ウサ耳おっさん剣士は狼王子の求婚から逃げられない!

志麻友紀

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狼勇者とウサ耳剣士と可愛い子供達は最強家族!【ノクト×スノゥ+子供達編】

【23】狼と兎の仲良し家族は永遠に【第二部完】※

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「今夜はゆっくり休むつもりだったんだけどな」
「ああ、休もう」
「……とても、すやすやおねんねさせてくれるつもりがない、お手々だがな」
 大公邸の夫婦の寝室。あのあとは、ナーニャやグルム、モースも交えて、お疲れさまの意味もこめて夕食をともにして散会となった。
 シルヴァもアーテルも眠いとそれぞれの部屋へと行き、自分達も……と寝室にはいったら、いきなりノクトがスノゥを横抱きにして寝台へと。
 当然のように着ていたチュニックをめくりあげる、大きな狼さんのお手々をぺしりとやってやる。拒絶の意思はないので、あくまで軽く。
「嫌か?」
「…………」
 ベッドまで性急に運んでおいて、ここで聞くのはずるい。それでも妻の意思を確認してくれる、よい夫なのだろうが。
「別に今すぐ本当にすやすやおねんねしたい訳じゃねぇよ」
「うん」
「明日はゆっくりしていいわけだし」
「うん」
「……それに確かにここ数日はしてなかったしな」
 子供達がいなくなってからは、さすがにそんな気分じゃなかったし、ノクトもスノゥを安心させるように抱きしめて眠るだけだった。子供達と再会したあとは、あの隠れ里の集会所で家族一緒に寝ていたから、当然そういうことはしてないし。
「……まあ、ほぼ毎日のようにしてるからなあ。俺達……って、なにいわせるんだ!」
「ああ、だからお前を抱きたい」
「…………」
 正直なことで……と思う。了承の証に手を伸ばして、その黒髪を撫でて今さら気になった。
「そういえば、あんた思いきりなぐられてなかったか?」
 押し倒された姿勢から起き上がって伸び上がり、黒髪につつまれた後頭部を撫でる。超絶美形な顔と同じく、こんなところまで形のよい頭の線はいささかもでこぼこしておらず、ホッと息をつく。
「大事はない」
「この石頭め」
 それでもそこをなでなでしてやると、めくりあげたチュニックの胸元に顔をうずめられて、ちゅっと胸を吸われた。
「……すまん、甘い」
「も、子供達の分を取る悪い父ちゃんだな……」
 未だカルマンとジョーヌが乳離れしてないスノゥの真っ平らな胸は乳がホンの少し出る。元々量は少なく、初乳を与える役目を果たせばいいとばかりに子供達が生まれて半年を過ぎる頃には、あまり出なくなってしまうので、完全に乳母の乳に頼りきりにはなっているが。
「ま、いい。今夜は見逃してやる」
「吸ってもいいのだな?」
「改めて、そう言うとなんか……やらしいな……んんっ!」
 久々のせいなのか、ノクトの唇にじゅっと吸われて、びりびりとそこから広がっていく甘い切なさに声をあげる。赤ん坊に吸われたって当然そんな気にはならない。穏やかな気分でたくさんでねぇけど飲めよ……と思うぐらいだ。
 だが愛しい夫にそうされると、たまらなく感じるからこれぞ人体の不思議だと、思っていると乳首に軽く歯を立てられた。これだから大きな悪い子は……と黒髪を軽く引っぱってやる。
「ふ…ぅ……んんっ!」
 悪い子のお手々は背中のくぼみをたどるように滑り降りて、尻の丸みをなであげてその谷間へと。当然のようにアヌスを撫でて、香油をまとったぬるりとした指がなかに入りこんでくる。
 何度抱こうともスノゥのうちを慣らすことに手抜きをしない指は、丁寧に押し広げていく。一本、二本、三本。早く……とは思うが、このあと挿入ってくる勇者様のそちらも勇者様な大きさのあれを思うと、ここで焦ってはいけないことはもうわかっている。
「も、きて…くれ……」
「ああ」
「うんっ……」
 指が抜き取られて長大なものが胎におさめられていく。奥をトンと突かれて「は…あ……」と息をはく。
 こちらが誘うように、ゆらりと腰をうごめかせれば、それにあわせて突き上げられる。ゆらゆらとゆっくりだった動きは、お互いに高まる欲望を現すように激しくなる。
 「あぁあっ!」と高く啼いて、ひときわ深く突き上げてきた男の腰を逃さないとばかり、無意識に足を絡めて引き寄せる。なかへとたっぷり出されても、なお萎えない剛直に、スノゥは微笑む。
「まだする?」
「当然だ」
「ん~普通ならこの一晩で孕みそうだなぁ」
「作るのか?」
「いんや、今度こそカルマンとジョーヌが大きくなるまで作らないぞ」
「私もそのつもりだ」
 もちろん予定外とはいえカルマンとジョーヌは愛おしい来訪者だ。四人の子供が大きくなったならば、また新しい家族を迎えよう……と。
 誓い合うように狼と兎の夫婦は、その晩、幾度もむつみ合った。



