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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【13】暗殺教団※ その2
しおりを挟む「……モルガナの暗殺で有名なのは毒だ。通り過ぎざまの針の一突きで心臓を停止させるもの。肌をかすめただけで即死させる猛毒」
「そいつは昼間、俺達に使われたもんだな」
王都郊外のジークとコウジの屋敷。その寝室にて。コウジは窮屈な儀典用の軍服から解放されて、黒いガウンに身を包んでいた。行儀悪く寝台にあぐらをかいて、ジークの話を聞きながら用意された寝酒をちぴちぴとやる。
秘匿の部屋での暗殺未遂は秘密裏に処理された。災厄が倒されて半年あまりの慶事に水を差すような出来事を公にすることはないと。
そんな相変わらずの事なかれ主義の周囲に、ジークもコウジも珍しく同意した。まあ、別の“思惑”があってのことだ。
暗殺者を差し向けたのが誰なのか? こちらは曖昧にするつもりなどない。
関係者には箝口令が敷かれた。秘匿の間が血で穢されたと神官達は嘆いていたが、大神官長が殺されるよりマシだろうと、コウジの皮肉なひと言に押し黙った。
婚約式はつつがなく終わったとされて、夕方からは宮中での祝いの夜会となった。当然、主役の二人であるジークとコウジは注目のまとで、挨拶にやってくる人々をさばいたと思ったら、今度はダンスと……当然ジークはコウジ以外とは踊らなかった……。
とにかく夜会が終わった頃にはコウジはすっかりくたびれていた。おじさんがくたびれているのはいつものことだけど。
屋敷に帰り、窮屈な礼服を脱いで風呂にはいり、ホッと一息というところだ。
今回の暗殺未遂を受けてというより、前々からフィルナンド王には王宮に移ってはどうか? という話があるが、二人ともその気はない。
コウジとしては王宮なんぞで侍従に囲まれての窮屈な暮らしなどまっぴらごめんだ。なによりこの屋敷も人も気に入っている。執事のケントンは自分を“整える”ときには口うるさいが、あとは自由にさせてくれている。王宮の頭のお堅い侍従では、そのように融通はきかない。
ジークとしても長年暮らした屋敷や使用人達と離れがたいというのがあるだろう。それから理由はもう一つある。
コンラッドと同列の序列2位のジークが王宮に居を移したとなれば、人々のいらぬ勘ぐりを生む。
すなわちフィルナンド王はいよいよ、準妃の生んだコンラッドではなく、ジークを次王にする意思があるのではないか? と。
この点に関してはジークの意思は一貫している。
自分は王になるつもりなどないと。
コウジにしても、前にコンラッド王子に語ったとおり「王様になんぞなるもんじゃない」と思っている。ナンバー1なんてものは、なんでも出来るようで、その実色々と窮屈なものだ。二番手どころか、欲をいうなら三番手あたりが気楽だったりするものだ。
その点で言うならば、序列3位のピートはのびのびとやっている。周囲も彼が王になるという危惧も期待もしていない。だが、序列第3位という身分は十分に価値もある。
それで慈善活動や子供達の教育に力をいれる活動をしているわけだが。
さて、暗殺者の話だ。
「即効性の毒だけではない。長い間摂取させることで、徐々に身体を弱らせ病に到らせる毒もある」
「それって王様に盛られていた?」
王宮に潜んでいた隠れた災厄として、いまは名前も公式記録から抹消されている正妃アルチーナ。彼女によってフィルナンド王は毒を盛られ、病床に縛り付けられて政治から遠ざけられていた。
「証拠はない。だが、どの国家においても暗殺や毒殺の陰にモルガナありとささやかれるのは、確かだな」
実際、死んだ四人の刺客はどこにでもいる巡礼者の姿で、身につけているものから身元をたどることは不可能だった。
小説などに出てくる、信者を現すための刺青だの烙印などというものは身体のどこにもなかった。ある意味で当たり前だ。暗殺者として差し向けるならば、証拠となるようなものを残すはずがない。
プロの暗殺者ならばなおさら。
「ま、死人に口なしだ。刺客達からはたどれないだろうな」
コウジが呑み干したグラスを横の卓に置けば、その手をジークに取られた。彼を見上げる。
「今日もするのか?」
あんなことがあったのに? の言外に匂わせれば「毎日している」とぽつり。
「うん、毎日してるな。王子様は若いよな。おじさんは付き合うのが大変だよ。
今日はとくに朝から一日、窮屈な服を着てパレードに儀式に夜会でくたくたなんだがな」
「そうだ。今日は私とあなたの婚約式だった」
だから『する』とじっとこちらを見る剃刀色の瞳に笑いたくなってしまう。
毎日しているのだから、今日だって当然するのだ。
こんなのは言葉のじゃれ合いみたいなものだ。
そして、とらえたコウジの手にジークは口づけの雨を降らしている。節くれ立ったおじさんの指を噛んだり舐めたり楽しいか? と思うが、いつもながらに情熱的だ。
爪と肉のあいだを舌先でざらりとくすぐられれば、コウジの背にもぞくりと妖しい期待が立ち上る。
「いいぜ、おいで」
ぐいと掴まれた手を引けば、王子様の端正な顔が近づいてきて、そのまま口づけられる。
「ん……」
もう、何回したかわからないキス。初めの頃は唇も重ねないで、身体だけ重ねていたなんてのが嘘のように、ちゅうちゅう吸い合っている。
「ふぁ……」
混ざり合った唾液をこくりと呑み込んで、口の端からこぼれたそれを追うように、端正な唇がコウジのあごからのけぞった首へと。
痩身で浮き出た喉仏を舐めて吸い付くのはこの王子様のクセだろうか? 男の印のそれを確認するように男だから抱いているというより、コウジが男だろうと女だろうと構わないのだろう。どんな身体でも、その魂が宿っていれば。
首から鎖骨へと遊ぶ様に口づける唇はそのまま、両手は真っ平らどころか少しあばらが浮いている胸に。ありもしない肉を掴むようにされて、それから親指の腹で、両方の乳首を転がされた。。
そこはすっかり感じる場所で「はあ……」と熱い吐息漏らせば。
「ここだけで、あなたはもうイケそうだ」
「……試してみるか? 時間掛かりそうだけどな。お前が“待て”出来んのか?」
からみあう足。コウジが細い足を立てると、まくれ上がったガウンの裾。直接太くて熱い固まりが、太ももに当たる。
「お前こそ、おじさんの指吸ってキスして乳首いじくるだけで、こんなにしてさ。
いっそ、この貧相な太ももにすられるだけでイケるんじゃないか?」
意識的に足を動かして固まりをぐりぐりしてやれば、美しい眉間にしわがよる。
「……あなたのなかがいい」
「素直でよろしい」
「あ……」と声を漏らしたのは、胸にキツく吸い付かれたからだ。
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