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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【20】狂信者のマーチ その2

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「第10王子と第11王子には早くからモルガナ側の接触があったとクルノッサ卿の証言があります。ジーク兄様とコウジさんの二人に差し向けられた刺客も、二王子を通じてモルガナからクルノッサ卿が雇ったものだと」

 「それでも二人の王子が洗脳されたのは、モルガナに渡って聖女とやらに会ってからだろうな」とピートにコウジは返す。

「俺を襲ったときの二人はゲスの極みだったが、狂信者には見えなかったもんな」

 コウジが続けると、横に座る銀の王子様のまとう空気が一度低くなったような気がした。あのときの怒りを思い出したか美しい眉間に浮かんだしわに、コウジはテーブルの下、ちょんちょんと王子様の手の甲を『怒るな』とつつく。するとその手をぎゅっと握りしめられた。まあ、机の下だから、好きにさせてやろう。

「そう考えるとコウジさんの襲撃も、モルガナ側が二人の王子をそそのかした可能性もありますね」
「ことが失敗するのを見越して、二人の逃亡に手を貸すのも計算のうちだとしたら、かなり前から計画を練っていたことになるな」

 暗殺者を送りこむのも、諜報活動も似たようなものだ。隠密行動に慣れている集団ならば、王子二人を国外脱出させるのも手慣れていたに違いない。
 そして他の王子達へと自分達の陣営にはせ参じるように、あの二人の王子に密書を書かせて送り届けたのもモルガナ側か。

 「あなたも必ず成功する! なんて自己啓発セミナーにひっかかって洗脳されるようなもんだよなあ」とコウジがつぶやく。自己啓発? なんだそれは? という顔をする、王に三王子と将軍にコウジは「まあ、詐欺だよ。詐欺」と簡単に説明する。

「もっとも、ただの詐欺なら金が戻ってこない時点で騙されたと気づくが、こいつは悪魔に魂を売り渡すようなもんだな」

 悪魔じゃなくて聖女であるが、しかし、宗教がらみとなると本当にやっかいだ。

「神様の為となりゃ、己の損得なんて関係ない。死ねば神様の御許にいけると信じているから、死ぬのも怖くないときてる」
「それならばただの狂戦士だが、二人の王子の力は異様だ。あれは聖女が失われたパートナーである魔法少女の役目を果たしているからだが」

 コウジに続けてジークが口を開く。
 街道の封鎖を突破された様子は魔石による魔道通信にてこちらに届いていた。
 その様子は異様な光景だった。
 街道の封鎖は一個大隊、約五百人ほどの兵士が詰めていた。それがたった二人の王子によって蹂躙、突破されたのだ。

 王家と魔女の血を引く王子達全員魔法騎士だが、並の魔法騎士と王子達が違うのは、魔法少女達との魔力連結があってこそだ。その魔法少女を失った王子達の力は、並の魔法騎士と同じはずだった。
 だが王子二人は、工兵がつくりあげた深い塀を魔法で強化された足で軽々と跳び越え、次にそびえ立つ木の丸太を打ち付けた並べただけの壁。ただし、大隊に配属されていた魔法騎士五十人の魔力によって強化されていたそれを、たった一撃でぶち抜いたのだ。

 炸裂する魔術の砲弾に兵士達はなすすべもなく後退した。むしろ徹底抗戦ではなく、大隊長がいち早く撤退の指示を出したからこそ、兵の損傷は少なかったと言えるだろう。
 後退した大隊は次の防衛地点にあらたな防衛線を築いているが、あの映像ではまた、たやすく突破されるに違いない。

 二人の王子だけで封鎖を解除させたのは、力の誇示だろう。たった二人で十分だが、次はとりこんだ王子達がもっと増えるぞと。
 災厄退治の力が人に向けられる。それは立派な大量殺戮兵器だ。

 そして、円卓会議室に流れる映像にフィルナンド王以下、他の者達が呆然と見るなか、ジークとコウジだけには見えていたものがある。
 王子達の背後にある黄金の輿。四方に垂れ下がる幕によって聖女の姿は見えなかったが、そこから王子二人に強力な力が与えられていたことを。

 魔力連結だと二人は直感した。
 コンラッドにピート、シオンにマイアには見えなかったという。

「しかし、二人の魔法少女と契約した聖王グラムマンデはともかく、たった一人の魔法少女が複数の王子との契約は可能なのか?」

 にわかには信じられないというコンラッドにコウジは「相手は魔法少女じゃない。聖女様だ」と返す。

 「おそらく消息不明のすべての王子達とも“契約”を交わしたのに違いない」とのジークの言葉にコウジは「狂信者の王子様達の軍隊なんてぞっとしねぇな」と返す。
 逃げた王子達は二十名あまり、こちらは三人の王子様+魔法少女二人におじさんだ。
 数的には圧倒的な不利だ。



『そのとおりよ。聖女は王子達と契約を交わして、その虜にした』



 そのとき頭の中で声が響いて、ジークとコウジ、コンラッドにシオン、ピートとマイア達は見覚えがあるまっ白な場所にいきなり転移していた。

 女神アルタナの空間だ。

 そこには花冠をかぶりまっ白な古代風のドレスをまとって、寝椅子にゆったりと座る女神様と。
 その後方で事務机に縛り付けられて、事務服七三分けで必死に書類整理するアンドルの姿があった。





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