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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【15】愛の罰 その1
しおりを挟む「沙汰を言い渡す」
ロジェスティラの言葉を受けた王は、目を閉じてしばらく考えると口を開いた。
「クルノッサ、元老院議長を自ら辞せ。当主の座も当然息子に譲り隠居せよ」
「あとの身の処し方はお前に任せる」との王の言葉にクルノッサ自身が驚き目を見開いた。
「それでは陛下、あまりにも……」
彼の言いたいことはあまりにも処罰が軽いということだろう。庶子の子と彼がいうジークはそれでも、王の子であり、序列第2位の事実上の王太子の一人だ。
それを自ら議長を辞職し、息子に次代を譲ったとなれば、世間は少し早い隠居としか見ないだろう。もちろん突然の辞任と隠棲は王の不興を買ったと、しばらくは宮中の噂になるかもしれないが。
「コウジの襲撃事件に関しては、第10王子と第11王子、および荷担した魔法騎士達の処罰はすでに決定し執行されておる。そのうえに、当人の王子二人がどこぞに逃げて行方知れずとあっては、お前がその後ろにいたという証拠はなにもない。
神殿での暗殺未遂に関しては、公にはされてはおらぬ。無い罪でお前を裁くことは出来ん」
その上で王はさらに口を開いた。
「ゆえに余はお前の罪はお前の判断に委ねることにする。王家へのそれほどの忠義があれば、己の身の処し方ぐらい心得ておるだろう。ただし、死ぬことは許さぬ。
これからの“余生”その目で王国の行く末を見ているがよい。お前の言う通りに、王家が滅びるか存続するか。余にとっては王家の血など、いまさら些細なことのように思える。このフォートリオンという国があり、民が健やかであるならばな。
四十五人も子を作っておいて、いまさらなにを言うかと言われそうだが」
「長き間の王家への忠義、大義であった」と、これはフィルナンドのクルノッサへの別れの言葉だった。もう二度と会うことはないと。
そしてクルノッサはこの王宮を去り、二度と公の舞台に顔を出すことはないだろう。それが王家へのお前の忠義だと王に言われれば、彼はそれに縛られ従わざるをえない。
両膝を床についたままクルノッサは深々と頭を垂れて彼は王に最後の挨拶をする。
「ロジェスティラ」
フィルナンドはひざまづくクルノッサの横に立つ、準妃へと目を向けた。
「準妃の別宮を本日より引き払え」
王宮の中央の本宮の背後には正妃と準妃のための別宮がある。そこを出ろということは、ロジェスティラは王宮の外に追放され、どこかの離宮に幽閉という言葉に聞こえた。
ロジェスティラは王の言葉を当然のことと受けとめたようで、表情を変えることなくただ「はい」と答え。そして、母を告発したコンラッド自身のほうが、その顔色を変えたほどだ。
フィルナンドは『そうではない』というように首を振る。
「これからは別宮ではなく、余のそばで暮らせと申しつけているのだ。余も年甲斐もなくと言われたくはないからな。寝室はともにとは言わぬが、隣室に寝室を設ける。扉一枚、いつでも行き来出来るようにな」
王と妃達は、同じ王宮内であっても別に暮らしてきた。だが、フィルナンド王が準妃の居を別宮から、自分のそばに移したと見れば、人々はそれが準妃への罰とは思わないだろう。
むしろ、四十五人も子供を作った王だが、やはり寄る年波に落ち着き、準妃一人と決めたらしいと周囲は見るに違いない。
「離宮などに去ることは許さんぞ。表向きは何事も事件など起こっていないのだ。噂好きの宮廷雀どもに、楽しい話題を提供してやる義理はない。
余のそばにおれば、そなたの耳にいらぬことを吹き込む輩もいなくなるだろう」
そう、王である自分自らがロジェスティラを監視すると、フィルナンドは口にしてから、ふ……と微笑む。
「そなたにも苦労をかけた。余があちこちに心を移すのをなにも言うことはなかった。たしかにそなたはただ黙って耐えて、準妃としてここにあった。
ならば、今度は余のそばにおるがよい。余ももうどこにも行くことはない」
「陛下……」
ロジェスティラが瞳を潤ませ、彼女は崩れるように椅子に座る王へ駆け寄り、その肩にひたいをおしあてた。王は慈しむように彼女の髪をそっと撫でる。
「さて、準妃の制度だが王室法には残す。廃止はせぬ。だが、準妃を娶るかどうかはそのときの王の判断に委ねる。
神前にて、我が配はこの者ただ一人と誓えば、人の法よりも、女神アルタナへの信仰が勝るのは当然のこと」
これは老練な王らしい現実的な判断だった。今は必要でなくとも、あとには複数の妃が必要になる、そんな時が来るかもしれない。
それがフィルナンド王のときのように、複数の女達の嘆きをともなうことになってもだ。政治とはときに非情なものだ。
「では」とコンラッドが口を開く。
「私も婚約式において、生涯ただ一人の方を妻としたいと、神前にて誓いたく思います」
名前は出さないがそれが横にいるシオンに対しての誓いでもあるのは明らかだった。彼女の頬が淡く染まり、フィルナンド王は「それがお前の望みならばよかろう」とうなずく。
それに「お待ちください」と叫んだのは、いまだ両膝を床についたままのクルノッサだった。彼はうなだれていた頭をあげて、王にすがるかのような視線を向ける。
「コンラッド殿下は唯一の純血のお血筋……それが途絶えるようなことがあっては……なりません」
まだ、そんなことにしがみついているのか……とコウジは哀れみの視線で、床にうずくまったままぐっと老けたように見える元老院議長を眺める。この男も因習という檻に囚われて、そこから抜け出せないでいる。
「純血などとっくの昔に失われておるわ」
ロジェスティラはなにもいうことなく、王の肩に顔を埋めている。その頭を優しくなでながらも、しかしフィルナンドは冷ややかにクルノッサを眺めた。
「聖帝グラフマンデから続く直系の血とお前は言う。だが、中興の祖といわれるカーク大帝はなぜ、中興の祖と呼ばれる?
そのときの序列1位の王子と魔法少女は力が足らず災厄に敗北し死んだ。この王城も巨竜によって蹂躙された。そのときに王も正妃も亡くなっている。
再度召喚された魔法少女をパートナーとしたカーク大帝が巨竜を倒し王となった。彼は離宮にて静養していた準妃の子とされているが真っ赤な偽りよ。
準妃は生来の病弱で子供を作ることは出来なかった。その身代わりにと王に自分の侍女を差し出した」
「約五百年もたてば確かなことはわからぬ。伝説の彼方よな」とフィルナンドは王は曖昧に微笑む。
「約千年以上も続く初まりは神話の彼方の、我がフォートリオン王家よ。醜聞の一つや二つや、いや、百も転がっておろうな。
あるのは形だけ整えた偽りの純血の系図よ」
その王の言葉にクルノッサは両膝を床についた姿勢から、両手を床について崩れ落ちた。フィルナンド王は続ける。
「今となっては余の恥でもあるが、四十五人も王子がおるのだ。そのなかには出来の良い孫が幾人かは出来るだろう。
血の存続というならば、まったく心配はあるまい」
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作者の新作情報はtwitterにてご確認ください
https://twitter.com/sima_yuki
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