ウサ耳おっさん剣士は狼王子の求婚から逃げられない!

志麻友紀

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狼勇者とウサ耳剣士と可愛い子供達は最強家族!【ノクト×スノゥ+子供達編】

【2】夫婦の秘密※

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 宴が終わって散会となり、双子達も眠りについた。そして夫婦の寝室。

「最近、酔われると口癖のようにいわれるな」
「父上か? 三人目はどうか? という」

 「嫌ならば、私からそれとなく……」という夫の言葉にスノゥは首をふる。

「別に嫌な訳じゃないさ。孫に囲まれたいお爺さまの気持ちもわかる」

 「それに俺がその気になればいつでも作れるんだし」というスノゥにノクトが眉間にしわをよせる。

「お前に無理強いはしたくない」
「無理強いされても作れるもんじゃないさ。俺とあんたが愛し合ってなきゃ……んっ……」

 肩を引き寄せられて口づけられる。最初から舌を絡めるそれに、スノゥは石榴色の瞳をうっとりと細めて、夫の首に両腕を回す。
 これは夫婦だけの秘密。いや、本当は兎族のスノゥだけの秘密だった。母にさえ「愛する人にもいってはダメよ」と言われていた。だけどノクトには打ちあけていた。

 兎族は雄雌問わず懐妊ができ、どの種族とも交配が可能だ。しかし、妊娠の確率は非常に低いと言われている。それには理由がある。
 愛し愛された兎が心から子を望まなければ、そこに命は宿らないのだ。そして、その愛の形として子供達は生まれてくる。
 銀の糸をひいて唇が離れて、スノゥはノクトを見上げる。

「あんたは? 三人目は欲しく無いのか?」
「お前の好きなようにすればいい」
「それで本音は?」

 さすがに短い付き合いではない。夫婦なのだ。欲のない勇者様だが、こと自分の妻に関しては欲深いことはわかってる。

「お前の仔なら、幾らでも欲しい。なんならば百人でも」

 「そりゃ俺の胎が空く暇がないな」と苦笑する。そして夫を見つめて口を開く。

「俺達には三百年の寿命がある」
「ああ」

 これは二人が純血種であるからだ。平民が八十年そこそこの寿命にたいして、王侯貴族が百五十年。
 そして純血種と呼ばれる者達は三百年の寿命を誇る。彼らは祖先の野生の血が濃く、身体能力や魔力がずば抜けている者がばかりだ。
 ノクトが現在三十歳で、スノゥはそれよりさらに十五歳年上の四十五歳であるが、二人の容貌は二十台前半の若者のものだ。長身でがっちりした体型のノクトよりも、細身のスノゥのほうが年齢不詳さは顕著であり、だからこそナーニャに“儚げ系美青年詐欺”と言われるわけだが。

「おそらく二百歳近くになるまで俺達の容貌は変わらないと思うぞ。そこまでがガキが出来る年齢だとしてもだ。あと百五十年近くあるわけだ」
「時間はたくさんあるな」
「そういうことだ。だから、今のガキ共が独り立ちするまで、次は作らなくていいんじゃないかな? と俺は思ってる」

 スノゥのいう独り立ちというのは、一般的な貴族の子弟の成人年齢とされる十五歳だ。この歳で男子なら騎士の叙任を受け、女子ならば社交界にデビュタントとなり婿捜しを始める。

「そうだな、一人一人の子供に手をかけてやりたいという、お前の気持ちには同意だ」
「……あんたはそれでいいのか? たくさんの仔に囲まれたいって……」
「それはお前の仔ならばな。しかし、繰り返すがお前に負担をかけてまでは望まない。それに……」
「それに?」

 珍しくいいよどんだ、年下の夫に聞き返せば、彼は視線をかすかに横に泳がせ、自分より薄い肩を抱き寄せて妻の長い耳にささやく。

「子供達にあまりかまけてくれるな。お前を独占出来なくなのも嫌だ」
「独占なら毎夜してるだろう?」

 もう一度深く口づけあって、寝台に倒れ込んだ。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



「んぁ…ふぁぁあ…ん……」

 口づけはいつまでも飽きることはない。
 何年たっても。
 何回交わしても。

 胸が高鳴るのはなんでだろう? なんて、ずいぶんと青臭いことを考えてしまう。
 そんな風に意識を飛ばしていたら「あぅ……」と声を思わずあげた。舌先を軽く噛まれたのだ。痛くはないけどこちらに集中しろと。相変わらず独占欲の強い夫だ。
 わかっている。仕方ないな……とばかり、黒髪の頭を撫でてやる。頭の上の黒く尖った狼のお耳のなかに、軽く指をいれてその和毛をこしょこしよすれば、ぴくぴく動く。

「ふぁ……ん」

 お返しとばかり、長い耳の根元を軽く噛まれて舐められた。ちゃりっと……左の片耳のピアスが音を立てる。今日のピアスは月の涙なんていわれるしずく型のパールを花の形につらねたものだ。
 当然、朝、夫自らがてづから、スノゥの耳につけた。
 耳から、こめかみ、まなじりに唇がおしあてられて、子供を育て出してからつるつるのままの頬をなめられて、さらにあご先をれろりと。そして首筋、同じ男の印の喉仏をすっぽり唇でおおわれ吸われて、はくりと息をする。

 そのあいだに手は胸へと、乳首を摘ままれ尖った先を爪先で軽く突かれて声をあげる。もう片方はじゅっと吸い付かれて「あ、あ、あ……」と。
 双子の授乳中は吸い付くのもいじるのも禁止したら、この我慢辛い狼さんはそれを守ってはくれたが、その後なんか、さらにこだわりが強くなった気がするのは気のせいじゃ……ないだろう。
 男の胸に吸い付いて楽しいのか、ふざけて訊ねたことがある。生真面目な狼さんはしばらく熟考して口を開いた。

「他の男の胸にはなにも感じないが、お前の真っ赤な乳首には吸いつきたい」

 大変正直な回答に、スノゥが白いお耳の内側の先まで真っ赤にしたのだった。

「も……しつこい……!」

 胸にちゅうちゅういつまでも吸い付いているのに焦れてスノゥは下へと手を伸ばす。執政官としての机仕事が多くなっても、くっきり割れて衰えることのない腹筋をたどり、黒い下生えをさわさわなぞって、さらにすでに熱いペニスに触れる。
 握りしめるとどくりと脈うつのが指に感じる。尖った耳がぴくりと動いたのにも、スノゥは艶然と微笑んで手を動かす。

 すると大きな手がスノゥの桃色のペニスに触れる。そこも既にそそり立ち先から蜜をこぼしていた。しかしスノゥはそれに恥じらうことはもうない。ちゅうちゅう胸に吸い付いて、こうしてくれたのはこの狼の夫なのだから。
 片手で頭を抱いていた手で髪の毛をくいくいひっぱり『早く……』と催促すれば、乳首を吸っていた唇から、ふっ……と笑う息がかかって、それにさえ「あ……」と反応してしまった。
 こちらのおねだりにはしっかり応えてくれて、二つのペニスをまとめて、スノゥの手の上からノクトの大きな手が重なる。

「あ、あぁあ……あ……」

 こうするのは大好きだ。
 兜あわせというヤツだが、これが自分達の初まりだったせいかもしれない。所詮しごきあいっこが、いつのまにやらこの王子様の手練手管にのせられて尻まで許してしまっていた。
 そうだ。それに関してもスノゥは目を据わらせて訊ねたことがあったのだ。

「あんた慣れすぎだろう! 俺の前にさぞ男だろうが女だろうが経験積んだんだろうな!」
「心外だな。私はお前以外知らない」
「じゃあ、なんであんなに上手かったんだ!」
「私は頭の中で戦術を組み立てるのは得意だからな。その通りに身体を動かすのも」

 それはスノゥにも覚えはある。頭の中で考えた通りに身体を動かせるのもまた、戦闘に優れた者の本能のようなものだが。
 しかし、それを閨に応用するなんてだ! 

「毎日、どうすればお前の尻を征服できるか考えた」
「そんな恥ずかしいこと考えるなよ! 勇者が!」

 訊くんじゃなかったと、やはりお耳の先まで真っ赤にした兎さんに狼王子は訊ねた。

「お前のほうこそ最初からためらいもなく、私に手を伸ばしたではないか。いや……私に出会うまえのお前のことをとやかくいうつもりはないが」
「あんたのほうこそ失礼だな! 俺はあんたのデカいのを握りしめるまで、自分のしか処理のために扱いたことしかなかったよ」
「では、私以外の男とは?」
「男なんてゴメンだし、閨で長耳さらして女を抱いたこともねぇよ!」

 叫んで、自分が三十過ぎのいい年まで誰も知らず、さらにノクトしか知らないと暴露した形になって、スノゥは逃げ出そうとしたが。
 当然、歓びに尻尾をブンブンさせた王子にとっ捕まって、おおいに啼かされた。
 そして今も。

「うああぁあっ!」
「っ!」

 二人同時に手の内のペニスを震わせて達する。仰向けのスノゥの腹に吐き出された互いの白い欲望を、ノクトは混ぜ合わせるようにして指先にとる。そして、足を開いたスノゥのアヌスの周りをなぞり、ゆっくりと指をいれる。奥まで入りこんだ長くて太い指にぐるりとなかをかき回されてスノゥは息を呑む。

「あ……もうっ…早…く……」
「まだだ、一本しかはいってない」

 「二本目」と言われてまた甘い声をあげる。
 けしてスノゥに痛みなど与えまいとする、この若い夫の忍耐はわかるし嬉しいし、甘い気持ちになるからこそ焦れったい。
 だから「もう、いいから……ツッコめ」と腰を振って、ようやくの三本目の指が抜き取られて、奥まで突き入れられた充足感に息をつく……間もなく。

「あぅ…あ……いきなり動…く…な……」
「すまん、我慢がきかん」

 そう一つになってしまえば、もうたくましく動く腰の動きは止まらず、スノゥも付き合い白い身体をくゆらせて、そうして。
 スノゥは再び嬌声をあげて、ノクトは息を呑み。
 そして、しばらくははあはあという、互いの呼吸音が続くが。やがて、衰えないスノゥのなかの長大なペニスを、ずるりと抜かれると思ったら、また突き入れられて「あ!」と声をあげる。

「もう一度……な」
「今夜も一度どころじゃない……だろっ!」

 それ以上は言葉にならなかった。
 さて、今夜は何回になるのやら。





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