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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【17】みちしるべ※ その2
しおりを挟む背中に羽があるから……ってわけじゃない。別の異世界の人間には翼がある奴もいるだろうし。魔王城で世話になったリンベイの背は透ける羽が四枚あった。彼女はやはり魔族ではなく、併合された世界の他の種族だと言っていた。たしかエルフィ……だったか。
だから、なにが人間か? なんてその世界でコロコロ変わるものだろう。魔族だって魔界に暮らしているヒトってことになるだろうし。
だが、コウジはそのどこにも属していない。魂は地球の日本で生まれたものだ。だけど、それ以外を形作る身体も記憶も経験も、神が創り上げたもの。
さらにはコウジは、コウジの世界の神曰く“進化”したという。
進化とは良い意味に捉えるべきなのだろうが、それはより、ヒトというものから離れたと言えないか?
“御使い”とフィラースはコウジのことを呼んだ。自分がそんな大層なものだとは思わない、思いたくない。
コウジの世界の神は独り言のように「まさか神代のはるか昔ならともかく、ここにきて新たな八咫烏が生まれるなんてね」と言っていた。カラス、カラス、まあ羽は黒いけどよ。
「あなたはあなただ」
ジークがそう言って、窓の外を見つめるコウジを後ろから抱きしめる。
それだけで揺らいでいた自分という存在が、すとんと両足をついたような感じになるから、単純なものだと己を笑ってしまう。
自分をこの地上に繋ぎ止めるように包みこんでくれる力強い腕。こてんと広い胸に頭を預けて、コウジはふふ……と笑う。
「お前は俺の道標だな」
「私が?」
「うん、どんなに高く飛んで離れたとしてもさ……」
それは距離か、ヒトというものなのか、両方だろう。
「俺は俺だとお前が見てくれる限り、俺はここに戻ってこれる」
抱きしめる腕にぎゅっと力がこもる。「苦しいぞ」とたいして苦しくもないが、ぽんぽんと腕を叩くと、ふわりと身体が浮いて抱きあげられていた。いつものごとく腕に尻をのせられて、軽々と子供抱きだ。
おい、いくら細くても俺は成人男子だぞと思わないでもない。子供じゃないぞ。いや、おじさんだけどと自分にツッコミながら、ジークの形のよい唇に自分の唇を押しつける。
何度も何度も小鳥の挨拶みたいに、唇だけを押しつけ合って、それだけではやっぱり満足など出来なくて、舌を絡ませあい、互いの口中を貪るように。
身体の熱が緩やかにあがっていく。とさりとベッドにおろされて、着ていたガウンのなかに入りこむ大きな手。いつもより性急ではなく、ゆるゆると撫でるそれに、コウジは「くすぐってぇ」とくすくす笑う。
「なに? ちょっと落ち込んだおじさんに優しくしてくれるの?」
「私はいつもあなたを大切にしているつもりだが」
「そのわりにいつもおじさんをヒィヒィ啼かせてない?」
肌をすべる大きな手も指も、唇も舌も、やはりいつもより穏やかで大切な宝ものだと言われているようで、くすぐったい気分になる。いつもからすればもどかしい、もっと強くと思うこともあったが、口にはしなかった。
今は確かにこんな風に包みこまれるようにされたかった。この年下の男に思いきり甘やかされようと思う。
いつものような激しさではなく、身体の熱がゆるゆるとあがっていく。コウジのヒトとして形をたどっていく手と唇に、じわじわとともされる熱にたしかに自分はここに肉をもってあると思う。
だからもっと確かめたいのだと焦れて「欲しい、くれよ……」とねだれば、望みのものが与えられる。じぶんのうちに男の熱と形を感じて、ほうっと息をつく。
しばらく抱き合って動かずにいて、コウジが「も、動け」と言えば、ゆるゆる赤ん坊をあやすみたいに揺らされて、そのくせ、奥の奥まで入りこんで突き上げてくるそれに、しなやかにのけぞりもはや言葉にならない、うわごとみたいな声をあげた。
「もっと」「もっと……」なんて言っていたと思う。
もっと、お前も俺も確かめさせてくれ……と。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
そんな風に抱き合って、朝になったんだか、夜になったんだがわからず、ベッドの中に閉じこもっていた。風呂にもはいったが身体を綺麗にしたとたん、結局盛り上がって抱き合っているんだから、意味なんてない。結局、ぼんやりしたコウジをまたジークが世話してくれたのだが。
腹がすいたな~と食事もベッドで、こんな自堕落な……とは思わない。いきなりの女神様の召喚からこっちの騒動と逃避行を思えば、しばらくは休んだって文句は言われないだろう。
が、それも、たった一日で終わることになる。時間も忘れていたから、結構お籠もりしていたつもりで短かったらしい。
「……意外と早かったな」
「軍を早く動かせるというのは、優秀な将の証だ」
気に食わない相手でも、その良きところは認める。潔い王子様にコウジはクスリと笑う。
「にしても、お城ごとやってくるとはな」
王宮のバルコニー。見上げた王都の上空には、その言葉どおり黒く大きな小山のような固まりが浮かんでいた。
魔王城だ。
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