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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【6】おやすみの明日は決戦※ その1

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 自分がどうして死んだのか? 

「まあ、俺だってこの世界に最初に来たときは自分がなんでくたばったかなんて、すっかり忘れていたんだから、気にしなくていいんだろうけどよ」

 居住区の自室に戻り、コウジは椅子に腰掛けてくわえ煙草を吹かす。「コウジ」と呼ばれて立ったままのジークを見上げて「なんだ? お前のせいじゃねぇぞ」と苦笑する。

 シオンの召喚に巻き込まれて、しがないコンビニのバイトだった二十二歳の自分は、この異世界に飛ばされた。それも現在ではなく過去にさかのぼる形で。
 そして、母親を失ったばかりで刺客に命を狙われていた子供のジークに出会った。ひとときの触れあいのあと、襲ってきた刺客からジークをかばって自分は死んだ。

 と、思ったが。

 死に際にジークがコウジに口づけたことによって、自分達は王子様と魔法少女の運命のパートナーとしての契約が成り立ってしまった。
 それによってコウジはしがないコンビニの店員としてではなく、中二病の自分が考えた最強のキャラクターおじさんコウジとして、この地に再び召喚されることになった。

「ま、俺は死んで良かった……っていうのは言葉が悪いが、こうなってお前とまた会えて良かったと思っているぜ。
 あのままなら魔法は使えても、それ以外は弱っちいままで、足手まといになっただろうしな」

 結果論として良かったんだから、戻らない過去を考えたって仕方ねぇとコウジはぷかりとまた煙草を吹かす。
 するりと口からその煙草を抜き取られて、唇を塞がれた。「ん……」と舌を絡め合って、ジークと煙草の苦みが残る自分との混ざり合った唾液をこくりと呑み込んで。

「おい、ヤルなら風呂……」

 首筋にちくりとした甘い痛みに「は……」と吐息を漏らしながら告げれば、ふわりと身体が浮き上がる。

 片腕で抱きあげられていた。腕に尻が乗っている、いわゆる子供抱きってヤツだ。いくらコウジが軽いとはいえ成人男子を軽々とだ。
 自分で歩けるとは意地を張るつもりはない。この馬鹿力め! と多少くやしくは思うが。首に手を回して肩にもたれかかる。

 そのまま風呂へと洗面台に腰掛ける形で下ろされて、胸に遊ぶ青年の銀の髪に指をからめる。すっかり性感帯に変えられた乳首をじゅっと吸われるのに「うぁ……」とのけぞれば、鏡に映る自分達の姿が見えた。

 ぼさぼさの髪に無精髭、いままでのキスで唇は濡れて瞳は潤んでいる。腹までシャツのボタンが外されて、首にひっかかるだけのネクタイ。精巧な彫刻みたいな横顔が、痩せてあばらの浮いた自分の胸に埋まっているのは……なんとも……。
 若い男に乱されるおじさんの姿なんて見るもんじゃねぇな……と思いながら「おい、ここでヤルのは俺はやだぞ。服、脱いで風呂」とぱしぱし、こちらは微塵も乱れていない黒に銀の軍服の肩を叩く。

 ジークが一旦離れて、彼らしくもなく乱暴に自分の軍服の前を開いてシャツ一枚だけとなり、そのシャツも一気にぬいで上半身裸となる。
 珍しくがっついているな……あ、いつもか……と思いながら、コウジも自分の首にひっかかってるネクタイを抜いて、ベルトも抜かれて落ちていたズボンを蹴るように脱いだ。

 そして、また片腕で痩身を肩に担ぎ上げられた。軽々運ばれるのがやっぱりなんかくやしくて……ぺしぺし若い男の張りのある背中を軽く叩いて撫でていたら、バスタブに下ろされた。
 さあっと降り注ぐシャワーの温かな雨。薔薇の香りがするシャボンを泡立てて、お互いの身体を洗い合う。男同士、柔らかくもない胸をすりあわせて、青年の広い背中に手を回して、その肩から背中をなで下ろしながら、コウジは「ムカつく」とつぶやく。

