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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【17】モルガナの聖女 その1
しおりを挟むこの世界においての他国というのは別のシャボン玉に隔てられた区域のことを言う。
なんのこっちゃと思うかもしれないが、その表現が正しいのだ。フォートリオン国の周囲は海に囲まれており、その海の向こうにはさらに虚海とよばれる普通では渡ることの出来ない次元の海が広がっている。
この海を渡れるのは次元船とよばれる特殊な船のみだ。それで虚海に隔てられた隣あった区域同士、移動することが出来る。
他国がフォートリオンの災厄に対して、無関心だったのもこのせいだ。フォートリオン一つが災厄に呑み込まれようとも、虚海に隔てられた他国までは侵攻はしてはこないだろうという。所詮対岸の火事だ。
まあ、だからジークとコウジの他国に行くという脅しに、宰相達も青くなった訳だ。
じゃあ、災厄がたびたび襲ってきたこの国で、なぜ人々が難民となって他国に逃れなかったのか? といえば、次元船というのは大変貴重なもので、フォートリオン国においても大型の帆船は五隻しかない。それではすべての人々の移動など不可能だ。
もう一ついうならば、フォートリオンと虚海を隔てて隣あっている国は、いずれも小国ばかりでフォートリオンが豊かな大国というのがある。
災厄が度々襲ってこようとも、王子と魔法少女達がそれを祓ってくれる。この国の豊かな土地と生活を捨ててまで、小さく貧しい他国に逃れることはない……というのが大半の国民の考えだ。
次元が違うというならば、コウジと魔法少女達がやってきた地球はどうか? というと、これは次元船で渡ることも出来ない。まったく別の異世界ということになるらしい。
虚海に隔てられていても、シャボンの泡の隣同士が接触している次元は、平面上の地図に並ぶ、同じ世界であるが、地球はこの世界からは空間も時間もなにもかも違うところにあるという。
まあ、だからこその異世界なわけだが。
以上がこのフォートリオンを取り巻く世界だ。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
で、モルガナ国だ。
「モルガナ国の正式名は、モルガナ女神に守護されし聖女国となります。王政ではなく、神官団の統治による宗教国家で、宗主は歴代の聖女です。
現在の聖女てぃあらは、異世界から召喚された者で、歴代聖女のなかでは最高の力を持つとされていますね」
ピートの話が続く。虚海に隔てられて数隻の次元船での交易の繋がりとあって、会議に出席した者のほとんどが、モルガナ国についてはあまり知らないようで、興味深く聞いている。
コウジは先にジークより、モルガナ国について聞いていた。表向きは貧富の差がない国土は小さいが平和な宗教国家。その実、裏の顔はモルガナ女神の教義以外は異端として厳しく糾弾し、そのために生まれた暗殺者や毒を他国にも“輸出”している裏の顔を持つ国。
それより気になったのは、聖女の“てぃあら”という名前だ。カタカナではなく、コウジの耳にはひらがなで聞こえた。
シオンが「モルガナの聖女も、わたしたちと同じく異世界から召喚されているの?」と質問している。ピートが「いいえ、この聖女が初めてらしいです。代々の聖女はいままではすべてモルガナ人だったらしいですから」とピートが答えている。
それにしても、てぃあら、てぃあら。今どきはマイアの名前ぐらい普通だが、さすがにてぃあらとなると最高にキラキラだぜ……とコウジは思う。漢字をあてるなら、宝冠ってことになるのか? うん、付けた親に成長した子供がどう考えるか? 膝詰めで話したいおじさんだ。
いやいや別に日本人ってことはないだろう。……と思いたいが、なにしろ、コウジのもといた日本の神様は、ほいほいと魔法少女四十四人+おじさんを異世界に送りこむような気楽さだ。
聖女の一人ぐらい軽く降臨させそうじゃないか?
「しかし、なぜ突然にモルガナ国の聖女自らが我が国に?」とフィルナンド王がいぶかしげな顔となる。「それもありますが、問題はその聖女の一行に“逃亡犯”の重犯罪人が二人混じっていることです」と生真面目なコンラッドが言う。彼は国政を受け持っているのだから、当然司法にも権限がある。『主家預かりの沙汰に反して、逃亡した重罪人は即捕縛を』と言いたいのだろうが。
「第10と第11のジョセフ、ピッポ兄様の両名はモルガナに亡命し、すでにかの国に受け入れられています」
あのキツネとたぬきの王子達はそんな名前だったのか……と、コウジは今さら知る。
そもそも四位以下の序列に関しては王命によって消されているのだから、彼らをその序列で呼ぶのが無しなのだが。
あまり知られていない名前で呼ぶより、元の序列がわかりやすいために、結局彼らはその序列で呼ばれ続けた。名前が出たのはこの会議一度きりで、コウジもすっかり忘れることになる。
「さらにいうなら、二人とも聖騎士の位を聖女から授けられたとか。今回、この国に戻ってきたのも、聖女の警護のためだそうです」
ピートの言葉にコンラッドが「詭弁だな」と吐き捨てるように言う。潔癖で真面目な王子様からすれば、他国に逃亡亡命したあげくにその保護を盾にのこのこ舞い戻ってきた二人に我慢がならないのだろう。
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