上 下
40 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?

【13】暗殺教団※ その2

しおりを挟む
   



「……モルガナの暗殺で有名なのは毒だ。通り過ぎざまの針の一突きで心臓を停止させるもの。肌をかすめただけで即死させる猛毒」
「そいつは昼間、俺達に使われたもんだな」

 王都郊外のジークとコウジの屋敷。その寝室にて。コウジは窮屈な儀典用の軍服から解放されて、黒いガウンに身を包んでいた。行儀悪く寝台にあぐらをかいて、ジークの話を聞きながら用意された寝酒をちぴちぴとやる。

 秘匿の部屋での暗殺未遂は秘密裏に処理された。災厄が倒されて半年あまりの慶事に水を差すような出来事を公にすることはないと。
 そんな相変わらずの事なかれ主義の周囲に、ジークもコウジも珍しく同意した。まあ、別の“思惑”があってのことだ。

 暗殺者を差し向けたのが誰なのか? こちらは曖昧にするつもりなどない。
 関係者には箝口令が敷かれた。秘匿の間が血で穢されたと神官達は嘆いていたが、大神官長が殺されるよりマシだろうと、コウジの皮肉なひと言に押し黙った。

 婚約式はつつがなく終わったとされて、夕方からは宮中での祝いの夜会となった。当然、主役の二人であるジークとコウジは注目のまとで、挨拶にやってくる人々をさばいたと思ったら、今度はダンスと……当然ジークはコウジ以外とは踊らなかった……。
 とにかく夜会が終わった頃にはコウジはすっかりくたびれていた。おじさんがくたびれているのはいつものことだけど。

 屋敷に帰り、窮屈な礼服を脱いで風呂にはいり、ホッと一息というところだ。
 今回の暗殺未遂を受けてというより、前々からフィルナンド王には王宮に移ってはどうか? という話があるが、二人ともその気はない。

 コウジとしては王宮なんぞで侍従に囲まれての窮屈な暮らしなどまっぴらごめんだ。なによりこの屋敷も人も気に入っている。執事のケントンは自分を“整える”ときには口うるさいが、あとは自由にさせてくれている。王宮の頭のお堅い侍従では、そのように融通はきかない。
 ジークとしても長年暮らした屋敷や使用人達と離れがたいというのがあるだろう。それから理由はもう一つある。

 コンラッドと同列の序列2位のジークが王宮に居を移したとなれば、人々のいらぬ勘ぐりを生む。
 すなわちフィルナンド王はいよいよ、準妃の生んだコンラッドではなく、ジークを次王にする意思があるのではないか? と。

 この点に関してはジークの意思は一貫している。
 自分は王になるつもりなどないと。

 コウジにしても、前にコンラッド王子に語ったとおり「王様になんぞなるもんじゃない」と思っている。ナンバー1なんてものは、なんでも出来るようで、その実色々と窮屈なものだ。二番手どころか、欲をいうなら三番手あたりが気楽だったりするものだ。

 その点で言うならば、序列3位のピートはのびのびとやっている。周囲も彼が王になるという危惧も期待もしていない。だが、序列第3位という身分は十分に価値もある。
 それで慈善活動や子供達の教育に力をいれる活動をしているわけだが。

 さて、暗殺者の話だ。

「即効性の毒だけではない。長い間摂取させることで、徐々に身体を弱らせ病に到らせる毒もある」
「それって王様に盛られていた?」

 王宮に潜んでいた隠れた災厄として、いまは名前も公式記録から抹消されている正妃アルチーナ。彼女によってフィルナンド王は毒を盛られ、病床に縛り付けられて政治から遠ざけられていた。

「証拠はない。だが、どの国家においても暗殺や毒殺の陰にモルガナありとささやかれるのは、確かだな」

 実際、死んだ四人の刺客はどこにでもいる巡礼者の姿で、身につけているものから身元をたどることは不可能だった。

 小説などに出てくる、信者を現すための刺青だの烙印などというものは身体のどこにもなかった。ある意味で当たり前だ。暗殺者として差し向けるならば、証拠となるようなものを残すはずがない。
 プロの暗殺者ならばなおさら。

「ま、死人に口なしだ。刺客達からはたどれないだろうな」

 コウジが呑み干したグラスを横の卓に置けば、その手をジークに取られた。彼を見上げる。

「今日もするのか?」

 あんなことがあったのに? の言外に匂わせれば「毎日している」とぽつり。

「うん、毎日してるな。王子様は若いよな。おじさんは付き合うのが大変だよ。
 今日はとくに朝から一日、窮屈な服を着てパレードに儀式に夜会でくたくたなんだがな」
「そうだ。今日は私とあなたの婚約式だった」

 だから『する』とじっとこちらを見る剃刀色の瞳に笑いたくなってしまう。
 毎日しているのだから、今日だって当然するのだ。
 こんなのは言葉のじゃれ合いみたいなものだ。

 そして、とらえたコウジの手にジークは口づけの雨を降らしている。節くれ立ったおじさんの指を噛んだり舐めたり楽しいか? と思うが、いつもながらに情熱的だ。
 爪と肉のあいだを舌先でざらりとくすぐられれば、コウジの背にもぞくりと妖しい期待が立ち上る。

「いいぜ、おいで」

 ぐいと掴まれた手を引けば、王子様の端正な顔が近づいてきて、そのまま口づけられる。

「ん……」

 もう、何回したかわからないキス。初めの頃は唇も重ねないで、身体だけ重ねていたなんてのが嘘のように、ちゅうちゅう吸い合っている。

「ふぁ……」

 混ざり合った唾液をこくりと呑み込んで、口の端からこぼれたそれを追うように、端正な唇がコウジのあごからのけぞった首へと。
 痩身で浮き出た喉仏を舐めて吸い付くのはこの王子様のクセだろうか? 男の印のそれを確認するように男だから抱いているというより、コウジが男だろうと女だろうと構わないのだろう。どんな身体でも、その魂が宿っていれば。

 首から鎖骨へと遊ぶ様に口づける唇はそのまま、両手は真っ平らどころか少しあばらが浮いている胸に。ありもしない肉を掴むようにされて、それから親指の腹で、両方の乳首を転がされた。。
 そこはすっかり感じる場所で「はあ……」と熱い吐息漏らせば。

「ここだけで、あなたはもうイケそうだ」
「……試してみるか? 時間掛かりそうだけどな。お前が“待て”出来んのか?」

 からみあう足。コウジが細い足を立てると、まくれ上がったガウンの裾。直接太くて熱い固まりが、太ももに当たる。

「お前こそ、おじさんの指吸ってキスして乳首いじくるだけで、こんなにしてさ。
 いっそ、この貧相な太ももにすられるだけでイケるんじゃないか?」

 意識的に足を動かして固まりをぐりぐりしてやれば、美しい眉間にしわがよる。

「……あなたのなかがいい」
「素直でよろしい」

 「あ……」と声を漏らしたのは、胸にキツく吸い付かれたからだ。





しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて、やさしくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。