が来た世界の住人で、あっちの世界の神様が転生させたって言っていたからだ。
そして、その魔法剣士の知識と魔力と経験を俺はこんな姿になった“代償”としてもらった」
「この部屋にいる者達に告ぐ」
がたりと椅子から立ち上がり、ダンダレイスが口を開いたとたん。部屋が重苦しい空気に包まれた。これは魔力による圧だ。彼の長身からすさまじい気が発せられている。
「ただいま、この部屋で見聞きしたことは、私、ダンダレイス・ クライゲラヒー・モーレイの名によって禁じる」
「おい、魔法禁約なんて、大げさな」とツイロは口を開くが、そのとたんダンダレイスが彼に向けた圧が大きくなった。ツイロが「誓う」と苦しそうに告げたとたん、その圧は消えて、彼はホッと息をつく。スティーブンも、給仕のために壁際に立ってたフットマンやメイドも「誓います」と口にした。
魔法禁約は魔力よって相手の行動に制限をかけるものと、これもアルファードは受け継いだ知識で知っていた。ただし、相手の自由を奪う禁呪でもあるので。それを使えるのは国王にそれを許された王族に、国の機密にかかわる宰相や大臣だ。ダンダレイスは王族であり、第三騎兵隊長という役職から使えるということか。
ただし、この禁呪を使用するにはかける相手に対して、絶対的な魔力上位者で無ければならない。それからしてダンダレイスの魔法の技量はそうとうなものだとわかる。
「あなたもこの事は他の者達に話してはいけない」
ダンダレイスの差し出した大きな手に、アルファードは素直にちょこんと乗った。彼の目線の高さまで持ち上げられて告げられる。
66
あなたにおすすめの小説
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる