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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【21】神様会議 その2

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 魔界となったモルガナから、危機一髪でもないが神域へと召喚されて、さて、魔王となったフィラースをジークが倒せば、次の魔王がジークになる。
 それは困るとコウジの世界の神は言った。

「久々に創った可愛い息子の八咫烏やたがらすが闇堕ちなんて、悲しいじゃないか」

 息子って……あんたは俺のお父さんか? と神様をじっと見てると「パパって呼んでいいよ」と言われたが、無言でスルーした。いや、呼ばないって。
 「つれないなぁ」と顔の見えない顔は肩をすくめて。

「まあ実際問題、あの魔王は放置しておけないよ。このままの繰り返しならば、因果律の蓄積によって一つの次元を滅ぼす災厄といつかはなる」

 それは一つの神の創世世界を侵食するどころではない。神々の集合体の次元を襲う巨大な災厄となるという。
 「下手をすると地球まるまる呑み込まれるって話だよ」と神は恐ろしいことを言う。

「だったら、今のうちにあんたら神様達で、魔王を抑え込んだらどうなんだ?」
「堕ちたとはいえ魔王は神だよ。その存在は不滅だ。滅びないからこそ、勇者を生み出した神は頭をひねって、あのシステムを生み出したんだろうねぇ」

 魔王を倒したとたんに異世界の勇者は、己の非業の死を思いだし、その絶望に染まった魂は次なる魔王となるために眠りにつく。
 魔王の眠りとともに魔界は次元の海を漂う。そのあいだ、他の世界の平穏は脅かされることはない。

「俺から言わせりゃ先送りのうえに、誰かの犠牲の上に成り立つ胸くそ悪いシステムだけどな。
 あんたら偉い神様からすりゃ、たった一つの魂の犠牲で世界が救われるならいいって考えなんだろうけどな」
「そうだよ。それで世界が平和ならいいじゃないか」
「…………」

 あっさりと神は言う。それにコウジも黙りこんだ。
 人は人、神は神だ。根本的に考えが違うのだとはわかっている。そこに可哀想だのなんだのなんてないんだろう。世界の均衡を保つには機械のような理知的な思考が必要なのかもしれない。
 の、わりにコウジが出会った神々は、酷く人間くさいが。

「それでどうするんだ? これ以上、魔王は倒せないんだろう? だけど、このまま放置も出来ない」
「ん~だからね。いっそ、魔王を神の座にもどそうと思うんだ」

 「は?」とコウジは声をあげた。隣のジークも軽く目を見開いている。魔王を神様にする? 

「もともと魔王は堕ちた神だからね。それを復権させるってことさ。そうなれば、彼は私達のルールに縛られることになる」

 神々同士の直接対決の禁止のうえに、魔界は一つの創世世界として座標が固定されて、他の世界への干渉は難しくなるという。

「ただまあ、私一人の意思では、堕ちた神を再び元の座にもどすことは出来ないからね。みんなとの話し合いになるが」

 「創世神会議ですわね!」とアルタナが妙に弾んだ声で言う。「わたし、初めてですわ!」と。それにコウジの世界の神も「本当に久方ぶりだからねぇ」などと言っている。神様の久方ぶりってのは、どれほどぶりなんだ? 

 そして、銀の鳥かごに閉じこめられていた白い蛾の形のモルガナが、ガンガンと駕籠に体当たりしている。それにコウジの世界の神が「アルタナの妹よ、話ぐらいは出来るようにさせてあげなさい」といい、アルタナが「仕方ないですわね」と言ったとたんに、モルガナの声が響いた。

「兄様! 魔王にとられたわたしの世界は戻ってくるんでしょうね!」
「モルガナの妹よ、それに関しては諦めなさい」
「どうして!」
「そもそも、今回のことは、魔界に接触されるだけの“隙”を見せた、君にも責任はあるんだよ」

 遠回しにモルガナ女神が、アルタナ女神の世界たるフォートリオンに手を出さなければ、創世世界を守る結界に穴を開けることもなく、魔界の侵攻もなかったわけだから、それを兄神はちくりとやる。
 ちったあ兄貴らしいことを言うじゃないか……とコウジは内心で感心したが。

「ま、世界なんてまた創ればいいじゃないか?」

 と、軽く彼は言った。うん、本当にこういうところ神様だな。神様だから世界なんて簡単に創れるか。

「コウジの世界の神よ」

 そこになにやら考えこんでいたジークが口を開いた。

「その会議というのはどれほどの時間がかかるのだ? 神々の話し合いとなれば長くなるのではないか?」

 その言葉にコウジも目を見開く。そうだ。会議なんて長引くもんと決まっている。それも神様会議なんてどれほどの数が集まって、意見が割れるやら……と考えると頭が痛くなってきた。

「おいおい、ちんたら話し合いなんてしてる合間に、ジークが魔王を倒しちまうっての、また魔王と勇者の戦いを何回繰り返せばいいんだ?」

 いや、コウジとしては魔王となったジークを勇者に倒させるつもりはない。そもそも、ジークが魔王になったら、他の神々の世界に侵略なんてしないで平和に魔界を治めそうだ。その傍らで自分は昼寝でもしていようか? 
 あ、これ意外な解決方法なのか? なんか納得できないけど……とコウジが思ったとき、重役机の向こうから「それはダメだよ」の声がした。

「だから、お父さんとしては久々に創った可愛い息子を闇堕ちさせたくないんだって」

 「誰がお父さんだ! 誰が!」と返すコウジに、重役机の向こうで手を組んだ顔の見えない神は口を開く。

「それに関しては心配いらないよ。会議がどれほど長引こうと、君達の時間の流れとは関係ないからね。
 私達からすれば長い長い時間としてもだ。君達からすれば私達の姿が消えたのもわからない瞬きのあいだに話し合いはすんで、今、この瞬間に魔王は神の座にもどされるということだ」

 なるほど、神様時間という奴か。さっぱりわからないが。それにまたジークが口を開いた。

「だが、神の座の復権と同時に他の世界への侵略行為の禁止を、あの魔王が納得すると思うか?」
「魔王が納得しようとしまいと、神々の決定によって彼は縛られるよ。ああ、多少暴れたり反発したりしたら、議題を言いだした私が抑えないといけないかもねぇ」

 その兄神の言葉にアルタナが「そんな! 兄様が魔王をメッ! したら、わたしの世界が壊れてしまいます!」と悲鳴をあげる。メッ! って……メッ! ってそれで神様の世界が壊れちまうのかよ! 
 たしかに神々同士の戦いが禁じられているはずだと、コウジは妙に納得した。しかし、フォートリオンが壊れるのは困る。

 魔王はフィラースだ。理想を掲げながらも夢には溺れない。目的のためには時には手段は選ばない、冷徹な現実主義者。まあ魔王にぴったりではある。
 が、同時にあれは熱き革命家だ。夢もなにもない冷めた目で煙草をゆくらせ、皮肉に口の片端をつりあげる傭兵に、世界を変えるのだとその身にあまる情熱を語るような……だ。

 ま、男なんてものはいつまでも変わらないのかもしれない。夢見るヒーローであり、それこそ、どろんこになって取っ組み合いのケンカをしていたガキの頃のまんま……。

「ジーク、フィラースの奴とガチンコ勝負して、絶対勝て。ただし、殺すなよ」





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