「なにがだ?」
「イイ身体してやがるってことだよ。骨格とか腕の長さとか足の長さ……とか、ああ、ムカつく。まあ、どうしようもないのはわかっているんだけどな」

 「ムカつく」ともう一度言いながら、コウジはしっかりした肩から背の張りのある筋肉をたどる。ほんとイイガタイをしている。

「私はあなたの華奢な身体が好きだが」

 「腕の中にすっぽりとおさまる」という言葉に「それ褒め言葉になってねぇぞ」と上目づかいにらみつける。実際、ジークの腕の中にしっかり包みこまれるような形になるのがなぁ……。

「ただ希望を言えばもう少し太ったほうがいい」

 確認するように浮いたあばらから脇を撫でられて、ぞくりと背に甘い震えが走る。はぁ……と息を吐いて。

「これでも食ってるって言ってるだろう?」
「あなたが暇を見つけては、自己鍛錬しているのは知っているが、逆にそれがこの身体から肉をそぎ落としているように思えてならない」
「別に、暇なときに腹筋と背筋とスクワット百回ぐらいやってるだけだぜ」
「……たしかに必要な筋肉はついてはいる。細いがバネのように強靱な」
「ん…あ……やらしぃ…なでかた…するなよ」

 脇腹から、今度は腰の浮き出た骨盤をたどられて息を飲む。「この腰も細いな。私の両手が周りそうだ」なんて人の話を聞いているのか、いないのか、シャボンでぬるつく両手が尻を包みこんで、なけなしの肉を揉むのに……はあ……と息を吐く。

「……なんというか、いつも心許ないと思うのだが」
「だったら…毎日……おじさんの尻をお前のでっかいので、いじめるな…よ……うあっ!」

 指がぬるりと入りこんでくる。ぬくぬく出入りして弱い場所をさぐられてしなやかにのけぞる。バスタブに立ったままだったから、背にタイルが当たった。

「ここは柔らかく、私を包みこんでくれる」
「ばか…や…ろ……!」

 指が二本、三本と増えて、それでも物足りないと思う自分に、終わってるな……とは思うが、こいつにずっと責任とってもらうからいいと、トンと目の前の分厚い胸を拳でたたく。

「も、よこせ…よ……っ…あっ!」

 片脚を抱え上げられて大きなモノが入り込んでくる。まったく今だってジークの腹につくそれを見る度にこれ入るのか? と思う。これが奥までぐっぽりと入っちゃうから人体の不思議だ。
 いや、なんかへその下あたりの入っちゃいけないところまで来てるような気もしないつうか、確実にそうだし、そこヤられるとなんか男としてやばくね? というのと、とてつもない快感がせめぎ合うスリルがたまんねぇ……ってやっぱり、俺、終わってるな……と思う。

 片脚だけでなくもう片方も抱え上げられて、背中を壁に預けてぐいぐい突かれるのに、のけぞりあえぐ。男の肩に置いた手、爪を立てて「これ以上、はいんねぇからっ!」なんて訳のわからないことを言いながら。

 気がつくとお湯が張られてもこもこの泡のバスタブの中、ジークの背中に寄りかかるように抱かれていた。

「……俺、トんでたか?」
「ああ」
「まあ、いつもだけどよ」

 気絶するように眠るパターンとしばらく理性というか意識がふっとぶパターンがある。いや、そもそも。

「おじさんのトシ考えて、ちったあ手加減してくれ」
「疲れて眠るあなたの寝顔も、ぼんやりと幼子のようにあどけなく『もっと、気持ちイイ……』と私にねだる、あなたも愛らしいので」
「……それ以上言うな。俺の黒歴史が増える」

 パシャンと後ろから自分を抱く男の顔にお湯をかけてやる。あどけない? 愛らしい? って、おじさんに言う言葉か。

「……今日はもうヤらねぇぞ。あと、身体がだるくて動けねぇから、お前が全部やれ。ベッドまで運べ」
「仰せのままにお姫様」
「だから、おじさんにその姫呼びもやめろ!」

 けっこうな付き合いになってきたが、いくら言ってもやめてくれないことがある。完璧な口許に笑みを浮かべて……こいつ、楽しんでいるな。
 そのあとは紳士? に身体の泡を落として、ガウンに包まれて横抱きにされてベッドに。コウジはジークの胸にうつ伏せに乗り上げて目を閉じた。

「おやすみ、また明日な」
「ああ、おやすみ、よい夢を」

 そう言いながら、ジークの唇が額に押し当てられる。それも小っ恥ずかしいから辞めろといいたいのだが、いつも睡魔が勝って重いまぶたを閉じれば翌朝になっている。





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