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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【15】愛の罰 その2
しおりを挟む最後のフィルナンドの言葉は三人の魔法少女+おじさんにむけたものだろう。
つまり三人ががんばって世継ぎをもうける必要はないと。いや、おじさんは初めから無理だけど。
とはいえ、シオンに関していえばコンラッドと結婚すれば必ずこの問題はつきまとうのだから、王は心配しないで彼と結ばれるがよいと後押ししたことになる。
「……で、シオンちゃんはどうなのよ?」
「さっきの今でわたしに聞くの?」
王宮住まいのシオンとマイア達とちがい、外に暮らしているコウジだが、王宮にもしっかり部屋は賜ってはいる。当然序列2位の王子であるジークもだが。
魔法少女達+おっさんには、その三人に与えられたサロンというのもある。
クルノッサと準妃ロジェスティラの処遇が決まり、三人はそのサロンにてお茶会となった。やっていることは、いつもの何でもやります課での午後のまったりした時間と変わりはない。
今日も王宮の菓子職人の菓子はうまいぜと、コウジは木の葉型のパイをかじる。
「準妃の問題が解決したからって、すぐにコンラッド殿下と婚約なんて」
「なにか問題でも?」
「ないわよ。だけどね、いくら一組も例外がないからって言って、王子とパートナーとなった魔法少女が必ず結婚しなければならないわけはないでしょ?」
「それから考えると王子様とおじさんが婚約っていうのも笑えねぇ話だけどな」
コウジは小さなコロンとしたガラスの容器と銀の小さなスプーンを手にとり、その中身を一口。うーん、このキャラメルの少しの苦みが大人の味でうまい。
「それも今さらな話でしょ。しっかり“既成事実”作っておいて」
「…………」
シオンの言葉にコウジは黙りこむ。既成事実、既成事実ね。いや、やることやっているけど十代の少女に言われるとなかなか来るものがある。
教育に悪すぎるよな。俺達の関係……という後ろめたさで。
「コンラッド殿下のことは嫌いではないけど、周りのわたしたちが結婚して当たり前という空気もね」
なるほど決められた許嫁に反発を覚える若い感情ってヤツだなと、コウジは思う。時代は進んでフランスなんかじゃ、一緒に暮らして子供も作るが、正式には籍はいれないのが大半という国もあるらしい。
「まあ、そう複雑に考えることはないんじゃないか?」
「自分はすでに婚約したからって、人ごとみたいに」
「おじさんの場合は怒濤のように流されて、考える暇なんかなかったからな。ちょっとシオンちゃんは色々と考え過ぎではあるな。
マイアちゃんが一番いい意見をくれそうだ」
いきなりふられて、コウジと同じくキャラメルのプディンクを手にしていたマイアが「わたし?」と目を丸くする。
「ピート王子と婚約した理由だよ」
「理由なんて、ピート君が好きだからです」
にっこり彼女は答える。それにシオンは紫の目を丸くした。コウジはニタリと笑い「な、簡単なことだ」と言う。
「婚約するのも結婚するのも、好きだから一緒にいたいで十分だろうが」
「じゃあ、あなたもそうなわけ?」
コウジは小さな銀のスプーンをくわえて「う」と固まった。しまった! こちらに跳ね返ってきた。
「どうなのよ? 今、怒濤のように流されてってあなたは言っていたけど、あなたはそれだけでジーク殿下との婚約と結婚を受け入れたわけではないでしょうね?」
「い、いやまあ、本当は流された訳じゃねぇけど」
王様とジークに理詰めで迫られて渋々うなずいたのは事実だ。婚約や結婚なんていまだに小っ恥ずかしいが、しかし嫌なわけではない。嫌だったらコウジは断固拒絶している。
「まさか、あなた、いまさらジーク殿下のこと愛していないなんて……」
「言うか! 俺はあいつを好きだ! 愛しているぜ!」
思わず腹に力をいれて言い切ってしまった。小卓を挟んで反対側のシオンがニタリと笑う。その視線はコウジではなくて、その後ろにある。
「え?」
ギギギ……と錆びた機械のようにコウジが首を回せば、そこには黒に銀の軍服の愛しの王子様が立っていた。
「私もあなたを愛してる」
「うん」
それ以外どう答えればいいのだ。じわじわコウジの長めの髪にかくれた耳が熱くなってくる。
そのコウジの細い腰に手を回してジークは立ち上がらせて「では、私達はこれで」とサロンをあとにした。
あとに残されたのはこの大告白大会を聞いて、固まっているコンラッドに「本当にジーク兄様のところは仲がいいなあ」なんて笑っているピート王子。「そうね」とマイアも笑顔だ。
シオンもまたキャラメルのプディングを口にしながら「ちっとも仕返しにもならなかったわ」とつぶやいた。
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