どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【27】俺がおじいさんになっても……※ その2

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 目が覚めた。

 青年の広い胸から顔をあげて、身を起こす。ベッドから降りて、裸では少し肌寒いなと床に落ちていたシャツを拾い上げて、肩にひっかける。うん、ぶかぶかだ。またもやジークの彼シャツか? 
 まあ、いいとこれも床に落ちていた自分の背広から煙草を一本取りだして、口にくわえると魔法でぽっと火をつける。

 ぺたぺた布の敷かれた天幕の床を歩いて、その入り口へ。扉代わりの布を薄くずらせば、黎明の空が見えた。もうじき夜明けだ。
 するりと後ろから抱きしめられた。シャツを羽織っても薄寒かったのが、とたん温かくなる。自分を包みこむジークの腕をぽんと叩けば「なにを考えている?」と言われた。

 「なにも……」と返そうとして、たしかにうっすら考えていたなと思う。この王子様、マイペースなのに勘がいい。いや、自分のことだけか? と思うと照れくさいが。

「……俺の身体のことだけどな」
「あなたの身体?」

 なにか不調が? という心配げな声に「いや、今はなんにもねぇよ」と答える。

「だけどお前と俺の身体は実際にそれなりの年齢差があるだろう? このままだと確実に俺が先に逝くからなあ」

 それは仕方ないと達観した思いがあるのは、二十二歳の自分ではなく、神様が植え付けてくれたカッコいいおじさんの意識だ。
 傭兵なんて家業で人の生き死をいくつも見てきた。死ぬときは死ぬ、生きるときは生きると。

「そのときがいつだろうと、あなたの最期まで私は共にいる」
「ん……」

 絶対そう答えるだろうし、この男は最期の最期まで自分の傍らにいるだろう。自分を抱きしめる手をとって、その手の平に口づける。
 騎士が唯一の人に捧げるという口づけ。その唇を押し当てたまま、コウジは「ずっと一緒にいてぇな……」とつぶやく。

 いつでもどこでも死ねると思ってたのに、この王子様のせいでこんな欲が出た。

 そのとき『大丈夫だよ~』と軽い声がコウジの頭の中に響いた。これはコウジの世界の神の声だ。『モルガナも大人しく自分の世界に帰ったみたいだし、よかったよかった』となにがよかったやら。

『君の外見年齢はそうだけど、魂の年齢に肉体の寿命はあわせてあるし、君のパートナーが君の年齢まで降りてくるまで外見変わらないから。
 あ、その後は二人で一緒に歳を取っていくといいよ』

 『ずっと仲良くね~』なんて妙に明るい声が頭に響く。まったく方向違いにアフターケアが万全じゃないか! 神様よ。
 そして。

「今のは本当か?」
「ジ、ジーク。聞こえていたのか?」
「ああ」

 ジークは嬉しそうに「ずっとあなたといられる」と微笑む。

「そのうえに、あなたと一緒に歳を重ねていけるなんて、最高だ」

 ふわりとコウジを抱きあげて上機嫌の王子様は再びベッドへ。

「明日も、明後日も、ふたりの顔にたくさんのしわが刻まれても、あなたと抱き合っていたい」
「え? お前、じいさんになってもヤるつもりか?」
「もちろん、ヤる!」
「いや、じいさん同士って……」

 『ないだろ?』という言葉はジークの唇に吸い込まれた。
 たぶん五十年先も俺達は抱き合っているに違いない。





   END




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