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末っ子は大賢者!? ~初恋は時を超えて~
【61】ぺちぺちぺちのぷぅぷぅぷぅ!
しおりを挟む湖の高台。見事に星堕としを成功させ、さらには現れた怪鳥を瞬殺で葬り去った。そのアルパとモモの周りに人々が集まり、口々に感謝と祝いの言葉をのべる。
そこにゆっくりとブリーの肩を抱いたカルマンが近づく。ノクトとスノゥ以下の四英傑が道を開ければ、周りを囲んだ人々も自然と別れる。
「新たな勇者殿、このサンドリゥム王国を襲った災厄を見事退けていただき、礼を申し上げる」
「いえ、私だけの力ではありません。皆様の助力となにより、我が盟友にして番であるモモ殿のおかげでもあります」
「番」とアルパが口にしたことに、周囲が「おお」と声をあげる。
「なるほどお似合いだ」
「お噂では先王カール様のお孫であらせられるとか」
「勇者の血を引く従兄弟同士の結婚とあれば、誰も文句をつけられまい」
周囲のざわめきにカルマンはぐっと拳を握りしめながらも、笑顔を浮かべる。
「魔法の腕は一流だが、末っ子故甘やかして育ててしまった。そのようなワガママ息子であるが、幸せにしてやってくれ。よろしく頼む」
カルマンの言葉にモモがそのパパラチアの目を見開いて「お父様」とつぶやく。そして、アルパはすっと片膝をついて、そのカルマンに頭を垂れた。
「ご挨拶が遅れて申し訳ない。この私を息子さんの番として認めていただきたい」
カルマンが「うむ……」と苦笑しながら頷いた瞬間そこに「ちょっとじゃねぇ、絶対待ったぁああ」の声が掛かる。
クロウだ。他の兄弟達は父カルマンの決めたことなら……と一様に不承不承の表情ながら黙りこんているなら、彼が血走った目をかっぴろげて、なおかつ涙を流すという器用なことをしながら「俺はぜってー認めねぇぞ!」とわめく。
「たしかに俺達は鍛錬場でコテンパンにやられた。父上もやられた。お前が強いのも認める。今のでっかい鳥倒したのだって、俺達兄弟全員だって出来るかどうか……だから、お前が勇者だってのも本当なんだって、わかる」
そこまで一息で言い切って、クロウは「はあ……」と肩を揺らす。
「でも、お前がモモの番だって、俺はぜってー認めねぇ。誰がなんて言ったって、モモが、モモが誰かにとられるなんて嫌だぁ!」
九男とはいえクロウもよい歳をした男である。それが足までジタバタさせて叫ぶ様はまるで駄々っ子だ。
これには流石のカルマンも呆れた顔で、とっさに対処出来ないようだった。クロウが歳の近いモモを一番可愛がっていたのも知っているのもある。時々からかいが過ぎて、れいの結界コロコロの刑を受ける回数が一番多かったにせよ。
そこで動いたのはなんと……。
「き、聞き分けのない子は、い、いけません!ぷ、ぷぅ!」
なんとブリーだった。カルマンの腕から抜け出して、ぺちぺちとクロウのたくましい胸を、拳で叩いた。本人一生懸命だが、ぺちぺちという音しか出ない。
さらに、ぷぅ……も純血種の兎ではない故に、あくまで「ぷぅ」と言っているだけのものだ。しかも、涙まじりで「ぷぅぷぅぷう」と言いながら、ぺしぺしぺし……と。
「は、母上……」
これには同じく泣いていたクロウの涙も引っ込み、胸を叩かれるまま、おろおろとしている。それをカルマンが後ろから手を伸ばして、ブリーの手を握りしめる。
「ダメだ、お前の手が痛んでしまうだろう」
いつもの雷のような声はどこにやら、優しくブリーに言い聞かせるカルマンであった。いや、注意するのはそこなのか?と周囲の誰もが思った。
カルマンは涙でぐしぐしのブリーの顔を取り出したハンカチでぬぐってやる。これはブリー専用のいつでも携帯している清潔なものである。ちなみに予備に三枚いつも持っている。
お鼻チーンまでしてもらい、ブリーは塗れた茶水晶の大きな瞳でクロウを見る。
「弟の幸せを願わないお兄様なんていけません!」
「は、はい、母上反省しています。お、俺は心からモモの幸せを願っています」
「では、二人を祝福しますね!」
「う……は、はい!」
それの光景を見ていたスノゥが微笑み。
「やっぱりあの家で最強なのはブリーだな」
「我が家でも同じだと思うが」
それにそう返したノクトだった。
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作者の新作情報はtwitterにてご確認ください
https://twitter.com/sima_yuki
次回作→『落ちこぼれが王子様の運命のガイドになりました~おとぎの国のセンチネルバース~』
【同一作者の作品】
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