 翌日、昼近くに起きたら、アーテルに「父様と母様は昨夜はずいぶんと遅くまで仲良くしていたんだね?」と言われて、どこまでこの子は知っているのか? とちょっと冷や汗をかいた夫婦だった。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



 その後。
 カール王とノクトにはめられただなんだと文句をいいながら、スノゥはノアツン大公を名乗ることになった。これによって、グロースター大公配および、ノアツン大公という呼び名が増えた。署名の文字数が多くなったと、スノゥはまたぶうぶう文句をいった。
 雪豹達の北のグロースター大公領への移住は順調にすすんでいる。迷いの森の隠れ里と大公領を行き来できる転送陣が設置されて、女子供や老人達はグロースター大公領に作られた集落にて暮らし、若い雪豹の戦士達が隠れ里に残り、狩りをし森を守る日々だ。
 彼らの狩る上質な毛皮は、マダム・バイオレットがさっそく目をつけて高値で買い上げた。グロースター大公夫妻の身を飾った、黒貂と白貂の毛皮は王都の流行となった。マダムの店はサンドリゥムのみならず、国外の王侯からも注文がはいるようになり、ますますの大繁盛だ。
 牧場のほうも雪豹たちが入植したことによって順調に拡大している。天性の狩人である彼らは獣の習性を熟知していて、ボアやコッコの扱いも子供達でさえ慣れたものだった。こちらも来年には徐々に王都から、他の都市へと卵や肉が出回るだろう。毛織物に関しても、製品が数年後には出荷される予定だ。
 三か月後に開かれた大陸会議においても、ノアツン大公国は、内乱によって代表者の出席者のなかったルース国を除いて、すべての国に承認されることとなった。これはサンドリゥムという勇者を有した大国の後押しがあったからだったが。



 そのさらに数年後の大陸会議において、サンドリゥム宰相となったグロースター大公ノクトと、その大公配にしてノアツン大公スノゥの連名によって、兎族の子供達に関する一つの提案が出されることになる。
 その数年前には彼ら夫婦によって兎族の秘密。愛し愛された者達の間にしか、愛し子は生まれないとのことが公開されていた。
 彼らの提案は隔世遺伝によって生まれた兎族の子の保護であった。彼らの娼館や歌劇団への売買を禁じ孤児院にて保護する。
 すべての国の賛同は得られなかったが、意外なほど多くの国がこの提案に賛同することになる。その裏にはこの会議に参加していた数多くの国の特使や貴族達の中に秘密とされてきた祖先に兎族を持っている者が、また兄弟に隔世遺伝にて血が出た者がいたからだ。
 隠されていた兎達が世の中に出るにつれて、彼らの能力が歌舞音曲に特化しただけのものではない。学術や技術に優れた者もいるとわかった。
 古の部族や種族で争っていた戦乱の世は遠くなり、大きな国に統治された穏やかな世では、兎達もまたごくごく普通の人々に交じり働くようになっていった。
 もちろん、それには長い時間がかかったが、ノクトとスノゥから始まったグロースターの血と呼ばれる純血の兎達は、各国へと散らばりそれぞれの愛しい番とともに、同胞達の保護と活躍を助けた。
 それはまた別のお話にて……。


 


   END




────────────────────

これにて第二部終了です。
が、子兎たちのお話とか、普通の兎さんたちのお話とか、まだまだ、ノクトとスノゥのお話は書きたいので、ぽちぽち投稿していきます。




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