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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【12】おじさんが寵姫!? その2
しおりを挟むこんな状況、前にもあったな……とベッドに組み伏せられたコウジは冷静だった。
「なんだ、本当に貧相な男だな。こんな鶏ガラみたいな身体、あの勇者崩れはどこが良かったんだか」
のしかかっているのは大柄な魔族の男だ。傭兵時代のマッチョ自慢の筋肉ダルマ共を思い出す。性格もおそらく似通ったようなもんだろう。
そして勇者崩れとはフィラースのことだ。そこには魔界のトップだろう彼を、魔族ではないと侮蔑する響きがあった。
だから彼の客人の身分だろう、自分にこんなことが出来るのだろうが。
部屋にいきなりはいってきた男は、コウジをベッドに放り投げてのしかかり着ていたシャツを引き裂いた。
このあいだコウジは全く無抵抗だった。魔力は封じられているし、どうやら男は自分をいきなり殺すつもりはないようだ。
この身を穢されるよりは死を選ぶ……なんて気高きお姫様の覚悟はおじさんにはない。せいぜいが慣らしもなしに突っ込まれたら痛いだろうなぁ……だ。
その前に騒ぎを聞きつけて、この城の者がやってきてくれればいいが。
「コウジ様!」
しかし、それは最悪の形でかなうことになった。やってきたリンベイが声をあげて「なにをなさるんです!」と勇敢にもベッドに駆け寄ってきたのだ。
「うるさい羽虫め!」
男が太い腕を振り上げた、その魔力の圧だけで細いリンベイの身体は宙を飛んで床に叩きつけられた。メイドの少女の額から血が流れ、彼女はそれでも健気に起き上がろうとし「誰か……」と声をあげる。
男はチッと舌打ちし「騒がれても面倒だ」とその手に、炎をまとわせリンベイに叩きつけようとする。
「この、くそったれが!」
コウジの中で何かが爆発し、男の身体が吹っ飛んだ。その巨躯がベッドから跳んで壁に叩きつけられたがさすが頑丈だ。頭を振りながらも、ふらりと立ち上がる。
ベッドから飛び降りたコウジは、小卓の上に置いてあった食べかけのケーキの銀のフォークを手にとると、それを男に向かって投げる。
それは見事に男の片目に命中した。男が絶叫してのたうち回るのを見もせずに、コウジはリンベイに駆け寄った。血の流れるその額に手をかざす。
ぽうっとその手に淡い光が宿る。それは闇夜を照らす月の光だ。たちまち血が止まって額の傷が癒える。
「痛みは?」とコウジが尋ねればリンベイは首を振って「ありがとうございます」と瞳を潤ませる。
「よかった……っ!」
コウジはよろめいて床に膝を突く。「コウジ様!」と声をあげるリンベイに力無く、苦笑して。
「さすが……魔力拘束があるってのに、使うのはキツいな……」
コウジの左手にはフィラースによる黄金の戒めがいまだはまっている。それを破って瞬発的に魔力を使った反動にめまいがする。
「このっ!」
「ぐっ!」
そこに顔の半分を血に染めた魔族の男が、怒りの形相でコウジの首を片手で掴みつり上げる。リンベイが「コウジ様!」と再び悲鳴を上げるのが遠くに聞こえた。
「殺してやる!」と怒りの形相の魔族の男を見ながら、さすがにこりゃまずいかな……とコウジは思った。
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作者の新作情報はtwitterにてご確認ください
https://twitter.com/sima_yuki
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